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アルカナ・ウェポン

 カード、網膜、静脈、そして監視員によるチェックを潜り、2人は研究所の中を歩く。

 セキュリティレベルの浅い所でも厳重な本人確認を求められたが、これでも最低限に留めていると言う。


「技術の進歩は目覚ましいですからね。“これぐらいでいいだろう”レベルのセキュリティは無くても構わないセキュリティですよ。厳重にやって、ようやく意味があるんです」


 今のご時世、この程度のセキュリティはプロなら突破できる程度だと言う。それでもやるのは時間稼ぎで、スパイに手間をかけさせることで少しでも安全を確保しているのだ。


 太郎たちはギフトを使うものを持ってきていいエリアまで移動して、腰を落ち着けた。



 太郎はここまでされている中に入ったことで自分もスパイのターゲットにされないか危機感を覚えたが、それは大丈夫だと米倉は保証する。

 “色々と”対策をしているので、その可能性はまず無いと言い切った。


 半信半疑ながらも、太郎は米倉の言葉に今さらだと覚悟を決め、話を進めることにした。


「それで、私がギフトを使う対象を見せてもらえますか?」


 米倉は緊張した様子の太郎を微笑ましいものを見る目で見ていた。

 20歳過ぎの男に対する感想として、本人には不本意だろうが、初々しくてつい弟妹を見ている気分になるのだから仕方がない。


「連絡は行っているので、少しお待ちください。

 あ。飲み物など、どうですか?」


 米倉は案内人であり、研究物の管理者ではない。この場に太郎と待機しているので、物の運搬は他の担当である。

 落ち着いていれば分かることだが、研究所の雰囲気に飲まれた太郎に分かれと言うのは酷だろう。



 ほどなくして、太郎たちのいる部屋がノックされた。

 米倉が誰が何のために来たかをタブレットで確認して、入室許可を出す。


「太郎さんのギフトで確認していただくのは、こちらになります」


 ゴトリ、と、重厚な音をたててテーブルに置かれたのは、黒い金属でできた、やや縦長の輪っかみたいなもの。この輪っかは、成人男性が片手で握りやすい形状とサイズとなっている。そして右手で握った場合、上になる方にはスリットが設けられている。

 剣の柄と指の保護具で構成されたその兵器こそ、太郎を待っていた武器。


「開発コード、『アルカナ・ウェポン』。

 ダンジョンでの使用を前提に造られましたが、“エネルギー供給ができないため”、現在使用不能の武器です。

 セーフティロックがかけられているので、手に取っていただいても大丈夫ですよ。むしろ、太郎さんのギフトでエネルギーが供給可能か試してみてください」


 目の前に提示された可能性。

 現物を前に、太郎は唾を飲み込んだ。

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