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⑨馬の耳に念仏
馬の耳に何かが留まっている。
何か黒くて小さい点のようなもの。
たぶんハエのようなものだろう。
よく見ると、まん丸としていてハエではない。
よく見ると、跳ねてしまった泥のようにも見える。
でも、泥にしては輝きすぎている。
もっと近づく。
それは究極の球体だった。
一度も見たことの無いような物体だった。
この世には存在しないような、そんな物体だった。
すると黒から赤、赤から緑、緑から黄色、黄色から白と、次から次に色を変えていった。
そして、白に黒が加わり、目玉のように変わっていった。
途轍もない恐怖を覚えた。
もう何も出来ない。
もう出来ることといったらこれしかない。
そう、念仏。