次世代科学研究所
ダンジョンに関わる望んだ仕事をするにしても、情報が少ない段階で大きな決断をするのは難しい。
最初の一ヶ月はお試し期間。給料はあまり出ないが拘束時間も少なめで農家と兼業できるように、太郎はバイトのような扱いから始まるようだった。
太郎は親との約束で農家をしている。ここで仕事を辞めるとなると両親と大喧嘩をするしかないので、農家と兼業できるのはありがたかった。
バイトなら。両親も太郎の気持ちを汲んで、太郎を次世代科学研究所に送り出すのだった。
次世代科学研究所。
主にダンジョンから手に入ったものを解析し、再現するための研究が行われている。
また、ダンジョンで得られる謎の石、俗称『魔石』をエネルギー源とする装置開発もしている。
そういう話だった。
そんな説明と共に太郎が連れてこられたのは、周囲に何もない山の麓だった。
「すみません。ここが、そうなんですか?」
「はい。研究の内容が内容なので、周辺の監視がしやすく、人の管理を行いやすい場所なんですよ。この辺りの土地は全部ウチで管理しています。不審者がいたら、即通報なんですよ。
それに、ここなら何かあっても人的被害は最小限に抑えられますから」
セキュリティと周囲の安全を理由に、土地を買い占める。
何もない山であれば地価も高くないが、それでも豪気な話である。
「途中に家があったと思うんですが」
「年に一度、山の管理に外から人を呼ぶんですけど、そういった人の休憩用ですよ。普段は無人なんです」
この辺りは研究所以外に、本当に人がいない。
太郎はここに来るのを軽い気持ちで決めたわけではなかったが、それでも研究所の厳重な扱いに身震いした。
自分達も自社ブランドのために新種の作物の開発を行っているが、ここまで徹底していない。資本の差を見せ付けられた気分になり、そんな場所で自分はやっていけるのかと不安になってしまった。
山には分かりにくいが細い道があり、そこを車で通ると、洞窟に着いた。運転手の米倉は慣れた様子でそのまま車で入っていく。
最初は車の中までガタガタ揺れる荒れ地だったが、10mも進むと路面が平らに均されていた。車の振動がピタリと止まる。
そして。
「米倉さん!?」
「ふふふ。いい反応ですね。説明せずにお連れした甲斐がありました。ただの大型エレベーターですよ。秘密の研究所って感じがしていいと思いませんか?」
車が、そこから地下に降りていく。
一部の駐車場にある、車用のエレベーターだ。
太郎は初めて使ったので、まったく理解できていなかったようだ。軽くパニックに陥っている。
米倉がイタズラが成功した子供のような顔でそんな太郎に笑いかけると、見た目は年下の米倉の前だと思い出し、すぐに平静を装った。もう手遅れだが。
太郎は何mぐらい地下に降りたか分からないが、車の下降が止まる。周囲は明るく、他にも何台か車の止まってい駐車場にたどり着いたようだ。
何台も車がある光景は買い物に出れば日常的なもので、見慣れた光景に、太郎は安堵する。
車を降りた二人は、そのまま出口へと向かった。
駐車場の出口の前で、米倉は太郎の前に出て、一言。
「ようこそ、次世代科学研究所へ」




