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Automatic writing  作者: 半信半疑
15/73

0015

<ノータイトル>


 昼間の月が笑っている。

 その下の樹が、大きな葉を揺らして落とした。

 嘆きの声もなく、淡々と。

 同一の人物はやってこない。

 丘の上からはたくさんの光を見ることができるけれど、

 幽霊は見えなかった。

 海月が宙をぷかぷか移動している。

 その波間に、私も漂ってみたかった。

 星の光が届くまで、いくらか時間がかかるらしい。

 夕べの太陽は大きな欠伸をかました。

 それを隣のアルマジロが指さして笑っている。

 馬鹿にするような、暗い感じはしない。

 穏やかな時が流れていた。

 やさしい時間。

 そこから生まれた桃の実は、

 ぽとりと地面に落ちる。

 接地した時、音は生まれなかったけれど、

 桃の実は傷ついた。

 誰も予想できなかった傷だった。

 癒せる者もおらず、

 桃はただ泣いていた。

 「痛い」

 という声が私の耳を揺らした。

 貝がらの中で反響し、

 揺れて揺れて揺らいだ。

 膝をついて、許しを請うた。

 そうすれば、というより

 そうしないと、という

 強迫観念が突き動かした結果だった。

 桃の実はまだ泣いていたけれど、

 少し声を抑えることができるようになった。

 私はどうすればいいか分からなくなったけれど、

 謝ることはしなかった。

 ただ一緒にいたかった。

 夕日と緋の世界は、

 夜を押し退け、

 暗がりは隅っこでじっとしていた。

 お呼びがかかるのは、まだ先のようだった。


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