謎のギフト
水卜太郎、21歳。高卒。
太郎は現在、実家の農家で働いている。
と言うのも、両親との賭けに負けたからだ。
太郎は冒険者になりたかったが、両親は揃ってそれに反対した。冒険者は命がけの仕事だからだ。当たり前である。
だがそれで納得しなかったのが子供の太郎で、そんな太郎に両親は一つの賭けを持ちかけた。
それは、「ダンジョン攻略に向かないギフトだったら、諦めて農家を継ぐ」というもの。
冒険者がダンジョン向きのギフトを得る確率は5割と、両親にしてみれば分の悪い賭けだったが、太郎は乗り気でその話に乗り――見事、ハズレギフトを得た。
“ギフトはその人に合ったものが手に入る”という話が真しやかに噂されていたので、「自分なら大丈夫」と、根拠の無い自信で賭けに乗ったのだ。
ギフトは、それがどんなものか本人以外には分からない。
嘘をつくことはできた。
だが、太郎は自分の命の掛かった話という事もあり、正直にギフトについて話し、冒険者にならなかった。
冒険者をしていればすぐにバレるだけでなく、下手に嘘のギフトで人と組むと、組んだ仲間にまで被害が及ぶからだ。
太郎は冒険者になって活躍したかったのであって、活躍するビジョンがなくなった状態で冒険者をしたかったわけでもない。
そういう意味では、戦闘系のギフトが手に入らなかった時点で、太郎の夢は潰えている。冒険者の中には攻略向けではないギフト持ちが集まり、ダンジョンの浅いところで雑魚退治をして糊口をしのぐ者もいたが、太郎はそういった事をする気にはならなかった。
しかし人の心は複雑怪奇で、夢が叶わないと現実を突きつけられて尚、諦めきれないのもよくある話。
太郎は自分が冒険者になって活躍できないと知りつつも、そうなる自分を夢見て足掻く。
毎日の走り込みや、木刀の素振り。そういった努力を怠らない。
両親も、それぐらいはと好きにさせている。
農家として生きる一方、諦めきれない思いを少しでも解消するために体を鍛える。技を磨く。
ダンジョンという現場で戦う者たちとどんどん差が付いてしまうという焦り。
しかし、そもそも冒険者にはなれないという諦め。
“ダンジョンで活躍してすごいと言われる冒険者になりたい”という目標は、そんな感情が提案する妥協案に飲み込まれ、形を変えていく。
大人になれば、見えていなかったものも見えるようになる。
命がけなのに意外と少ない一般的な冒険者の収入とか、怪我による引退率の高さ。光の裏にある、影。
純粋にただ、“冒険者になりたい”と言う事すら難しい現実が見え始めた頃。
太郎の前に、彼女が現れた。




