学祭一日目 前編
今日は学祭一日目。初日は各クラスや部活動の催しが行われ、自由に遊び回れる日だ。私たちのクラスは展示なので、二、三人教室に待機していれば問題ない。
因みに、私は当日働くのが嫌だったので運営側には回らなかった。裏方は学祭準備期間で仕事は終わりだ。
「頼花ー、一緒に回ろーぜ!」
同じく裏方を志望した暁斗が、私の隣に立ち笑いかける。結局、学祭はイケメンズと回ることになった。光やシオンは午後から参加だけれど。
D組は喫茶店をやることになり、光はウェイターらしい。光は絶対ウェイターをやれ、とクラスメイトに言われたみたいで、断れなかったらしく、最初から一緒に回りたかったと悲しそうにしていた。
シオンのクラスはお化け屋敷らしい。同じくシオンも受付係をやれと言われてしまい、悲しそうにしていた。
「どこから行く?」
パンフレットを見ながら尋ねてくる暁斗に、私は、光のとこ行かない?と提案した。光のウェイター姿、少し見てみたかったのだ。
D組に入ると、光が私たちに気付き駆け寄ってきてくれた。そして、いらっしゃいませー、と可愛らしい笑顔で接客する。
二人用の席に案内してくれながら、来てくれたんだね、と嬉しそうに顔を綻ばせた。私も笑顔で頷く。
「うん。光のウェイター姿見てみたかったからね。すっごく似合ってるよ」
私が褒めると、光は、ほんと?と、照れたように笑った。
「メニューはこれだよ」
席に案内された私たちはメニュー表を見る。
メニューにはお菓子や飲み物が書かれていて、割と本格的だった。絵付きでとても分かりやすい。
学祭でコーヒーを提供するなんて、生徒で誰か飲む人いるのかな、なんて考えながら注文を決める。
「オレンジジュースとクッキーください」
「俺はサイダーとマドレーヌ」
「はーい」
注文を取った光がパタパタと駆けて、教室の隅っこにある、布で覆われたスペースへ入って注文を伝えた。恐らくあそこで飲み物やお菓子を盛り付けているのだろう。はいよー、と、何やら慌ただしく動く様子が伺えた。
光が教室を忙しく動き回る姿を見つめながら、接客頑張ってるなぁ、と感心する。D組は光目当ての女子が多いからか、大盛況だった。光が笑顔を振り撒く度に黄色い歓声が上がり、苦笑する。本当に人気者だ。
「なぁ、ここと先輩んとこ以外でどっか行きたいとこある?」
背もたれによしかかり、ぼーっと教室内を見ていたら不意に尋ねられ、私はちらっと暁斗の顔を見る。
「んー?そうだなぁ……」
そして、改めてパンフレットを見る私。
終了までに時間はたくさんある。出来るならたくさん回りたいけど……
「絶対に外せないのはアニ研のとこかなぁ。二次創作漫画とかイラスト、手作りのグッズとか見てみたい」
真剣にそう呟くと、
「ぷっ、頼花らしいな」
あはは、と暁斗に笑われ、なんだか馬鹿にされた感じがしてつい言葉が尖る。
「じゃあ暁斗は?なんか行きたいとこないの?」
「俺?俺かぁ~……」
んー、と少し悩んでいると。
「お待たせしました、オレンジジュースとクッキー、そしてサイダーとマドレーヌです」
光がテーブルの上に注文した物を置いていく。
「楽しそうだったけど、二人でなんの話してたの?」
僕も混ぜてよ、と言う光に、これからどこ回ろうか話してたとこ、と答える。すると光は、ぷくぅ、と頬を膨らませ、
「僕も最初っから一緒に回りたかったなぁ。なんで午後からなんだろ」
と不機嫌そうに言った。その言葉に、ドンマイ!と暁斗が励ますと、光はキッと暁斗を思いっきり睨んだ。
まぁ確かに、午後からじゃ行けるところも限られるだろうから、不機嫌になるのも仕方が無い。
「光は行きたいとことかある?あるなら午前中は他のとこ回るよ。一緒に楽しみたいし」
私がそう言うと、ぱぁっと顔を輝かせ、えーっとね……と、テーブルの上に広げられているパンフレットを見て指指した。
「三年B組のクラス展示に行きたいな。部活の先輩がいるとこなんだけど、クオリティ凄いんだって。カップル映え写真スポットもあるらしい」
目を輝かせて言う光に、なるほどなぁ~、と頷く私。
私のクラスもそうだけど、やっぱりカップル用の写真スポットって必ず作るものらしい。私の知り合いにカップルはいないから、そういうスポットの需要度が分からないけど、もしかしたら、私が知らないだけでそこら辺にカップルはごろごろいるのかもしれない。
「分かった、じゃあ光が合流したらそこ行こっか。それまでは他のとこ回ってるよ」
「ありがとう!」
そこで、光ー、接客頼む!と声がかかり、はーい!と元気に返事をする光。
「んじゃ、僕もう行くね。終わったら連絡するから」
そう言って新たなお客の元へ行ってしまった。
「忙しそうだね」
「だな」
慌ただしい様子を横目に、ゆっくりする私たち。接客業は大変だ。裏方で良かった。
パリッとクッキーを一口食べると、ここで出されているお菓子はどうやら市販の物らしいと分かった。
馴染みのあるクッキーを食べていると、不意に暁斗に一枚奪われてしまったので、私もお返しにマドレーヌを一個パクった。食べてみるとやはりこれも市販の物で、光の手作りの方が何倍も美味しいよな、なんて考えてしまう。
「ありがとうございましたー」
D組を後にした私たちは、今度はシオンのいるクラス、三年A組へ向かうことにした。A組の前には長蛇の列が出来ていて、私と暁斗は二人して顔を見合わせた。
「すっげーな、大盛況じゃん」
「ね。中に入れるまで時間かかりそー」
最後尾に並び、どんだけ怖いんだろうな、と話す。前方からは、お化けに驚いた悲鳴……ではなく、恐らく受付係だというシオンに上げた、黄色い悲鳴が聞こえてくる。列のほとんどは女子で、男子はあんまりいなかった。
「女子ってそんなにお化け屋敷好きなのか?」
不思議そうに首を傾げる暁斗に、そうなのかもねー、と適当に返しておいた。
十分ぐらい経ってようやく受付の前まで来られた。一人三百円です、と言われ、三百円丁度シオンに渡す。
「シオン、お疲れ様。大盛況だね」
少し疲れた様子のシオンにそう声をかければ、シオンは少しうんざりしたように頷いた。
「あぁ。こんなに人気だとは思わなかった」
女子はこういうお化け屋敷が好きなのだな、と、暁斗と全く同じ感想を言うシオンに苦笑する。
「ところでシオン。合流してからどこか行きたいとことかある?あるならそこ以外のとこ午前中に回ろうと思ってるんだけど」
私の言葉に、少し考えるように黙るシオン。しばらくしてふるふると首を振った。
「いや、ない。俺はライたちと一緒に回れるだけで十分だ」
シオンがそう言い切った瞬間、前の人たちがお化け屋敷を終え教室から出てくる。次の方どうぞー、と言われ、私は素早く、また後でとシオンに伝えてからお化け屋敷に入った。
お化け屋敷は暗すぎて、何度も仕切り代わりに使われている机に体をぶつけてしまった。そしてぶつける度に、いたっ、と声が出てしまうので、途中、どんだけぶつかんだよと暁斗に笑われた。
しかし、目が悪いのだからしょうがない。暗いと本当に見えないのだ。私の視力舐めるなよ、と心の中で反論して黙々と道を進んでいく。
お化け屋敷自体はそこまで怖くなかった。急に人や物が飛び出してくることはあったけれど、叫ぶほどのものではない。多少身体がびくりと反応するだけで、それだけだ。
よく漫画である、驚きすぎて近くの人の腕に抱きつくとかはなかった。まぁ、高校生が作れるものには限度があるということだ。
「ありがとうございましたー」
お化け屋敷を出ると、やはり長蛇の列はまだ続いていた。私たちはシオンに手を振って別れたあと、アニ研の展示がある教室へ向かった。
「うわぁやっばぁ~……」
目の前に積み上げられたたくさんの創作漫画やイラスト集に、つい感嘆の息が漏れる。
部員の人に許可を貰い、パラパラとページを捲っていくと、いくつか自分の知っているキャラクターがいてテンションが上がった。暁斗はグッズの方を見ていて、うおーとか呟いていた。
創作漫画とイラスト集を全部一部ずつ手に取って、グッズコーナーへと向かう。暁斗の隣に立ち、なんか良いのでもあった?と声をかけると、うおっ!?とめちゃくちゃ驚かれた。とても集中していたらしい。
「いや、何のグッズかは分かんねーんだけどさ。これとか頼花が好きそうだなと思って」
そう言って指指したものは、白色のハンカチで隅に紋章が刺繍されているものだった。それがとても信じられなくて、思わず手に取って広げ、上に掲げて確認してしまう。
「うっそこれ『白騎士』のロアナ様のハンカチじゃん!しかも紋章のクオリティえっぐ!え、誰作ったの天才すぎん?」
感動してそう早口に言葉を発すと、暁斗は、ぷっと吹き出して、なんだ知ってんのかよ、と笑った。
『白騎士』とは、『白い薔薇の姫と黒い騎士』の略で、少女漫画である。
白い薔薇が好きな、美しいお姫様ロアナと黒騎士のオスカー。二人が出会い、恋に落ち、結ばれるまでが描かれた作品で、もう既に完結している。
中学生の頃に見つけ、何度も何度も読み返した、私の大好きな漫画の一つ。まさかロアナのハンカチがあるだなんて思わなかった。
これは絶対に買わなければ、と思い値段を見ると、たったの五百円だった。五百円!?とつい二度見してしまう。お店で買ったら絶対もっと高いのに、これで五百円なんて……これはもう買わなきゃ損だ。
「ちょっと暁斗見てこの値段!これで五百円だって!こんなにクオリティ高いのに五百円!ロアナ家の紋章めっちゃ細かいとこまでリアルに再現されてるのに!凄くない?凄いよねっ!やばぁ~、まさかこんな運命の出会いしちゃうなんて……」
くぅぅぅ、と、一人喜びを噛みしめていると。
「じゃあこれは、俺が頼花にプレゼントしてやるよ」
そう言ってロアナのハンカチを私の手から取り、私が、えっ、と驚いているうちにお会計を済ませてしまった。
「ほら。お前のことだから大事にすると思うけど、無くさないでくれよ?」
そして、笑顔で私にハンカチを差し出した。その渡し方と台詞が、偶然にもロアナと似ていて。私は不覚にも心を打たれてしまった。
私の頭の中で、ロアナが笑って、オスカーにハンカチを手渡すシーンが蘇る。
「オスカー、これを。貴方のことですから、大切にしてくださると分かってはおりますが……無くさないように気を付けてくださいませ」
この時のロアナ様の笑顔の尊いことといったら……
ぼーっとしてしまったからだろう。暁斗が、頼花?と、私の顔を覗き込む。
「あっ……と、もう!驚かせないでよ!」
「は?お前が急にぼーっとしたんだろ?」
私の言葉に、不服そうに口を尖らす暁斗。うぐっ、と詰まりながら、私はハンカチを受け取った。
「……ありがとう。さっき、暁斗がロアナ様みたいなこと言うから驚いたんだよ。一瞬心打たれちゃったじゃん」
私も口を尖らせてそう言い返しながら、ロアナのハンカチを丁寧にリュックにしまう。そして、他にも何か掘り出し物がないかとグッズコーナーを見回った。
暁斗はその場にぼーっと突っ立っていたので、もう見るのに飽きてしまったのだろう。付き合わせていることに少し悪いなとは思いながらも、構わず私はじっくりと商品を見た。
それから私は何個かのグッズを持って会計に行った。私の知っている作品のグッズが何個かあり、それを買ったのだ。
キャラクターが付けていたブローチやネックレス、イヤリングなどなど、本当にクオリティが高かった。もうお店で出せるんじゃないかっていうぐらいの出来だ。
素晴らしい買い物をして上機嫌になった私は、今何時かとスマホを確認した。するともう十二時近くになっていて、メッセージも何件か届いていたことに気が付く。それを見た私は、暁斗に声をかけた。
「暁斗、二人とももう交代の時間だって。迎えに行こ」
「ん」
まずはD組に行き光を迎えに行った。光は私たちを見かけると笑顔で駆け寄ってきて、
「頼花ちゃんっ!ようやく解放されたよ~」
と、疲れたように笑った。
「お疲れ様~」
笑顔で労い、話しながら次はシオンを迎えに行く。
廊下の壁によしかかり、突っ立っていたシオンに声をかけると、シオンは、お疲れ、と笑った。その笑みにどこからか黄色い声が上がったのをスルーして、私たちは歩き出す。
因みにシオン効果がなくなったからか、お化け屋敷の列は女子から男子へと変わっていた。
「まず、何かご飯食べる?」
お腹空いたよね、と私が提案すると、皆もこくりと頷いた。
「じゃあ、まず屋台行くか。焼きそばとかフランクフルト売ってたよな」
暁斗がパンフレットを確認すると、光が、はいはーい!と手を上げて、
「僕焼き鳥食べたい!」
と主張した。その言葉に暁斗は、だなぁと呟き、
「俺全部食べてぇ」
と笑う。
「私フランクフルト食べたいな。あ、チョコバナナもあるよ?リンゴ飴も」
悩むなぁ、とパンフレットと睨めっこしていたら、
「時間ならいっぱいあるし、ゆっくり回ったらどうだ?」
とシオンが言い、その言葉に従ってまずは屋台を片っ端から回ることに決めた。
お昼時ということもあり、玄関前に並ぶ数々の屋台の前は、人でごった返していた。下手したら皆とはぐれてしまいそうだ。
「人多いなぁ~」
絶対誰かはぐれんだろ、と予知する暁斗に、だな、とシオンも同意した。
「とりあえず、各自欲しいの買って後で集合しない?ここで集団行動してたら迷惑になりそう」
私が提案すると、そうだな、と皆も頷き、各々目当ての物を買うために散らばった。集合場所は学校の裏庭にある大木の近くだ。
人の波を避けながら屋台を見、美味しそうな物があれば片っ端から買っていく。全部食べられるかどうかなんて関係ない。余ったらお持ち帰りするだけだ。
フランクフルト、焼きそば、チョコバナナ、唐揚げ、焼き鳥……気が付けばそうとうな量を買い込んでいて、一人で苦笑した。
これは全部食べきれないな。ご飯だけでどれだけお金を使うんだ。
チョコバナナを囓りながら、歩いて集合場所へと向かう私。片手でチョコバナナ以外の物を持っているため、手が少し痛かった。
絶対フランクフルトと焼きそばだけで良かったよなぁ。ついお祭りムードにやられてたくさん買ってしまった、と一人反省会を行う。
大木の前にに着くと、もう三人とも集まっていて、何やら談笑していた。私は、遅くなった!と謝ってから木陰に座る。
「うわ、頼花めっちゃ買ってんじゃん。俺といい勝負じゃね?」
ほら、と自分が買ってきた物を掲げる暁斗に、うわほんとじゃん、と顔を顰める私。光もシオンも必要最低限の物しか買っていないという感じで、大量に買い込んできた自分が恥ずかしくなった。絶対大食いだと思われた。
「食べたいのあったら好きに持ってって良いよ」
そう言ってビニール袋の上に買った物を広げる。私はまず、チョコバナナを消費しなければならない。熱さでチョコが溶ける前に。
「じゃあ唐揚げ一個貰っちゃお」
焼き鳥しか買ってこなかったらしい光が、付属の割り箸を使ってパクッと一口。美味しい、と笑顔を浮かべた。
「光、お前焼き鳥だけで足りんの?俺のもなんかやろうか?」
暁斗も大量に買ってきた食べ物を広げ、光に勧めた。暁斗はほぼ全ての食べ物を買ってきたみたいだ。流石スポーツ部。しかももう三分の一ほど食べ終わっている。
「シオンも食べて良いからね」
優雅にたこ焼きを食べるシオンにも勧めると、こくりと頷いて焼き鳥を一本取った。シオンと光も買わなすぎだ。絶対に途中でお腹空く。
「ところで、午後はどこ行く?」
焼きそばを食べながらそう尋ねる暁斗に、私はフランクフルトにかぶりつきながら答える。
「三年B組行こ。先に光の行きたいとこ行って、そこからは適当に興味湧いたの回れば良いんじゃない?」
その言葉に頷き、光は不思議そうにシオンに尋ねる。
「獅苑先輩はどこか行きたいとこないんですか?」
「あぁ、特にない」
即答するシオンに苦笑して、そっかぁ、と焼き鳥を食べる光。光もシオンも、買ってきた物が少なすぎるせいで、もうすぐで食べ終わってしまいそうだ。私はまだまだ残っているというのに。
「なぁなぁ、俺、外にある縁日コーナー行きたいんだけど良いか?」
パンフレットを取り出し、ここ、と指指す暁斗。
「あぁ、ここに来るまでに通ったところ?射的とかくじとか、あと、輪投げ?とにかくいろいろあったよね」
らっしゃいらっしゃい、と生徒が声を出していた様子を思い出しながら言うと、暁斗が、そうそれ!と声を弾ませた。
「皆で勝負とかしたら面白そうじゃね?俺、ぜってぇ負けない自信ある」
「えー、何その自信。言っとくけど僕、射的ならそこそこ出来るよ。暁斗には負けないもんね」
「俺はやったことないが……楽しそうだな」
暁斗の言葉にやる気になった二人。私はフランクフルトを食べ終えてから、
「んじゃ、先に縁日コーナー行く?ここからなら三年B組行くより近いよね」
と聞くと、それもそうだな、と三人が頷いた。
午後の動きをなんとなく決めたら、私たちはまた、ゆったりとした団らんモードに入った。学祭ってなんか良いな、とか、そんなことをそれぞれ口にしながら笑う。
「ごちそうさまー」
光とシオン、そしてなぜか暁斗が先にご飯を食べ終わり。残された私は、大変気まずい思いをしながら急いでご飯を胃に流し込む。
「なんで暁斗そんなに早いの。私より多かったのに」
愚痴を言いながら最後の唐揚げを口に放り込むと、暁斗は、はははと笑って私のゴミも一緒に回収した。
「そりゃあ俺、お前より食べるの速いからな。ってかよく食べたよお前。俺はてっきりお持ち帰りするかと思った」
からかうように言う暁斗を睨みながら、お腹がいっぱいになったお腹をさする。
「だって、食べ切るの手伝ってやるって暁斗が言うから!皆も協力してくれたんだもん、お持ち帰りしたら悪いなって思うじゃん」
よっこらせ、と立ち上がると、お腹が重くて少しその場に立ち止まる。お腹がいっぱいすぎて、もう動きたくないと思ってしまう。
「頼花ちゃん大丈夫?まさかそんな風に思ってたなんて。全然残しても良かったのに」
心配そうに背中をさすってくれる光。シオンもこくりと頷き、
「別に無理して食べ切らせようと思ったわけじゃない」
と言った。
「まぁとにかく、縁日コーナー行こうぜ。ゆっくりで良いからさ」
近くにあったゴミ箱にゴミを捨てて帰ってきた暁斗はそう言って、ほらほら、と私の手を引いた。私は暁斗に引きずられるように歩き、食べ物を口から出さないように気を付けた。
ついに始まりました学祭!きゅんきゅんするシチュエーションとかいっぱい書きたいですね。次回は学祭一日目の後半編です。