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魔法局

 テオドールに会った翌日、ミレイアは改めて護衛になる近衛騎士3人に会った。既婚者で奥さんとの仲が良好な者たちからレアンドロが選りすぐった者たちだ。レアンドロによる抜き打ち調査によってミレイアの教育に悪そうなこっそり愛人を囲んでいるような者は除外し、さらにロリコンではない者を選んだ。


 その内2人についてきてもらい初めて1人で外に出て魔法局で入局試験を受けさらっと合格したミレイアは正式な入局が決まった。そして婚約の歓談から一月後の今日から本格的に調査を開始する。といっても今日は魔法局の中の案内と局長や権威たちと話をするだけだ。試験の日は局長補佐の男性が立ち会い魔力の実技を確認した。


「ミレイア、ミレイア」

「お母様?」


 護衛が迎えに来て出かけようという時マイアが階段を掛け降りてきた。


「お母様、走ってはいけません」

「これくらい平気だと思って。シュゼットも少し運動した方が良いって言うもの」

「階段で転んだらどうするのです」

「まあ、レアン様みたいなことを言って。可愛いわね」


 妊娠がわかってマイアはさらに明るくなった。そして元々綺麗だったがより美しくなってレアンドロは毎日飽きもせずマイアを褒め称えていた。


「お母様、私もう行かなくてわ」

「そうね、そうよね、でもこれを渡したくて」

「なんですか?」


 マイアが差し出したのは手紙だった。


「レアン様に今の感知魔法の権威は私が昔教わっていた先生だって教えてもらって。ミレイアもお世話になるって聞いたからお手紙を書いたの。渡してくれる?」

「わかりました」

「お嬢様、頑張ってくださいねー!!」

「シュゼット、貴方はお母様が無茶しないように見ててちょうだい」

「はいー!!」

「お嬢様、お気をつけてー!!」

「ロゼット、貴方はナタリーにちゃんと勉強を教わるのよ」

「はいはーい!!」


 ロゼットはあることを知ってこの国の勉強に力を入れているのだ。学園は全寮制で伯爵以上なら1人だけ使用人を連れてきて良いことになっている。


 ナタリーは着実にヴィクトルとの結婚への道を進んでいる。エマは変わらず結婚したくないと言ってるがミレイアが学園に入る頃にはさすがに結婚しているだろうし年の近い使用人を連れていった方が良いのではないかということでロゼットに白羽の矢が立った。


 ロゼット自身も両手を上げて立候補立候補と騒いだためとりあえず貴族社会の学園で浮かないようにロゼットにこの国の一般教養など必要最低限なことを教え込んでいるところなのだ。


「では行ってきます」

「行ってらっしゃい。頑張ってねミレイア」


 そうしてミレイアはカミニャンを頭に乗せて護衛2人と玄関ではなく裏口から外に出て魔法局へ向かった。護衛は3人の内2人ずつミレイアにつくことになっている。


 来年からは王妃教育があり王宮に行くことになるが今はヴィクトルが教えに来るから護衛の必要はない。それに1日中護衛をしている必要はないからこの3人の護衛は今のところはミレイアのところに来ない時間をこれまで通り騎士としての仕事をしていてミレイアに他の用事があればいつでも来ることになっている。


 そんな護衛たちは頭に猫を乗せたミレイアに困惑せずにはいられなかったが、レアンドロに可愛いでしょ、でも駄目だよと言われ、何が駄目なのかわからなくてまた困惑した。


 ミレイアが魔法局へ着くと入局試験の時の局長補佐が迎えた。


「ミレイア嬢、お待ちしていました。さっそく魔法局の説明をしながら行きましょう」

「はい。お願いいたします」

「そう、これが重要ですね」


 局長補佐は紫色のローブをミレイアに渡す。魔法局ではミレイアは権威たちにしか素性を知られないようにしなければいけない。他の局員たちと同じフードを被って目立たないように行動することになっている。


 ミレイアが行動するのは2階と3階で局員たちは常に忙しくしていて周りを気にせず、こちらから話しかけなければ見向きもされないそうだ。背格好が小さいのは大丈夫なのかと聞くとシャルルも自由に動き回っているがシャルルを見なかったかと聞いても一本道ですれ違ったはずの全員が気付かなかったと言うというバタバタ加減なのだ。


 ちなみにこの護衛たちはミレイアの調査のことは知らない。近衛騎士は王族に仕えて極秘事項を見聞きすることは多く、そういうことに慣れている。レアンドロに極秘だと言われれば踏み込むことはない。


「ミレイア嬢は今回魔法の調査と研究のために特別に入局されましたので関係はないのですが知っていてもらわなければいけないのは魔物のことですね。魔物は地下にある牢屋で強制的に魔力を吸収して力を弱めています。その牢屋をさらに無効化魔法で囲んでいるのですが外から移動中の時なども含め稀に魔力が上の階まで上ってきてしまうことがあります。魔物の魔力は幻覚や呪いの類いを引き起こすので少しでも不調を感じるようならすぐに人を呼んでください。研究室もシールドで防御しています。必要であれば魔力を込めた宝石をお渡ししますが宝石が研究の邪魔になる恐れがあるので任意です」

「わかりました」

「あとは各所に研究室と書かれた部屋がありますが1階にあるのは大部屋で中には1部屋10人程度のチームで研究したり仕事をしたりしています。魔物の捕獲だったり赤ん坊の魔力測定だったり他にもたくさんの仕事をしてますね。そういう人たちがいる部屋がこの階に5つほどあります。そして2階に行きますね。ここには研究専門者が5人程度でチームを組んで研究しています。この階の奥に資料室があります。自由に使って結構です。そして3階には各魔法の権威たちの研究室があります。部屋が足りないので数人ずつ同じ部屋の中で仕切りを作って研究やらなんやら自由にしてますね。権威たちはおじさんたちも多いので好きに研究させておけば煩くないんです。そして貴方の研究室は特別に1人部屋です。まあ、貴方の研究に関わる者たち以外がいると邪魔なのでその方が都合が良いのです。この部屋ですよ」


 歩きながら説明を聞き、3階のある部屋に護衛を外に待たせて入る。


「ねーだからさーこっちに予算増やしてくれない?」

「無理ですってば」

「じゃあうちなら良いだろ。悪い闇魔法使って悪事働いても良いのかよ」

「ひぃ……冗談言わないでください心臓に悪い」

「いやマジで。お宅の坊っちゃん預かってるの俺だぜ?」

「それは感謝しています。ありがとうございますすみません。けどそれとこれとは別です」

「皆さん、局長をあまり困らせてはいけませんよ。貴方たちが無理やり局長にさせたんですから」

「お前だって押し付けたでしょうに。お前でも良かったんだからね」

「皆さーん聞いてください。ミレイア嬢が来ましたよ」


 局長補佐が手を叩きながら言うと中にいた男たちが振り返る。


「おやおや。本当にマイアさんにそっくりですね」

「あいつの孫娘かー。甥に聞いた通りだね。有能そうな感じがバシバシ伝わってくるよ」

「へえ……さすがレアンドロ様の娘って感じじゃねえか」

「ああ、お待ちしてましたよ、さあどうぞ」


 人の良さそうな男が手招きをしてミレイアを席に座らせる。長方形の机を囲うようにしてミレイアの左隣にその男が座る。


「自己紹介をしますね。私が局長のコンラドです。氷魔法の権威でもあります。そして私の左にいるのが感知魔法の権威カルリトさんです」

「よろしくお願いします。お会いできて嬉しいです」


 この人がお母様の先生だった人なのかと思って急いでマイアから受け取った手紙を渡す。


「あの、母からの手紙です」

「おや、ありがとうございます。律儀ですね、相変わらず。あとで読ませてもらいます」

「はい」


 感知魔法の権威、カルリトは40代の柔和そうな男だ。彼は20代でマイアを教えていた頃には既に優れた感知魔法の持ち主として才覚を発揮していた。


「そしてその隣が光魔法の権威で前スネイガン公爵のヘラルドさんです」

「ヴィクトルから話は聞いてるよ。じいさんに似なくて良かったね」

「私も先生から少しお話お聞きしました」

「無責任な親族だって話でしょ。まあ、実際そうなんだけど適材適所ってのだからね」


 光魔法の権威、前スネイガン公爵のヘラルドは頬に切り傷をつけた童顔な男だった。彼は子供の時童顔なことを気にして戦乱の中負った傷を自分の魔法でわざと治さず箔をつけたのだ。彼ほどの男なら古傷でも治せるものは治せるがあえてそのままにしていた。


「その隣が闇魔法の権威、ヤンさんです。怖いこと言ってきますけど本当は良い人です、と思ってます」

「んだその中途半端な紹介は」

「すみません」

「嬢ちゃん、俺はヤンってんだ。よろしくな」

「よろしくお願いします」


 闇魔法の権威、ヤンはヘラルドと同世代の男で賊のような荒々しい風貌をしているが子供の面倒見は良い。局長の息子シャルルの世話係の1人だ。もう1人はもちろんヴィクトル。


「という感じですね、自己紹介は」

「あの、シールド魔法の権威の方に魔法を見てもらうことになっているのですが」


 ミレイアはまだ人の形に魔力を纏わせるのが限界だ。研究にも必要だし訓練も兼ねてしまおうとレアンドロが決めてシールド魔法の権威にも話を通すことになっていた。


「あれ?自分で自己紹介しなかったの?」

「ああ、すんません、忘れてました。俺がシールド魔法の権威っす」


 そう言ったのは局長補佐の男だ。先程とは違った口調で言う。


「そうだったのですか」

「はい。シルヴィオです。よろしくっす。レアンドロ様が爽やかーに娘に変なことを教えないようにって脅してきたんで気を付けながら説明口調にしてたら忘れてたっす」

「権威というのはどういう基準で選ばれるのですか?コンラド様とシルヴィオ様は他の方に比べて随分お若いようですが」

「一番強い人がなるというものでも年功序列でもありませんよ。相応の力は必要なんですけど。権威という肩書きすら面倒で一局員が良いという人は私たちみたいに若い者に押し付けてきますし。ようは肩書きなので実力が伴っていれば誰でもよくて第一人者としての責務も追いたくない人が擦り付けてくるものです」

「僕もただの研究員で良かったんだけどさ、先代国王が絶対だって言うからね。仕方なく」

「これのせいで会議に呼び出されたりするのは面倒だけどな。ま、好き勝手やらせてもらってるし俺はなんでも良いんだけどな」

「まったくさー定期会議にも呼び出すなんて話が違うって言ってるんだけどなー、あの兄弟め」

「私は若い時から押し付けられました。局長たちと似たようなものです」

「俺はヴィクトルと同級生であいつや局長と同じく不幸体質なんで押し付けられちゃったんすよ」


 シルヴィオはヴィクトルと仲が良く、有能であるがゆえに揃って大人たちに振り回されていた。


「そういうわけで私たちが貴方の研究と調査に協力します。シルヴィオが常にサポートして私は何かと仕事がありますが基本この部屋にいます。他の方はまあ気まぐれに見に来るそうです」

「ま、呼んでくれたら来るし適当に見に来るよ」

「俺もできることはやるからよ」

「私は頻繁に様子を見に来ますね。マイアさんへの教えを途中で止めてしまったお詫びもありますし。それに若い人の力になりたいですしね」

「ありがとうございます」


 そうしておじさんたちはそれぞれの研究室に帰っていき、部屋にはコンラドとシルヴィオとミレイアとカミニャンが残った。移動中はフードの中に隠れていたカミニャンは皆の自己紹介の間ミレイアの膝の上で大人しくしていた。だがカミニャンが部屋から出ていく3人のことを見ているのに気付いたミレイア。


『カミニャン、どうかしたの?』

『いえ、あのスネイガンの彼、初代国王の時代にスネイガン公爵を名乗ることになった男に瓜二つだと思いまして』

『祖先なのよね。似ていることがあってもおかしくないんじゃない?』

『そうですね。ただ気になっただけです』

『どんな人だったの?』

『封印魔法を持っていました』

『封印……この国にそんな魔法ある?』

『とても珍しいですけどね。10年に1人だけスネイガン公爵家からのみ出現しています』

『そんな魔法があるのね。魔法って家は関係ないって教わったけど』

『そういう事情もあってかスネイガンに魔法を研究したいという者が多く出るのでしょうね』

『なるほど』


「さ、ミレイア嬢、さっそく研究に関して話をしていきましょうか。今日はそれでお仕舞いにしましょう」

「はい。よろしくお願いします」


 コンラドとシルヴィオとミレイアは改めて話を始める。


「未知の精神に作用する魔法に関する調査と対処法の研究が目的だそうですね。その一環として2つ以上の特殊魔力を込めた国宝の調査と過去の危険な魔法に関するデータの参照、と。では、とりあえず精神に作用するという魔法についてお話するところから始めましょうかね。過去には世の中に伝わっていない魔法にこういうものがあります。1つは奴隷魔法」

「奴隷?」

「意のままに人を自分に従わせる魔法です。恐怖心から従わせていると思われていたのですが魔法だったんですよね」

「そんな魔法が……」

「他に石化魔法というのもあります。目に見えて人を石にするのではなく思考を停止させてしまう魔法です。かけられてから数時間後に立つことも動くことも出来ず寝たきりになってしまうので病気か呪いかと疑われていましたがそういう魔法でした」

「あの、そういった魔法はなぜ3才の時にわからないのでしょう」

「知られていませんが稀にそのあとこうした魔法が突然発現してしまうことがあるんです。本当に50年に1人といった具合ですけどね」

「感知魔法でわかったりは」

「結局は感知で何かおかしいと気付くのですがこうした突然変異魔法はそう名付けた通り元々持っている魔法が何らかの刺激によって元々のものと分離し変異し出来上がるものと考えられています。なので並みの感知魔法からすると色に変化はないのです。カルリトさんほどの感知魔法持ちなら僅かに変化が見られるそうですよ。並みの感知持ちでは同じ色に見えるのに変化しているように見えるとか。先ほどの石化魔法は今から15年ほど前にカルリトさんが見つけたんです。カルリトさんの後継者に貴方のお母様の名前が上がっていたらしいですがまあ他にも見込みのある感知魔法持ちはいますからね」

「あ、お母様……」

「どうしました?」

「あの、えっと、今言って良いのか……」

「なにか未知の魔法に関することですね。私もシルヴィオも信用してもらって大丈夫ですよ」

「証拠もなにもないっすけど、まあ俺に関しては、とりあえず今はヴィクトルの親友っつーことで信じてもらえないっすかね」

「はい。えっと、私の母がここから東の方角に黄色とオレンジに変化する魔法を感知したそ……うで、あの、大丈夫ですか?」


 2人共に驚いて椅子を倒して立ち上がったのだ。


「い、いえ、あれ、おかしいな、未知の魔法って今出現してる突然変異魔法を調べろってことだったっけ?そう言ってたっけレアンドロ様って」

「いえ局長、言ってないっす」

「あ、お母様がっていうのはお父様にはまだ話してなかったです」

「まずいなまずいよな……えっと、東?カルリトさんに探しに行ってもらった方が良いかな?」

「いや、でも対処しようがないと危ないかもっすね」

「確かに。……ちょっと会議やり直し!!」


 コンラドはそう言うと部屋を出て行ってしまった。


「あの、私話すタイミング間違ってました?」

「いえいえー、大丈夫っすよ」


 無表情のまま心配になるミレイアにシルヴィオは落ち着いた様子で答える。その顔には汗をかいているが。


「はいはい、行きますよーって」

「なんだなんだ、いつでも呼べとは言ったけどよ、いくらなんでも早すぎだろ」

「まあまあ、とにかく話を聞きましょう」


 慌てるコンラドにせっつかれながらヘラルドとヤンとカルリトが戻ってきた。


「よ、嬢ちゃんさっきぶり」


 その風貌に似合わず気さくなヤンにミレイアはペコリと頭を下げる。


「それで局長、どうしたのですか?」


 カルリトが穏やかに聞くとコンラドは1つ深呼吸して答える。


「突然変異魔法の出現です、今。前の石化から15年しか経っていないのに!!」

「へー」

「なんだ、そんなことか」

「おやおや、なるほど、そういうことでしたか」


 コンラドの言葉を聞いても落ち着いてる3人に若いコンラドとシルヴィオは慌てる。


「どうしましょう。私しばらくそんな重大案件くると思ってなかったんですけど」

「おいおい、重大案件なら一昨年テオドール殿下のがあったじゃねえか」

「困ったひよっこだねーお前は」

「じゃあ代わってくださいよ局長!!そう言うヘラルドさんが!!」

「まあまあ、落ち着いてください。つまりミレイアさんは未知の存在していない魔法について調べたかったのではなく出現してしまってる魔法を調べたかったということですよね」

「え、まあ、そうです」


 夢のお告げという話をレアンドロにした時点では出現していると人間にわかるように判明していたわけではなかったし前後関係がおかしいのだがまあ良いかとミレイアは思う。


「ミレイア嬢のお母様、オルガン公爵夫人は黄色とオレンジに変化する色を見たんだそうです」

「あの、でも母は久しぶりに集中したから上手くできないって言っていて確かじゃないかも」

「マイアさんの広範囲感知ですか……興味深いですね」

「あいつの娘かー。20年前にすごい才能くるかーと思ったのが懐かしいね」

「おーここにきて爆弾落としにくるとはさすがやつの娘じゃねえか。あ、良い意味でだぜ、嬢ちゃん」

「マイアさんの広範囲感知はこの国全てを網羅していました。私でも広範囲感知はせいぜいこの王都までです。しかしずっと魔法が制御できない状態にあったマイアさんではできて3000ヘイル程の範囲でしょう。色の判断も不確かかもしれません」

「じゃあ見間違いってことっすかねカルリトさん」

「いえ、見えたのは確かでしょう。黄色とオレンジだけではないとかその辺りの不確かさがあると考えられるという話です」

「カルリトさん見に行かれますか?」

「いえ、よくわからない状態で突然変異魔法に相対するのは早計ですからね。といっても突然変異魔法持ちの周囲に影響があるのに放置するのは危険でしょう。とりあえずマイアさんにもう一度感知をしてもらって」

「あの、母は今妊娠中でできるだけ安静にと」

「はい?妊娠?」

「え、オルガン公爵夫人が妊娠っすか!?」


 またもコンラドとシルヴィオが慌てて立ち上がる。


「え、待ってくださいなんすかそれ。またテオドール殿下みたいなの生まれるかもしれないじゃないっすか!!」

「みなさん知ってたんですか!?」

「初耳だねー」

「めでてえじゃねえか。お前ら局長と補佐だろ。ちったー落ち着けよ」

「そうですよ。ですがレアンドロ様もそのような重要事項私たちに伝えてほしいですね。もし男のお子様ならまた天変地異かもしれません」

「笑い事じゃないですよカルリトさん!!」

「父は陛下には報告したって嬉しそうに言ってましたけど」

「だからそれをこっちに報告してほしいんだけどなーあの方たち……。とりあえずオルガン公爵夫人に感知魔法を使わせるわけにはいきませんね。夫人のお身体も心配ですし」


 ミレイアはレアンドロに言われたことを思い出す。マイアの妊娠がわかって喜んでからレアンドロは神妙な顔をしてミレイアにテオドールを生んだ王妃の身体が危険な状態になったことと魔力に差があると体が耐えきれなくなる話を簡単に教えた。


 ミレイアはそれが自分がテオドールの婚約者になった理由なのかと思った。レアンドロとマイアはミレイアを安心させようと対処法があるからねと言ったがミレイアが心配なのはマイアのことで自分のことは特に何も思わなかった。


 性別がわかるくらいの時期になってから体の中に弱くシールドをかけたり定期的に回復魔法と治癒魔法をかけるというのをしていくと聞き自分ではまだシールド魔法をコントロールしきれないことを悔やんだ。自分にできることはないと知って、妊娠中に魔法を使ってはいけないというのでマイアが安静に過ごすように毎日気にしているのだ。


「例のことはいつ始めるんです?俺が行くんすよね」

「ええ、シルヴィオが適任でしょう」

「あんまり早くかけすぎてもいけないですよね。ああ……シールドと回復と治癒かけるってわかってるだろうになーレアンドロ様……」

「その頃になったら言おうと思ったんじゃないかなー。レアンドロ様って昔からそんな感じだったし」

「ってーことは突然変異魔法の方は地道におかしなことが起きている地域を探すしかねえな」

「探しに出る人が何らかの魔法をかけられては困りますからね。まずは領主に聞き取り調査をしてみましょうか。私が感知しながら話を聞いてみましょう」

「だな。んじゃその方向で」


 どうやら話がまとまったらしい権威たち。ミレイアは話が大きくなってサラにバレたりしないだろうかと思ったが、これは外部に漏れると厄介だからと機密事項扱いとされた。

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