0024
<ノータイトル>
朽ちた廃屋の上にかかる薄雲の大群に別れを告げる。
夕日は微笑み、それだけが救いだった。
黄色の眼差しは誰一人欠けることなく降り注がれ、失った尊厳は甦る。
新しい朝日は宙で回転しながら、称賛の言葉を待っている。
祈りが欲しかったのだ。
尊い祈りが。闇を照らす光が。
空を切る手の、あまりの汚さに、
退廃の吐息は逆なでされ、下方修正された台本だけが全人に渡った。
贋作は贋作のままで、本物は偽物に成って、
草の揺れの中に豹は飛び込んでいった。
赤い帽子の男と青いドレスの女は、二人でワルツを踊る。
何が楽しいのか、知らない状態で。
無知の中に見つけた知性の欠片は、擦らなければ輝かず、
手にした幼子は川に放り投げた。水音は空しく響いた。
巡回していた鳥族の兵士は、いつも通りの日常に感謝し、大空で一声。
豆電球の明るさに目を瞬かせた後、大きな穴の中へ帰っていった。
森は木を隠して、青葉は腐っていく。
三度叩かれた手と手の労りは、だからこそ、土を抉り取っていったのだ。
眠り続けていた姫が、王子の邪に気づき、
林檎の赤色に秘められた落日に慄いた。
遊泳するくじらの潮が辺りを真白に染め上げた午後、
酸味と辛味が舌を破壊。
樽に仕込まれていたのは長さ八フィートの剣。
変えるとともに消えていったのは、幻の蝶。
弓の弦がピンと鳴り、矢は的を射抜いていた。
血は流れず、残ったのは骸の涙だけ。
記憶に射し込まれたセピア色の情念に別れを告げよ。
無様な鷲の翼、口内の汚泥、腐海の衝動。
冬の寒さに愛想を尽かせた母親は、鞦韆で一人漕いでいた。
波のまにまに光る銀。
背負ったものは暗がりで、迷ったのは処分先。
急激な上昇と下降を繰り返し、白い部屋で見たものは、
どこにも行けないツチノコの影。
朝と昼と夜の無期限な戸惑い。
誰かの嘲りだけが耳を打つ。
端に置き去りになった人形は、静かに息を引き取った。目だけが光っていた。