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103 エンドレス椅子取りゲーム?

 ゲーム1


 その音楽に歌声はなかった。俗に言うインストだろう。というよりも同じようなビートが繰り返されているのでラップバトルなどで用いられているものに近い気がする。


 もしこれが三十年前に亡くなったというみーちゃんの霊が選曲したというなら、彼女は相当ミーハーな人物か、それとも現代社会に馴染んだある意味俺達と同じ感性の持ち主に変化したかのどちらかだろう。


 そんなことを考えていると急に音楽が止まる。同時にこの教室にいる人物が椅子の奪い合いを始めた。


 ただし俺以外の人間が・・・・・・・と思っていたのだが、なぜか真は椅子に座ろうとしなかった。


「何してる真 早く座れ!」


 真の目の前には誰も座っていない椅子があった。俺と真以外は全員着席しているので真がその椅子に座れば第一ゲームは終了だ。だが真は座ろうとはしなかった。


「もしかして時間稼ぎか?」


 確かにその作戦もありだな、そう思っていたのだが、真から帰ってきた答えは思いもよらないものだった。


「もう一つ椅子が余ってるんだけど・・・・」


「えっ?」


 「ほら」と真が指さした方向には確かにもう一つ誰も座っていない椅子があった。


「これじゃあゲームにならんだろうに。もしかして数を間違えたのか?」


「どうする? このまま二人とも座らないで時間稼ぎする?」


 それもありだな。そう思いながらスマホを取り出し画面を見ると・・・・・


「いや、それは無駄になるかも」


「どうして?」


「俺の勘違いでなければ時間が止まってるんだよ。少し前に時間を確認した時からスマホの時計が動いてない。教室に入ったあたりはまだ動いてたのは確認してるが、止まっている時刻的についさっき、つまりゲームが始まったあたりから時間が止まってるっぽい」


「じゃあこうしていても時間の無駄ってこと?」


「時間自体が止まっているから時間の無駄ではないと思うが、その行動自体は無駄になるかもな。この教室だけなのか、それとも学校全体が止まっているのかは謎だが、先輩が救助に来てくれる可能性は一気に減ったかもな」


「でもどちらにしたって人数分席があるなら永遠にゲームが終わらないんじゃ・・・・」


 問題はそこなんだよなあ。こういった場合何かしらの変化があってこそ事態は進んでいく。しかし誰も脱落しないのであれば真の言う通りこのゲームは永遠と続くことのなる。


 一体みーちゃんは何をしたいんだ? それともみーちゃんではなく別な奴の仕業なのか?


 なんにせよこれを仕組んだ奴の思惑が全く分からない。


「ここは一先ずゲームに沿って進めてみるしかなさそうだな。俺は向こうの席に座るから真はここに」


「わかった。それしかなさそうだもんね・・・・」


「ん、どうした座らないのか?」


 分かったと言いながらなぜかまだ座ろうとしない真。何か不安なことが他にもあるのか?


「う、ううん・・・・今座るから」


 そう言ってやっと腰を下ろす真。その両隣には女子生徒が座っていたが、まるっきり俺たちには無関心って感じだった。



 ゲーム2


最後に俺が座るとすぐに次のゲームが始まる。先程のホップなものとは打って変わり今度はバラード調の音楽で、やはり歌声はなくメロディーだけが室内に鳴り響いている。


 一回りしても音楽は止まらなかった。一周周っている間に椅子の数を数えてみたが全部で31個あった。今度は人数を数えようとしたところで曲が止まり、さっきと同じ様に生徒たちは椅子に座ろうと必死に奪い合っていたが、結局人数置いてあるので溢れるものはおらず、担任も何食わぬ顔で子供たちと一緒に座った。俺の分もあることを確認した真はこちらに視線を送ってから椅子に座った。


 さて今度は何人いるか数えるか。


 椅子が埋まらない限り次のゲームが始まらないことを利用して数え間違いを起こさないようゆっくりと一人一人確認していく。空席の隣から時計回りに数えていくと・・・・


「えっ・・・・俺を入れて32人?」


 そんなはずない。そう思い数え直してみたが結果は変わらなかった。


「このクラスって先生を含め全部で31人で合ってるか?」


 離れたところにいる真に訊いてみる。


「そうだよ。生徒が30人と先生だね」


 どうやら人数はこれで合っているようだ。部外者の俺を含め全部で32人。しかしさっき数えた時椅子は31個しかなかったのに対し、31人座っているこの状況で椅子が一つ余っているのはどう考えてもおかしい。


 つまりこれが望月先輩が言っていたみーちゃんの能力ってことなのか?


 存在しないはずの椅子が現れた。しかしいつ? どのタイミングで?


 今のところ何が起きているのかまったくわからないが、少なくても知らぬ間に居るはずの人間がいなくなっているってことはなさそうだ。



 ゲーム3


 取りあえず脱落者が出ることはなさそうなので次のゲームを始めるため椅子に座ることにした。案の定俺が座るとスピーカーから音楽が鳴り始める。今度流れてきたのはクラシック調のピアノだった。


 なんて言うか曲の方向性にまとまりがないよな・・・・・


 前回までと同じく曲が止まると皆一斉に椅子を奪い始める。しかし毎度の如く椅子は一つ余る。


 周っている最中椅子を数えてみたがやっぱり31個しかなかった。今度は曲が鳴りやむまで時間があったので人数も確認してみたがやはり俺を含め32人だった。つまり普通だと椅子は一つ足りないはずなのだが、いざ座る段階になると不思議とピッタリになってしまうのだ。


このままだとエンドレスだよな・・・・・なら少し試してみるか。


 最初は椅子を一つ外して俺が脱落者と言う形を作ろうかとも思ったが、そうなると最悪の場合俺に不幸が訪れてしまう可能性があったので取りあえず反対に椅子を足したらどうなるのか試してみることにした。幸いなことに窓側の前方にあった教師用の机とセットの椅子は使われていなかったので、生徒が座っている椅子を少しずつずらして無理やり椅子の輪の中に突っ込んだ。その際椅子を動かされた子供たちは反応を示すことはなく、あったとすれば動いた時にバランスを崩さないようにしていたことくらいだろうか。


「律樹お兄ちゃん、その椅子をそこに入れてどうするの?」


「このままだとずっと終わらなそうだし何か変化があればと思ってな。まず今足したこの椅子がこのゲームの椅子として認められるか確認してみるか。真は隣に座ってくれ」


 新たな椅子は俺が座る予定だった椅子の隣に置いている。その隣の椅子に真を座らせ俺は自分で運んできた方に座る。大人が使う一般的なキャスター付きタイプで、生徒たちが座っているものと比べ一回り以上大きく座り心地もなかなかだ。


「・・・・・・・・・」

「・・・・・何も起きないね」


「・・・ああ」


 ある程度予想はしていたがこの状況が変化してくれそうな兆しすら見つけることが出来なかった。つまり全くの無駄に終わったということだ。


「やっぱダメかあ。次の手を考えるか・・・・・ん、どうした。何か探しているのか?」


 真はポケットを中心に何かを探すかのようにパンパンと自分の体を何度も叩いていた。


「スマホが無くて・・・」


「最初にいた入口の方にでも落ちてるんじゃねえのか? それにスマホを探してどうするつもりだ?」


 この教室では通信系は使えないし時計は止まったままだ。アプリによっては機能するものもあるかもしれないが、役に立つとは思えない。


「写真を撮ろうと思って。ほら何かの役に立つかもしれないでしょ」


「なるほど写真か・・・・・悪くないな。なら俺も自分ので撮っておくか」


 何なら動画を撮っておくのもいいかもな。もしかしたら椅子が増える瞬間が見えるかもしれないし、逆に32個から31個に減る瞬間が撮れるかもしれない。何にせよやる価値は十分ある。


 そう思ってスマホをポケットから取り出そうとした瞬間、スピーカーから音楽が鳴り始めた。


「えっ?」


 俺は新たに足した教師用の椅子に座ったままなのに次のゲームが始まってしまった。




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