0015
<ノータイトル>
昼間の月が笑っている。
その下の樹が、大きな葉を揺らして落とした。
嘆きの声もなく、淡々と。
同一の人物はやってこない。
丘の上からはたくさんの光を見ることができるけれど、
幽霊は見えなかった。
海月が宙をぷかぷか移動している。
その波間に、私も漂ってみたかった。
星の光が届くまで、いくらか時間がかかるらしい。
夕べの太陽は大きな欠伸をかました。
それを隣のアルマジロが指さして笑っている。
馬鹿にするような、暗い感じはしない。
穏やかな時が流れていた。
やさしい時間。
そこから生まれた桃の実は、
ぽとりと地面に落ちる。
接地した時、音は生まれなかったけれど、
桃の実は傷ついた。
誰も予想できなかった傷だった。
癒せる者もおらず、
桃はただ泣いていた。
「痛い」
という声が私の耳を揺らした。
貝がらの中で反響し、
揺れて揺れて揺らいだ。
膝をついて、許しを請うた。
そうすれば、というより
そうしないと、という
強迫観念が突き動かした結果だった。
桃の実はまだ泣いていたけれど、
少し声を抑えることができるようになった。
私はどうすればいいか分からなくなったけれど、
謝ることはしなかった。
ただ一緒にいたかった。
夕日と緋の世界は、
夜を押し退け、
暗がりは隅っこでじっとしていた。
お呼びがかかるのは、まだ先のようだった。