Editorial
レビュー執筆日:2021/10/25
●豊富なバリエーションと練り上げられたメロディが大いに生かされた一作。
【収録曲】
1.Editorial
2.アポトーシス
3.I LOVE...
4.フィラメント
5.HELLO
6.Cry Baby
7.Shower
8.みどりの雨避け
9.パラボラ
10.ペンディング・マシーン
11.Bedroom Talk
12.Laughter
13.Universe
14.Lost In My Room
前作『Traveler』のリリース後も様々なヒット曲を世に送り続けてきたOfficial髭男dismのメジャー2ndアルバム。今作においても、分かりやすくブラックミュージックの要素を取り入れた『I LOVE...』や『ペンディング・マシーン』、シンセサイザーの音色を絡めて広がりのあるサウンドを聴かせる『HELLO』、アコースティックな響きが印象的な『みどりの雨避け』、どっしりとしたバラードの『Laughter』に、内省的な歌詞をこれまでに無いほどハイトーンの歌声に乗せた『Lost In My Room』と、サウンドの組み立て方が大きく異なる様々なタイプの楽曲が取り揃えられています。
また、特に『アポトーシス』や『Cry Baby』、『パラボラ』において顕著なのですが、「複雑なメロディをドラマチックにまとめ上げる」という点においても良い意味で相変わらずだな、といった印象を受けました。その中でも『Cry Baby』のメロディラインは「複雑」でありながら「奇妙」といった雰囲気で、最初に聴いた時は面食らいましたが、何度か聴くうちにしっかりと印象に残ってくるように思え、単に「実験的」なだけで終わらせない辺りに、彼らが掲げる「ピアノポップバンド」としての矜持を強く感じられます。
全体的に見ると、既発曲と比べてアルバム曲はやや地味な印象があり、『Traveler』と比べると少し物足りないところもありますが、楽曲自体のバリエーションは豊富で既発曲がバランス良く配置されていることもあってダレるような印象は無く、今作も充分に満足のいく内容でした。こういったアルバムを続けてリリースできる彼らならば、まだまだ音楽シーンを賑わせてくれることでしょう。
評価:★★★★★