米倉の事情
「米倉さぁぁーーん!!」
「あれ? どうしました、太郎さん」
「聞いてないよ! ダンジョンが米倉さんの仲間だなんて、聞いてないよ!」
「聞かれませんでしたからね。
それよりも、セカンドステージ到達、おめでとうございます」
太郎は研究所に戻るなり、米倉に詰め寄った。
しかし米倉は、それを今さらと言わんばかりの表情で迎え撃った。
それもそうだろう。
そもそも、太郎のギフト『エネルギー供給』はダンジョンで手に入れたもの。それに対応した装備を持っている時点で関係を怪しまれると考えていた。
また、米倉の目的は「ダンジョンのドロップアイテム研究による宇宙用戦闘挺の修復」である。ダンジョンのドロップアイテムが宇宙船に対応するものでなければ出来るわけもない。もし何でもいいなら、地球にある普通の素材の研究をしていただろう。
ダンジョンにおける敵の出現法則が、弱い敵から強い敵へと徐々に難易度をあげていくのも、実に訓練らしいと言える。人為的なのは明らかで、同時に殺意が低いとも言える。殺すための場所でないことは明らかである。
疑わしい状況は、たくさんあったのだ。
教えてもらっていない太郎はへこんだが、よくよく考えれば騙されたわけではない。教えてもらっていないだけだ。
仲間だからと何でも教えてもらえるわけではない。そんなのは農家の頃から同じだ。すべての情報共有をするのは、時間と労力の無駄でしかない。
その人に必要な話をするのは当たり前でも、それ以外は本人のやる気と立場がないと教えてもらえないのだ。知りたいのなら自分から動かないといけないのだ。
気を取り直した太郎は、それよりも気になっている事を聞くことにした。
「なあ、直接貰うのは駄目だったのか? いちいち冒険者を使わなくても、顔見知りなら譲って貰うこともできたと思うんだけど」
「私もだけど、軍の管理品だから。仲間であっても横流しは駄目なのよ。ダンジョンの管理品は、訓練者に渡す為の物。直接のやり取りは緊急時ぐらいなのよ」
「今も緊急時だと思うんだけど?」
「軍の規定では交戦が予測される事態、搭乗員の生命の危険があるときが緊急時なの。未開拓惑星に不時着しただけ、修理が必要なだけでは緊急とは看做されないわ」
太郎の質問に、米倉は肩を落とした。
融通の利かない軍の規定に頭を悩まされているという体だ。彼女にも思うところがあるらしい。
太郎は本人らにもどうにもできない事のように見えたので、それ以上の追求をやめた。
他に、太郎が気になったことと言えば。
「今回のクリア報酬で米倉の船体を修復できると思うけど、これで足りるよな? セカンドステージではあの戦闘挺が必要になるんだから、動けないとか言われると困るんだけど」
ダンジョンのセカンドステージが、宇宙ということだろう。




