0006
<ノータイトル>
工場長の言うことには、
今すぐにでも雷管を下ろさなければならないとのこと。
しかし、その肝心のものが見つからずに困っていた。
電気がうねる中で作業をするのは簡単なことではない。
幼い老人が言った。
それに触発されて、周りにいた者たちが口々に話し出す。
やれ材料が足りないだ、やれ賃金が低すぎるだ、
日頃からため込んできた不満さえも言っているので、
工場長はほとほと参ってしまった。
ルビーの紅い輝きが目を貫き、
舵は一気に取られることで、
皆その結末を待っている。
足が石になろうが関係ない。
結果が欲しいのである。
夜行鳥は静かに鳴いた。
枯れ細った木々の枝にとまり、西を向いて。
明日の光はまだ昇っていない。
夕暮れはとうに過ぎていたが、なおも母鳥は帰ってきていなかった。
切り落とされた耳は、やがて口になり目になった。
黄色の音を聞いて、
紫色の言葉を紡ぎ、
赤色の景色を見た。
そして、その後に、
真珠は砕け散る。
隙間に埋められ、
破片が全ての行方を阻んだ。
枯れた薔薇に水をやった後、
ミミズクがそれを毟り取っていった。
見送りは要らない、とばかりに
猛然と飛び去っていったので、止めることもできなかった。
妖精は木の葉をすりつぶして、水の中に隠れた。
大きな水晶だけが
底に沈んだ。