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<ノータイトル>
苦悩する人形は独白で、奇妙なことを言った。
”電気兎は昼間踊る”
赤い瞳の輝きは何よりも孤独であり、口と口を合わせた結果らしい。
迷い子はいつまでも彷徨っていて、青い果実は、しなっている。
おちてしまう瞬間を恐れて、夜中に涙を流している。
無知だと知らずに黄色い線を引き千切った野蛮な輩は、
葡萄を一房持っていった。
綺麗な球形は転がっていく。
止める者が誰一人としていないからだ。
金の葉が宙を合っている間だけ、月は笑顔を見せてくれる。
手の届かない場所は、それだけの価値を持っている。
”充分だ、充分なんだよ”
狂った理人は木霊する。
森の中で一番年老いた鹿が死んだ。寿命だった。
孤児は言った。
”これもまた運命だ”