第1話
たまにはこんな異世界ものでも書こうかなと。
ウインガルム帝国と呼ばれる国は、歴史上類を見ない大国で、世界の3割を国土としていた。初めは小国に過ぎない帝国であったが、次々に近隣諸国を制圧。国力を増加して瞬く間にハルム神政国、タンゴウ王国と並び、世界トップの国になった。
「魔術師人口、軍事力、経済力。当時はどれもずば抜けていたわけでも無いのに、一体何故ウインガルムは帝国になれたか。お前はもちろん、説明出来るんだよなあ」
俺の頭の上近くで、女性のハスキーボイスが聞こえる。この声はカッセミア先生の声だ。ああ成る程、なら今は世界史Ⅰの授業か。
「ってもうそんな時間なのかよ」
眠気が一気に覚めた俺は、勢い任せにその場に立ち上がった。あれ、眠気が覚めたっていうことは俺は今まで寝ていたのか?
クラスの人達のクスクス笑う声が聞こえてくる。恥ずかしい気分になりながらも、取り敢えず俺はもう一度自分の椅子に座った。
「おいリュウタ、どうして何事も無かったように座ってんだ。話は終わってないぞ」
カッセミア先生の声には隠れきれない程の怒気が含まれていた。これはまずいと思い、もう一度立ってみる。
「大丈夫です、ちゃんと聞いてました」
「ほう、ならさっきの質問に答えてもらおうか」
今日はたしかウインガルム帝国についての授業だったはずだ。なら大方ウインガルム帝国が強力な力を持っていた理由だろう。それなら簡単だ。
「魔術師人口が一番多かったからだ!」
「やっぱり話を聞いていないじゃないか!」
バシリと頭を叩かれた。おかしいな、確かに合っているはずなんだけど。
「魔術師人口が多くなったのは帝国になってからだ。帝国になったのは、ウインガルムでコーサスス鉱が初めて運用された為だ」
コーサスス鉱。それは俺でも知っている。
魔力とは常に流転しており、魔術師でさえ魔力を作ることが出来ても、留めておくことは出来ない。だがコーサスス鉱は特殊な性質を持ち、その鉱物は魔力を溜めることが出来るのだ。
「一度使うと二度と使うことは出来ないが、それでも影響力は凄かった。何せ魔術を使えない一般人でも魔術を使えるようになり、より多く溜めることで大規模な魔術を行使出来るようになったからな」
これがそのコーサスス鉱だ。と言って先生がポケットから取り出したケースの中には、黒ずんだ、何処にでもあるような石があった。これは使用済みらしく、魔力を溜めることはもう無理らしい。
「素晴らしい鉱物だが、実は悪い面もあった。この使用済みのコーサスス鉱、これは他の動植物に毒になるんだ」
ウインガルムが帝国になった後、コーサスス鉱は全世界で便利な道具として使用された。それが災いし、使用済みのコーサスス鉱の影響は全世界で起こった。その世界で人類が生きるのは困難となった。
「そこで、ウインガルム帝国、ハルム神政国、タンゴウ王国の優秀な魔術師が集まりある魔術を行った。そう、異世界への転移だ」
異世界転移。未だに信じられない話だ。だが、本当の話なのだろう。何故なら、生き証人がここにいるのだから。
「私を始め、私達はこの異世界に転移してきたのだ。この地球という異世界に」
読んで頂きありがとうございます。
あんな風に行間開けるのは抵抗あるけどこんな感じですかね。