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「逢魔が時から静かな夜にかけて」
奇妙な一致もあるもので、
夕方の雨と私の住居が重なってしまった。
私、ずぶぬれである。
口裏合わせに呼んでいた狼は、
大笑いして帰っていった。
そんなにおかしな顔をしていただろうか。
味のないガムを噛みながら、
ゆっくりと夜を過ごしていると、
月のかさが見えて、
そういえば雨が止んでいるな、と気づく。
大きな魚が宙を泳いでいるのが見えて、
うろこが月光を反射させていた。
どんなに願っても空を飛べないし、泳げないので、
私はただ、眺めることしかできなかった。
しかし、それでもいい。
手を触れずとも楽しめることはあるのだ。
それでいい。
言い聞かせるようにつぶやいた。
光りは優しかった。
コーヒーカップには澄んだ水がたまった。
私はそれを、時間をかけて飲み干した。