0013
<ノータイトル>
あの日、
あの日の夕暮れはいつもと同じだった。
茜色の空、ゆっくりと飛ぶ蜻蛉の目玉。
複眼に映る太陽の残りカス。
希望が燃え、朽ちて溶けた。
稲穂が静かに揺れているから、
長く伸びた影が見守っている。
それを遠くで確認するススキ。
白い毛が交互に頬を叩いたので、
私が私だと気づかされる。
おーい、そこにいるのは誰なんだい?
山に問いかけるが、山彦はやってこない。
誰に言ったんだ? 誰に?
疑問符ばかりが浮かんできて、
感嘆符は姿を見せないでいる。
足跡は消えた。
命の残り火が見えた。
中央で燃え上がる炎の揺らぎをじっと見つめている。
明日が来ない。明日は来ない。
誰に言われたわけでもないのに、
思わずそんなことを考える。
夢ならばいいのに。夢だったのに。
捧げられたイケニエは、
もはや何もできない。
ただ、縄で縛られたままじっとしている。
そうすれば何かが終わるんじゃないかと、
信じているんだろう。
重たい石が引きずられてこちらに来る。
積まれ続けて小さい塔ができた。
しかし、次の瞬間には、
崩されてしまった。
儚きものよ。
留まることさえもできないのか。