25 殲滅
「おい!誰かこっちに来るぞ!」
「何か背中におぶってるぞ!警戒しろ!」
アレシアをずっとおぶったまま走り続けたフィオナは、元暗殺部隊の隊長だけあってその移動速度は、通常の人間が出せる速度を超えるものだった。シルヴィとイリスと別れた位置から普通の人が走っても、何時間もかかるのをフィオナは、あっという間に王都についてしまった。
「そこの者!何者だ!」
王都の正門を警備していた兵士に怪しまれ囲まれた。
「フードを被っている者!顔を見せろ!」
その場にいた兵士全員が驚いた。フードを取るとその者は、誘拐されて行方が分からなかったアレシアだったのだから。
「ア、アレシア様!」
「誰か水を持ってきてください!」
走り続けたフィオナは、息を切らせて苦しそうだ。
「い、いえ。大丈夫です」
「どこがです!さっきの場所から一度も止まらずに走って大丈夫なんか」
息を切らしながらフィオナは、アレシアの目を見て言う。
「いいですか姫様。私たちの目的は、姫様を王都に送ること。つまりここでお別れです。私は急いで二人の所に戻ります。私たちのことは、気にしないでお城にお戻りください」
「そ、そんな!」
大きく深呼吸して整える。すると、さっきまで乱れていた呼吸がスッと平常に戻った。
「それでは、失礼します」
フィオナは、突風のようにその場を走り去る。一人になった分さらに速度が増す。
「ア、アレシア様?」
取り残されたアレシアは、なんだか胸の中がチクチクし無力な自分が悔しくなって、振り返る。
「王都にいる兵士の数は!?」
「え、は、はい!300ほどです!」
「分かりました。……アレシア・ミル・バロッタの名において命じます!ただちに兵を集めて戦闘準備及び出撃し、今現在領地で暴れている雷鳴の一団を殲滅します!急ぎなさい!」
一方。シルヴィとイリスは、二手に分かれて下っ端を倒していた。
「な、何だこいつ!」
「つ、強すぎる!」
二人は、囲まれていたがそんなの関係ない様子。
シルヴィは、とにかく走り回り相手を混乱させて急所を確実に仕留める。その速さは、残像を生み下っ端の目の前で複数のシルヴィが出現している。イリスは、ライフルで相手の頭部を打ち抜く。いつ弾を装填しているのか分からない装填速度。ライフル銃があり得ない連射をしている。
「まだまだこれからよ!切り刻んで刺してやる!」
「一歩も近づけないでしょ~。頭をハチの巣にしちゃうぞぉ~」