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「夏の縁側」
薄暗がりのその先に大きな白い入道雲が見える。
白さが際立って、周りの雑事は全て置き去りにされた。
井戸の中の水を一杯汲んで飲むと、冷たさが全身にめぐる。
夏の暑さが蝕んでいた身体は、一気に涼しさを纏った。
あの生命の芽吹き。
ひまわりが太陽を追いかけている。
黄色が目に優しい。
あの夏の向こうを探しに行こう。きっとあるはずだ。
「落下旅行」
地熱が私をふきあげる。
空中から見た地表は、ひどく小さく映った。
牛の動きは緩慢としていて、目を落としそうになる。
背中に生えた翼は太陽に溶かされ、
あえなく落下。
麒麟が追いかけてくる。
どどうどどうと足音駆ける。
道の真ん中に提灯の明かり。
夜が這い寄ってきた。
手を伸ばせば逃げられそうなものなのに、
足は動かず、腕も振れない。
目だけが、
全てを見ていた。
「偶然の出会い」
重なる点と点が一瞬会って、
また離れていった。
手を振ることも無く、別れていた。
大きな目玉と小さな口を持つツチノコが
槌のような頭を持ち上げてこちらを見ている。
体が閉じて、心まで引きずり出されてしまった。
かけより撫でる。
その質感に委ねる。
基地は全て機能していたようで、仕方なく遠ざかる。
だが、
帰りにもう一度見に来よう。
そう
思って背を向けた。
追ってはこなかった。
それが少し寂しかった。
カナリヤは鳴いている。
暗い地べたの底で。