0016
<ノータイトル>
目、目、目。
たくさんの瞳。
誰の想いを憂いているんだろう。
もう、この世にはいない者たちの嘆きだろうか。
私にはうかがいしることもできない。
宙を漂う魚たちは、ひたすらに平穏を求めているようだ。
地面から草が伸び、それがいつの間にか木になっている。
光りはやがて柱をつくり、僕はそれをのぼるんだ。
一段一段、噛み締めるようにして。
けれど、どうしてだろう?
何を噛み締めているんだろう?
意味のある行為なのか分からなくて、
大声で、
空に向かって叫び出したくなる。
それも、
周りに誰もいないからやれることだ。
誰かがいたのなら、
叫ぶなんて、声をあげるなんて、
おそろしくてできやしない。
鉄柱が雨のように降り注ぐ町で、
私と僕は立ちつくす。
他にできることもないから。
そのうち、
風が吹いて、彼女は先に行ってしまった。
行く先は聞いていない。教えてももらえなかった。
ひどい奴だ、とは思わない。
そういう気分だったのだろう。
仕方のないことだ。
昂ぶりは突然やってきて、勝手に体を動かしてしまう。
理由は、探せば落ちているのかもしれないが、
できやしない。
行動矛盾を突きつめた先には、
深い穴しかないのだから。
暗闇の亡者は酷く傲慢で、
人の言葉をききやしない。
でも、そこに少し
憧れもするのはなぜだろう。
赤い夕日と青い朝日の交わる場所で、
静かに眠っていた子らは、
語り出す。切り出す。歌うように。