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<ノータイトル>
急激な雷雨が近くの丘に生まれた。
雨雲はまた雨雲を呼び、
辺りには水気が満ちる。
湯気の近くには立つな。狙われている。
呼気と吸気の繰り返し。
味を占めた狩人は、草むらを穿つ。
矢は弓なりに飛んでいき、一匹の獣に当たった。
小さな鳴き声が一つ、こだました。
森は何もしないし、何もできない。
木々を切り倒しても、ただ見ているばかり。
切株に座る熊は子連れで、
足元には二、三匹の子がいた。
前足でお腹をかいている。
そこに狩人はやってくる。
木陰に身をひそませ、連射の構えをとった。
弦を引き絞り、狙いを定める。
矢は、今か今かと待っていた。