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穏やかな日常  作者: 代理人涼子
小野麗璃と霧畑未莉はお友達
1/13

彼女達はお友達

穏やかな日常の中に

生きていた。

彼女達の話をしよう。


彼女達は似た境遇であった。

親は片親で

同じく母と家に暮らし

同じく学校で孤立して

同じくバイトをして

同じくクトゥルフ系TRPGを

嗜んでいた。


過程が違い結果が同じなのは

学校での態度と

父親と兄弟姉妹が居ない理由が

違うだけだ。


薄暗い、校舎の焼却炉で

意味も無く紙を燃やす

眼鏡をかけた優等生風の生徒が居た。

足下には雑誌や木の枝が

並んでおり

燃やしては眺めていた。


火は生きてるように踊り

助けを求めるように

手を伸ばし藻掻くが

届くわけも無い。

ただの火で、云われも無い。


「生徒会長さんが

こんな事をして良いのかなー?

怒られちゃうよー?」


からかうように

意地悪な笑みを浮かべる。

同じ制服を着て、

同じ学校だと分かる。


「文武両道、成績優秀、

生徒会長の小野(おの)麗璃(レイリ)さんが

こーんな夜遅くに

意味も無く雑誌を燃やすなんて

珍しいわー」


そう言っては

暗がりから明るい場所へ

近寄るように

小野(おの)麗璃(レイリ)へ歩を進める。

未だに焼却炉を眺める。


霧畑(きりはた)さん。

それはどうでも良いの。

私にとって

生徒会長は手段なのを

知ってるでしょ?」


したり顔で

堂々と自分を晒し

木の枝を一掴み、雑誌を一つを

焼却炉へ放り込む。


パッチン


大きく音が爆ぜ、火の粉が舞う。

小野(おの)麗璃(レイリ)

目を輝かせる。

火はまた大きくなり

灰が底へ溜まるのを眺める。


「はいはい。知ってますよぉ。

ホント、悪趣味ですよね」


「確かに、悪趣味ね。

火を憎むべき私が、

火に魅入られてるなんて、

回りが何を言うのかしらね」


目を合わせずに

お互いに笑いながら

霧畑(きりはた)は進んだ。

そして、手が伸ばせるだけの

距離まで近づき、

持てるだけの木の枝を持ち

焼却炉へ放り込む。


霧畑(きりはた)さん。

何を勝手にするの。

勿体ないじゃない」


バッチン

バッチンバッチン


また、大きく爆ぜる。

天に手を伸ばし

助けを求めるように

木の枝は燃えていく。

火の中に、沈んでいく。


「そーかな?

君は木の枝が燃えるのが

好きなんだろ。

木の爆ぜる音もして

生木ばかりを

集めたのが分かるよ」


お互いに火を眺める。

木の枝は炭へ灰へ姿を変えていく。


「無駄に知識があるわね。

その無駄な脳に

勉強を詰めなさい」


「えー、無駄ではないよ。

アウトドアに使えるし

キャンプは楽しいよ」


間が開く。

お互いに黙り込んだが

それは考えてる証でもあった。


「良いわね。

私も参加したいわ」


お互いにくすくすと笑い

火を眺める姿は変わらない。


「焚き火が目的だよねぇ。

まぁ、うん。良いよ。

日帰りバーベキューなら

火が使えるし、

必要品が揃ってる」


夜空に煙がかかり

月が霞む事も気にせずに

予定を立てる。


「なら、親戚の姉に

声をかけるね。

あの人は車も釣り道具も

揃ってるし、気に入るよ」


「最高。

釣り上げすぐの焼き魚とか

食べたことが

無かったからスッゴく楽しみ」


小さな笑い声が辺りに響く。

人目を気にせずに

二人は焼却炉の前で

未だに会話を続ける。


「美味しいよ。

私が、食べたのは

釣ってから

5時間後のアジだったかな」


少しだけ刺激的な高校生活を

送っていたとある日の事だった。

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