0026
<ノータイトル>
ふわり舞い落ちる桜の花びらは、どうしてか青に染まっていた。
歯車がからから回るのに合わせて手を叩くと、
高級な車が横付けしてきて、「もっと叩け」とバクが囁いた。
遠い金色に重ねたのは蝶の羽音。
無音なのに聞こえるとは、これいかに。
忘れっぽいカタカナの形に目を止め、虫を射止める。
テレスコープの鐘の響きが全てを壊す。
りっしんべんの行進はとめどなく続けられ、
椅子の軋みに構うことなく、同直線上で踊り続けたカラス。
羽の黒さは目をつぶし、太陽は溜め息を吐いた。
斜め上に残っていた妹は涙を落とし、口の裏で四つ葉を千切った。
海に撒かれた銀のさざめきで、体を切り刻み、丘の頂上で灰にした。
風と共に流れていく灰はただ静かであった。
隣にいたメビウスの輪が外れ、抜け出した先には大まかな鼓動の金。
ハンガーをかけたのは鋏が口煩かったからで、
何もないドーナツのトーラスを埋めるのは、虫のいい幻想。
甘い砂糖菓子を作る者もおらず、糖分不足の患者たちはストライキを始めた。
単純に見えた虎の模様は複雑に絡み合い、繰り返す呼吸の内に隠れた。
女神は岩戸に閉じこもり、全てをあきらめた。
暗がりが右手を上げる。
では、左手は誰の為に?
分からないまま終わる、そんなのは嫌だ。