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「城の中で見る夢」
消えていく泡の泣き言に耳を貸さない
口を縫い付けられた囚人に
あなたは否と答えた
不幸自慢の狼たち
擦り切れていく布の涙
初版発行代金はいつもの口座に
素敵な言葉をありがとう
紫に帽子をあげたのは 出任せに過ぎず
落としてきた影が問う
村から離れていったのはいつのことだったか
今日が明日でないというのなら
くじ引きがすでに決まっているというのなら
野菜畑で繁殖する芋虫たちはいつのまにか
赤い赤い土くれの人形
辞書を破り捨てた日に
呼吸を乱された宇宙
青い空に手を広げ
彼方に映る影法師
絵空事を描き切れずに
キャンバスを塗りきろうとして失敗
マーマレードの瓶に詰めたのは
今日煮詰めた砂糖と孤独
熊の手に似た紅葉に別れを
砂金の蕾に万雷の拍手
投擲したはずの昨日
震える指先にかかる鈍色の憂鬱
娘の声が遠くに聞こえ
夜闇にまぎれた黄昏が乞う
この向こうに何があるのかさえ知れたのなら
明日にでも息絶えてしまおう
余分な人生だと判断するのは私で
決してあなた方ではない
決定権があるというのなら
それでもいいのだと断ずるだけの
木漏れ日のなかに置き去りにしてきた
いつかのあなたに懺悔するはずだから
桃のような丸みに
かみついたような歯型の紋
間違い以外に正解はなく
ほとんどちぎれかけの思考で願う
朝日の中に溶けていけたら
どんなにか幸福なことだろう、と
文字の滲む先に
親指の英知恵を借り受け
寒さに震える足を温め
目の届く範囲で善行をなす
求めるばかりの日々を捨て行き
いまだ会えない透明な青を探している




