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Automatic writing  作者: 半信半疑
24/73

0024

<ノータイトル>


 朽ちた廃屋の上にかかる薄雲の大群に別れを告げる。

 夕日は微笑み、それだけが救いだった。

 黄色の眼差しは誰一人欠けることなく降り注がれ、失った尊厳は甦る。

 新しい朝日は宙で回転しながら、称賛の言葉を待っている。

 祈りが欲しかったのだ。

 尊い祈りが。闇を照らす光が。

 空を切る手の、あまりの汚さに、

 退廃の吐息は逆なでされ、下方修正された台本だけが全人に渡った。

 贋作は贋作のままで、本物は偽物に成って、

 草の揺れの中に豹は飛び込んでいった。

 赤い帽子の男と青いドレスの女は、二人でワルツを踊る。

 何が楽しいのか、知らない状態で。

 無知の中に見つけた知性の欠片は、擦らなければ輝かず、

 手にした幼子は川に放り投げた。水音は空しく響いた。

 巡回していた鳥族の兵士は、いつも通りの日常に感謝し、大空で一声。

 豆電球の明るさに目を瞬かせた後、大きな穴の中へ帰っていった。

 森は木を隠して、青葉は腐っていく。

 三度叩かれた手と手の労りは、だからこそ、土を抉り取っていったのだ。

 眠り続けていた姫が、王子の邪に気づき、

 林檎の赤色に秘められた落日に慄いた。

 遊泳するくじらの潮が辺りを真白に染め上げた午後、

 酸味と辛味が舌を破壊。

 樽に仕込まれていたのは長さ八フィートの剣。

 変えるとともに消えていったのは、幻の蝶。

 弓の弦がピンと鳴り、矢は的を射抜いていた。

 血は流れず、残ったのは骸の涙だけ。

 記憶に射し込まれたセピア色の情念に別れを告げよ。

 無様な鷲の翼、口内の汚泥、腐海の衝動。

 冬の寒さに愛想を尽かせた母親は、鞦韆で一人漕いでいた。

 波のまにまに光る銀。

 背負ったものは暗がりで、迷ったのは処分先。

 急激な上昇と下降を繰り返し、白い部屋で見たものは、

 どこにも行けないツチノコの影。

 朝と昼と夜の無期限な戸惑い。

 誰かの嘲りだけが耳を打つ。

 端に置き去りになった人形は、静かに息を引き取った。目だけが光っていた。

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