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RIB(仮)  作者: 曖昧
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カマイタチ

リハビリがてら全十五話ほどの長編?中編?を投稿します。

 国道を颯爽と駆け抜ける黒のスポーツカーは嫌が応にも人目を引いていた。

 凛々しい車体に先ず目を引かれ、次いで運転席を見てギョッとするのがお決まりの反応だ。

 乗車しているのは二人。

 一人は助手席に座る何処かハスキー犬を想起させる灰髪、碧眼の少年。

 運転席に座るのは腰まで届く黒髪と切り揃えられた前髪が何処かお姫様を思わせるも、目付き表情のクールさで台無しになっているどう見ても発育不良なJCにしか見えない少女?

 彼らに共通するのは黒いスーツに黒いネクタイと言う何ともアレな出で立ちであった。


「……はぁ」


 少年――次郎が溜息を吐き、ネクタイを緩め胸元を大きく広げた。

 無理もない。彼は十七歳の高校生なのだから。

 スーツを着る習慣なんて皆無で、こんな服装は肩が凝るだけだ。


「つかさぁ、これってさぁ、どう考えてもさぁ」

「何よ。男の癖にハッキリしないわね。言いたいことがあるなら言ってみなさいな」


 淡々とした抑揚の無い声色。

 表情も皮肉げに口元を歪めているだけで何とも可愛げないと次郎は内心毒づく。


「じゃあ言うけどよ。組織の……何つーの? 目的? 理念?

何かそう言うのに加えて諸々のシチュエーションとか鑑みるにコレって映画……スミスとジョーンズの――――うぉお!?」


 最後まで言い切ることなくハンドルが大きく切られ車体が揺れる。

 派手なコーナリング、しかし驚いているのは次郎だけで運転手当人は平気の平左だ。


「あなたが何を言っているのか皆目見当がつかないけれど、まあ良いわ」


 ドライバーにして次郎の相方――桔梗はやはり淡々とそう告げた。


「良いって何が良いのよ? 良くねえだろ、米の国に怒られんぞテメェ」

「仕方ないわね。道すがら改めて”神祇省”について教えてあげるわ」

「居るよねこう言う人。まるで話し聞かねえんだコレ。知ってる? 世間じゃお前みてえなのをコミュ……しょぉおおおおおおううううわああああああ!?」


 キレッキレのコーナリングPARTⅡである。


「神祇省の理念は唯一つ。”空想を空想のままに”。

正しい世界の運営を乱すのであれば神仏天魔から可愛い妖精さんまで私達は誰にでも牙を剥くわ。

人ならざる、超常の力を持った存在が跋扈していた時代は確かにあった。

それでも、時代は移り変わり彼らが肩で風を切って歩くことが赦されない時代にあったの。

だと言うのに趨勢を理解出来ず馴染めない時代錯誤のバカやそのバカに縋り付くバカな人間共が世界の在り方を変えようと言うのであれば是非もなし」


 一切の呵責なく暴力を以って鎮圧、暗い牢獄にぶち込んで臭い飯を流し込め。

 相手の事情なぞ斟酌するな。事実だけを見つめ事実だけを叩き付けろ。

 少女の風貌に似合わぬ何とも苛烈な物言いであった。


「弁解をしない、そして弁解をさせない。それが神祇省プレッジよ」

「何処の狂人ナイチンゲールだアンタら……」


 呆れたような顔の次郎を見て桔梗は思った。

 ヤンキーみてえな風貌の癖に存外博識じゃないの、と。

 酷いディスではあるが、彼が神祇省に入る切っ掛けとなった事件を思い返せば無理もないことなのかも。


「つかさ、神祇省ってそう言う役目じゃなくね? 確か国家の祭祀を司る機関じゃなかったか? 神祇省ってのはよ。

しかも、半年かそこらで名前変わって今じゃもう存在しないはずなんじゃ……それにそもそも神事に携わる者がそれと対立するような目的掲げちゃ不味いんじゃ……当時の日本的にも……」


 少なくとも日本が敗戦するまではと首を傾げる次郎に、


「ヤンキーの癖に博識じゃないの……あ、口に出しちゃった」

「ヤンキーじゃねえよ!」

「まあ、それはそれとして」


 その抗議をさらりと受け流しつつ疑問の答え、いやさヒントを口にする。


「その疑問はちょっと考えれば理解出来るわよ」

「あ? あー……うー……?」


 考えれば分かると言われれば考えるしかあるまい。

 うんうん唸りつつ思考に耽る辺り次郎と言う少年は実に素直な人間だった。


「……忘れ去られ日陰に追いやられた者の相手は同じく忘れ去られ日陰に追いやられた者が、ってことか?

一瞬歴史の表舞台に立ったが、今ではもう見る影もない……いや待て。

結果としてそうなったんじゃなく、初めからそのために神祇省を作ったのか?」


 であれば納得出来ると言う言葉に桔梗が小さく頷きを返す。


「ご名答。うちのボスの意向でね」

「つーことは何か、結構新しい組織なんだな。だがまあ、そうか、そうだよな。組織の目的からして古くからあるのはおかしいし」

「まあその通りだけど、ベースとなる組織は神祇省設立以前にも存在していたわよ」

「そうなのか?」

「ええ、黎明は室町末期にまで遡ることになるわね」

「室町末期っつーと……戦国時代か。素直に戦国時代って言えよ、何でちょっと一瞬迷わせるんだよ」


 あなたのリアクションが良いから、とは口にしない桔梗であった。


「戦国時代。近代化まではまだ遠く、人々が信心深さを色濃く残していた時代。

だけど、あの段で既に人ならざる者らの排斥は始まっていたのよ。

誰が、ではない世界がそう言う形に変わり始めていたと言うだけのこと。

ただ、その流れは目には見えないし確たる論理を以って説明出来るようなものでもない。

完全なるフィーリングの世界よ。それでも、気付く者が皆無と言うわけではなかった。その者が神祇省の雛形を作ったの」


 分かり易い言葉を使うなら忍者軍団、と言うような形でと続ける。


「その者ってのはまさか……」

「ええ、多分想像の通りでしょう」


 戦国時代で、神仏天魔を放逐すると言う想像も出来ぬな未来を予見しそうな者と言えば?

 そう問われた時、次郎の脳裏に浮かんだ人物は一人しか居なかった。


「お……」

「――――姉小路頼綱よ」

「誰だよ姉小路!? 誰も知らねーよ!!」

「あなた、今、日本最後の秘境HIDAに住まう人々を敵に回したわよ」

「敵に回してんのお前だろ! 飛騨を何だと思ってんだ!? つか、マジでその姉小路何某なの!? 信長じゃねえの!?」

「いや、信長だけど」

「ちょいちょい要らんボケ挟むの止めろや!!」


 真面目そうなツラをしておきながら、桔梗は存外愉快な人間だったようだ。


「まあ、それはそれとして」

「アンタそれ言っときゃ何でも仕切り直せると思うなよ?」

「まあ、それはそれとして」

「ごり押しか……ったく、疲れるぜ。まあ良いよ。兎に角、信長が神祇省の雛形を作ったわけか」

「ええ。彼の死後は羽柴秀吉、徳川家康と時の為政者の庇護の下活動を続けて今に至るわ。現在の所属は国連になるわね」

「国連? ああそういや、本部に連れてかれた時、やけに国際色豊かだったな。しかし何だって国連所属に?」


 第二次大戦絡みだろうかと首を傾げる次郎に、間違ってはいないと桔梗は答えた。


「諸々の詳しい説明はまた時間がある時にやってあげるわ」

「了解。これ以上、続けててもあんたのトークスキルのせいで無駄に疲れそうだし……だが最後にこれだけは聞いておきたい」

「何よ?」

「この格好の理由だ。そりゃ国際色豊かな組織だからってのは分かるが神祇省なんて名前なんだしもうちっとこう」

「ボスの趣味よ」

「ボスの?」

「ええ、ちなみにボスの60年代の愛読書はThey Knew Too Much About Flying Saucersね」

「やっぱ影響受けてんじゃねえか!!」


 脳裏に浮かんだ怪しい土佐野郎の影を振り払うように次郎は頭を振る。


「ところで、俺ら何処向かってんだ?」


 そもそもからして次郎は何も聞かされていなかった。

 今日が初出勤で、仕事場に行くといきなり桔梗に首根っこを引っ掴まれて車に乗せられてしまったのだ。


「新宿二丁目のとあるオカマバーよ」

「オカマバー!? 俺未成年なんだけど……」

「何を勘違いしているのか知らないけど、聞き込みよ。ああ、最初に言っておくとそのバーの店主は妖怪よ」

「ほう……ちなみに何の妖怪だ?」


 次郎とて今よりもっとずっと幼い時分にはアニメなんかも見ていた。

 ゲゲゲなサムシングのアレが特に大好きだった。

 それゆえ若干目を輝かせているのだろう。


「カマイタチよ」

「カマだけにって……やかましいわ!」

「喧しいのはあなた。それより知ってるカマイタチ? 現象じゃなくて妖怪の方よ」

「ああ知ってる。一匹目が相手を転ばせ二匹目が斬って三匹目が傷口に薬を塗りたくる三位一体の何がしたいのかよく分からない妖怪だろ?」

「そうね、本人達も何でこんなことやっているのか疑問だったそうで今の職業には遣り甲斐を感じているとか同僚が言ってたわね」

「結構なことじゃねえか」

「ええ。世の中が変わると言うのも悪いことばかりじゃないと言う好例だわ」


 その後、何をしたいのか分からない妖怪について語り合いつつ彼らは二丁目に辿り着いた。

 尚、あずき洗いが一番意味分からないと言う結論に達したがそれは余談だろう。


「目立つな。秘密組織としてそこらはどうなのよ?」

「安心なさい。見ている連中もちょっと気になりはしても三歩歩けば忘れてしまうから」


 スーツに編み込まれた認識阻害の術式に起因する現象だと説明するが、


「だったらハナから怪しまれない格好をするべきだと思うがね俺は」

「でもこう言うの好きなんでしょ?」

「実は」

「じゃあ何も問題無いじゃない」


 そうこうしているとある店の前で桔梗が足を止める。どうやら目的の店らしい。

 時刻はおやつ時を少し回ったばかり、扉には準備中の札が下げられていたが彼女はお構いなしに踏み込んだ。


「邪魔するわよ」


 カウンターの中と外では三人の御婦人(相手方に配慮した表現)が楽しげな御喋りに興じている真っ最中だった。

 とは言えいきなり無作法な客が現れたのだ。

 その表情は若干曇るのも已む無しか。


「やーん、邪魔するなら帰っ――――」


 それでも客商売らしくジョークを以って対応しようとするも、それを遮るようにバリン! と何かが割れる音が響き渡った。

 次郎を含む四人の視線がカウンターの奥に並べられている酒瓶へと注がれる。

 そこには穴が開き、赤い液体を垂れ流しているワインボトルが鎮座していた。


「面白いジョークね、ささやかではあるけれど返礼よ」


 構えていた銃を懐に仕舞いつつ何でもないことのようにそう言ってのける。

 どうやら小学生並の返しは鬼門だったらしい。


「あんたは今直ぐ神祇省辞めて社会常識を身につけるべく更正施設に入るべきだ」

「安心なさい。この手の店は防音もしっかりしてるもの。それに、サイレンサーもしっかり装着してたし」

「そう言う問題じゃねえよ!」


 次郎の目には悪感情を隠すこともなくなったカマイタチシスターズの姿が。

 見た目は女の格好した中年のオッサン三人(同じ顔)にしか見えず青髭がうっすら見えるのがとても気持ち悪い。

 ぶっちゃけた話、本来の姿よりもよっぽど妖怪である。

 だが次郎は空気が読めるからそこらの嫌悪はひた隠しにしていた。

 していたのに相方がいきなりやらかすのだから堪ったものではない。


「…………帰ってくれないかしら?」


 咥えタバコのリーダーらしきカマイタチが嫌悪も露にそう告げる。

 恐らく彼が長男なのだろう。


「あー、悪かったよお姉さん方。許してくれ」


 次郎は一旦仕切り直すべきだと判断し、本当に申し訳なさそうな顔を作りカマイタチらに語り掛ける。

 この状態では聞き込みも糞もない。仮に話しを聞けても嘘を教えられるかもしれない。

 そして、あくまで善意の民間協力者と言う体で情報を聞くので虚偽であったとしても彼らにペナルティは無い。

 仮にあったとしても幾らでも逃げ道はあるのだから。

 だから先ずは印象を回復することに努めると言うのは決して間違いではない。


「何せコイツ、礼儀は知らねえ常識知らねえ反省知らねえ三重苦揃った糞ガキでな。

コイツが台無しにした分の酒は弁償するし、迷惑料も払う」


 コイツの金で、と声には出さずに続ける。


「私は払わないわよ」


 桔梗は行間を読む女であった。


「おま……!」

「――――阿るな。聞き込みは聞き込みでも善良な民間人に対してのものじゃないんだから」


 ガン! と蹴り上げれたゴミ箱が宙を舞う。


「人間じゃないからって差別はマズイぜ。このご時勢色々大変なんだから」

「そう言うことじゃないわよ。私は原理原則を外れた奴は人間だろうが人外だろうが等しく躾ける性質だもの」


 つまるところ、このカマイタチは秩序の恩恵を受けて暮らしていながらそれに反する行いをしていると言うわけだ。

 それゆえハナっから厳しい態度を取っていたのだ。

 じゃあ最初から説明しておけよと思った次郎だが、寸でのところでそれを飲み込む。

 彼は見た目に反して空気の読める人間なのである。


「おいおいおい、あんまり好き勝手お言いでないよ、神祇省のお嬢ちゃん? あんまりオイタが過ぎるようだと……」


 瞬間、三人の手がグロい変態を見せ刃へと変じた。

 見ただけで分かる、あれは真っ当な刀剣類では出せぬ魔性の切れ味を持つと。

 自然と首筋に手を当ててしまった次郎を臆病だと謗ることは誰にも出来ない。


「結構。私はハナからそのつもりよ。のらりくらりと交わされても面倒だもの。

私の信条でね。あんたらみたいな輩には先ず痛みで上下関係を教え込むことにしているの」


 もう戦闘は避けられない。

 ああ、初っ端からこれかよと嘆く次郎を一体誰が責められよう。


「やる気を出させてあげるわ。こいつらはあなたの友人の死にも間接的に関与しているのよ」

「!」


 げんなりとしていた次郎の顔が一瞬で引き締まった。

 桔梗の言葉はそれだけ彼にとって無視の出来ないものだったから。

 余分な思考をは一切合財破却され、カマイタチを叩きのめすことで頭の中は一色になった。


「おい、知っての通り俺は御上品なやり方なんぞ出来ねえぞ。所詮そこらのチンピラだからな」

「問題無いわ。どれだけ野蛮なやり方も、此処では通るもの」

「そうかい、そいつは……良かった!!」


 蹴り飛ばされた数十キロはありそうな丸テーブルが勢い良くカマイタチらの下へ飛来する。

 しかしそれはあっさりと、至極あっさりと細切れにされてしまう。

 が、それで良い。それで良いのだ。


「な!?」


 驚愕の声を上げたのは一番目の役割を果たす長男イタチであった。

 彼女はテーブルを切り刻むと同時に自身の役割を果たさんと身を低くし駆け出していたのだが、眼前には同じく身を低くし駆け出していた次郎の姿が。

 そう、先のテーブルは開戦の合図であると同時に目暗ましの役割も担っていたのだ。

 出鼻を挫くは喧嘩の基本。カマイタチが三位一体の妖怪であると言うのならば先ずはそこを乱すのが当然だろう。


「オラァ!!」


 突然目の前に現れたことで一瞬動きが止まったカマイタチの顔面に頭突きをかます。


「ッ……!」


 痛がることを恐れず渾身の力で叩き付けられた頭突きは相応の威力を発揮した。

 仰け反るカマイタチ、だがこれで終わりだなんて一言も言っちゃいない。

 痛む額なぞ一顧だにせず手を伸ばし胸倉を引っ掴んで引き寄せると同時に刃に変じた腕を捻り上げるように羽交い絞め。

 いきなり初動を乱され足を止めた挙句兄弟を確保された残る二匹のカマイタチの顔が焦り一色に染め上げられた。


「いだだだだ! は、離しなさいよ変態!!!」

「るっせえ、俺はマツコ以外のオカマには好感持てねえんだよ。それより……へい!!」


 桔梗に呼びかける。

 次郎のそれは言葉足らずではあったが、何となく通じるだろうと思ったのだ。

 そして、


「どの程度の長さが良い?」


 それはバッチリ伝わっていた。


「肩口辺りからバッサリと」

「了解」


 桔梗がポケットから取り出したのは鍔も刀身も存在しない日本刀の柄であった。

 彼女はそれを無造作に振るう。

 するとどうだろう? 鍔と刃が形成され、捻り上げられていたカマイタチの腕が肩口からバッサリと切り飛ばされたではないか。


「あぁああああああああああああああ! 腕が……腕がぁあああああ!!」

「るっせえタコが」


 拘束を解き思いっきり背中を蹴り飛ばし兄弟達の下へ強制帰還させる。

 次郎は足を振り抜いた状態のまま宙を舞うカマイタチの腕を引っ掴み切断面に思いっきり手を突っ込む。

 そして腕の内部に存在する骨をしかりと握り、


「へへ、得物ゲーット♪」


 ニヤリと笑う。

 ブンブンと軽く振るってやるとすぱすぱと壁や椅子、テーブル等が切り刻まれていく。

 手首の少し上辺りから指先までが刃へと変じているがそれ以外は普通の腕。

 つまるところこれは鞭だ。刃の特性を兼ね備えた鞭。


「そして更に」


 フリーの片腕でポケットをまさぐり桔梗が使っていたものと似た柄を取り出し刃を形成する。


「二刀流~……どうよ?」

「そうね。小学生男子みたいな発想だわ」

「聞くんじゃなかった」

「援護してあげるわ。徹底的にやりなさい。得意でしょ? 喧嘩でどっちが上でどっちが下かを骨身に叩き込むのは」


 銃を構えながらそう聞くものの、先程までの調子は何処へやら。

 次郎の顔が一気に曇ってしまう。


「……あの、自分近接武器でアイツらとやり合うんすけど」

「大丈夫。私これでも射撃には自信があるから」

「畜生、この目は俺が何言っても無駄な目だ! はいはい、分かったよ分かりましたよ」


 ずいっと一歩前に歩み出ると、呼応するようにカマイタチらが一歩退く。

 彼らは人外だ。只人などとは比べ物にならない身体能力や摩訶不思議な力を持った人外。

 さりとて人外が軒並み荒事に長けているわけではないのだ。

 加えて総ての人外が恐れを知らずに人外に真っ向から喰らい付く人間の相手をしたことがあるわけではない。

 ゆえに、


「――――全裸で土下座コース決まっちゃったぜお前ら」

「頭悪いヤンキー文句ね」


 此処から先は語るまでもない。

 次郎とて無傷では済まなかったがカマイタチブラザーズは宣言通りに全裸で土下座コースに入ってしまった。


「どう? まだ逆らう気概はあるかしら?」


 全裸のオカマ三匹に蹴りをかましている相方を見やりながら次郎は吐息を漏らす。


「(コイツらが、アイツの死に関わっている……ねえ)」


 未だ記憶に新しい神祇省に入省する切っ掛けとなったとある出来事が脳裏に浮かび上がっていく。

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