宇宙空間用戦闘挺
ハイリスクな選択は、普通、ハイリターンがあると思うから選ぶものである。リターン無しで選ぶバカはいない。
しかし、だ。
リターンとはなんなのか?
その形は、人によって違う。
登山が好きで山に登る人間は、山頂にたどり着いたときの達成感を報酬に山に登る。
ゲームが好きな誰かは、高難易度ステージクリアを目指してゲームをする。
好きでない誰かに、その価値は分からない。端から見れば、ただの無駄な行為、時間を溝に捨てるようなものだろう。やろうとは思わない。
そして、かつて冒険者として英雄のような人間になりたいと思っていた太郎のリターンとして、米倉の提案がどの様に映ったのかと言うと。
「……分かり、ました」
迷いながらも、その提案に乗る程度には魅力的に映ったらしい。
もしも説明の中に両親や周りの人間への不利益があれば首を横に振ったのだろうが、そう言ったことはないと言われ、その言葉を、嘘かも知れなくても信じたくて信じることにした。
米倉はほっと息を吐くと、心から安堵した。
先ほどから自分の周りが目まぐるしく変わっていくので、それを主導している本人ではあるが、テンションがおかしな事になっている。その所為でミスもやってしまった。
米倉は自分の望む方に話が進んでいるようで安心する。するのだが、これから明かす秘密を考え、緊張した面持ちを見せた。
「では、こちらにどうぞ」
そうやって、山の地下にある現在位置より更に下へと続くエレベーターに太郎を連れて行った。
連れて行かれた先は、巨大な地下空間だった。正確には、そんな空間をガラス越しに見ることができる部屋である。
太郎は見慣れていないものだが、造船所のような場所である。高さは20m、四方は200m以上あるだろう。
つまり、それだけの広さを必要とするものが置かれているのだ。
「これが当研究所の最高機密、宇宙空間用戦闘挺。型番や名前についてはこの国の発音では不可能なので省略しますが、地球外の超技術によって造られた、私の本体です。
先ほどお見せした箱は、この船の動力補助バッテリーなんですよ」
全長180m、高さ10mの個人の使用を前提とした戦闘挺。
あいにく機体の名前などは日本語――と言うよりは地球の言語に置き換えできないが、そんな事に気を回す余裕は、太郎には無かった。
ダンジョンで得たギフトがなんで宇宙船に適用されるのかとか、これが動くようになったら何が起こるのかとか、宇宙戦争が始まるのか、なんで話がダンジョンから宇宙船になったのか、そちらの方が重要だからだ。
答えの出ない問い掛けで、太郎は完全に思考が停止している。
米倉はこの宇宙船の外部活動用の端末のようなもので、信用できる人間に超技術の解析と船の補修などを行っているのだとか重要な話をしていたが、太郎の頭にはほとんど入らないのであった。




