0025
「吐き気を抱えた動物園」
蚯蚓ののたくった文字を追っていると、通りに明るい色をした猫を見つける。
縦横無尽に走っていくその様は、ひどく煌いて見えた。
後ろを追えば、十字路で傘が通せんぼ。
「ビザはお持ちですか?」「いえ」「では通れません」
仕方ない、遠回りをしよう、と
ガス灯ともる路地裏を一人孤独に走り抜ける。
泥がはねた先に魚はおらず、呼吸困難で喘ぐ口なし猿。
耳を塞いでやると、途端に安堵した模様。
これに気を良くした緑黄色野菜たちはパレードをなして、大通りに繰り出した。
無臭の毒気は風にさらわれ、排水溝に詰まり始めると、
傲慢な貴婦人も口元を隠して、和やかに笑っている。
耳を奪われた物乞いは、パンを生み出し、その身を酒に変えた。
最後の顔は綺麗な苦しみに満ちていた。
痩せ細った猫は、自慢の髭を数本抜いてしまい、
路上にぶちまけられた苦悩に花束を添える。
段段まだらの鍾乳洞は音を立てて割れ、翻る布切れはズタズタに引き裂かれた。
商売人は午後の茶会に出席することなく、独房に敷き詰められてしまい、
雨粒は肩を重くしている。
晴れ間は海中に沈められており、誰もその姿を確認できていない。
そんな毎日が百と数年続いた今朝、問答を繰り返すミミズクが言った。
「銃声の頂に登れ! とく登れ! 世界を大きな黒布が覆うつもりだ!」
皆慌てて二丁ナイフを取り出し叫んだ。