ガリウスさん
すいません。
勇者の力は次回となります。
「ここは…どこだろう?」
僕は今、何故か草原の上にいる。
しかも一人で。
あれ?さっきまで部屋に居たはずなのに。
「ん?おめーさんこんなとこでなにしてるんだ?そんな丸腰じゃ魔物に襲われちまうぞ」
そんな時、急に後ろから声が聞こえた。
声の方へ振り向くと、そこにはナイスガイなおっちゃんが立っていた。
ヒゲがいい感じのおっちゃんだ。
おっちゃんは金属の鎧に金属でできた盾、長剣を装備していた。
おっちゃんってもしかして冒険者?冒険者なら俺をギルドに連れてってよ!キラーン
とか言いたいけど、言えない!家族や浩太達以外とはそんな流暢に喋れない!頭の中ではどんどん言葉が浮かんでくるのになー!
結局…
「あの、ここって、どこですか?」
としか言えませんでした!
しかも声ちっちゃかったよね。
ちゃんと聞こえてるのかな?
「ここはウツフ村の近くの草原だぜ。ってかおめーさん、わけーくせに元気がないなー、
もっと元気だせよな!がっはっはっ!」
何かこのおっさんすごく暑苦しい!
でも、悪い気はしないんだよねー。
一緒に居たら、僕も元気になれる気がするし。
「で、お前さんは武器も持たずにこんなとこで何してたんだ?まさか自殺とかじゃないよな!?おめーさん元気がないし、大丈夫だよな?」
それにしても、このおっさん、すごく良い人だなー。
武器も持たずに草原に転がってた、見るからに怪しい僕に話かけてくれるし。
僕なんかのこと心配してくれるし。
ああ、何かこの人には、本当のこと言わなきゃいけないような気がする。
僕はとりあえず本当のことを言ってみる。
「それが、僕も、何故ここに居るのか、分からないのです」
初対面の人相手に、案外ちゃんと話せている優人。
「は!?わからない?何で本人がわからねーんだよー!やっぱおめーさん面白いなー!」
でもよかった、本当にいい人そうで。
人間でも盗賊とかに会ってたら命がなかったかもしれないし。
「あ、そうだ、自己紹介がまだでしたね。僕の名前は倉島優人です。お好きなように呼んでください。先程も言いましたが、僕がここにいる理由はわかりません。名前以外ほとんど何も分からないので、記憶喪失ではないかと思っているところです」
お、また普通に話せてる。
僕も少しは成長してるのかな。
はあ、でも嘘つくことになるなんて。
おじさんを騙してるみたいで、心が少し痛いな。
「クラシマユウト?変わった名前だな。それに記憶喪失か、なら確かに説明はつくな。よし、とりあえずおめーさんのことは、ユウトと呼ぶことにするわ。あ、次は俺の名前か。
俺はガリウスだ。近くのウツフ村で冒険者をやってる。といっても大して強くはないんだが、家族を養うぐらいは稼がなきゃだしな。ずっとこの村で冒険者をやってるってわけよ
」
「ガリウスさんと呼ばせていただきますね。
ガリウスさんは冒険者なんですね。なら…お願いしたいことがあります」
「ん?なんだ?言ってみろ。ここであったのも何かの縁だろう。俺にできることならなんでもしてやるぞ。おじさんにどーんと任せなさい!」
うん、やっぱり良い人だ!
「実は先程お話した様に、僕は今、記憶喪失
なのだと思います。更にお金も食料も何も持っていません。そうなるとやはり稼ぐしかないと思います。なので宜しければですが、僕を冒険者ギルドに案内していただきたいと思いまして。どうかよろしくお願いします」
ちなみにこの世界のことは神殿にいるときに大まかに教わった。職業のこととか種族のことをね。
「そーいや、ユウトは何も持ってなかったな。盗賊にでもやられたか?がはははは!でだな、金を稼ぎたいから冒険者になるんだよな?でも冒険者になるとしたら装備とかはどうするつもりなんだ?それに冒険者になる時はギルドカードを発行しなければならないし。あ、これは100ユルかかるぞ。さて、ユウトはどうするつもりなんだ?」
「あ、装備…。それにギルドカードの発行にもお金がかかるんですか。本当にどうすれば」
ちなみに、ユルはこの世界の共通貨幣。
貨幣は全部で5種類で下から銅貨、銀貨、金貨、霊貨となっているらしい。で、銅貨は1ユル、銀貨は100ユル、金貨は1000ユル、霊貨は10000ユルの価値がある。金銀銅はわかるけど、霊貨?と思うかもしれないが、霊貨とは精霊が関係する貨幣のようだ。でも一部の人以外には霊貨の作り方はあまり知られていないらしい。
そんなことよりも本当にどうしよう。
「やっぱり何も考えていなかったか。そんなことだろうと思ったわ!しょうがないなーここは俺が力を貸してやるとするか。ウツフ村に俺の家があるからな!そこで俺の装備を貸してやろう。あとギルドカードの金だよな。よし、これも俺が払ってやろう。ただし、出世したら利子つけて返せよ?がはははは!」
「いいんですか!?このままではどうなることかと考えていた所でした。ここは素直にお言葉に甘えさせていただきます」
僕は少し大きな声でお願いした。
僕でもこんな大声が出せるんだな!と心の中では思っていたり…
「お!元気になったじゃねーか!やっぱ若いのはそうでなくちゃな!よし、じゃあついてこい!」
「はい!」
ガリウスさんに出会い、少し元気になった優人であった。
□
「ハニー!今帰ったぞー!今日の獲物は大物だぞー!」
「ダーリン。おかえりなさい!あらあらまた随分と大物ねー!ささ、とりあえず上がってくださいなー」
ダーリンとハニーって呼び合う夫婦を初めて見た。それと、獲物って僕のこと!?まさか僕を誘拐してお金を得ようと!?
「おい、どうしたユウト。あー獲物の話か?がはははは!あんなの軽い冗談だよ。別に、お前をどうにかしたりはしないさ!まあ兎に角上がれや」
「は、はい」
僕は安心しながら家に入った。
ちなみにウツフ村はやはり村というだけあって地球の住宅とは違い、木でできた簡素な家が並んでいた。ガリウスさんの家は、冒険者というだけあって村の中では大きな方だった。
家に入ったあと椅子が用意してあったので断りを入れながら座った。
ちなみに僕の前にガリウスさん、その隣にガリウスさんの奥さんが座っている。
「まずは自己紹介だな」
「はい。僕は倉島優人です。近くの草原で倒れていた所をガリウスさんに助けていただきました。実は記憶喪失みたいで困惑していた所だったので、助けていただき本当に感謝しています。ガリウスさん。先程はありがとうございました」
「がははは!気にすんな!じゃあ次はハニーの番だな」
「アルミーナです。今日はようこそ起こしくださいました!ダーリンがお客様を連れてくるなんてなかなかありませんから。歓迎しますわ!それにしても、クラシマユウト様でしたよね?随分と変わったお名前ですね。どこかの貴族の方かしら?」
アルミーナさんって言うのか!ガリウスさんに似てすごく元気な人だなー!それに本当にガリウスさんの嫁!?って思うぐらい若くて綺麗な人だな!ガリウスさんにはもったいないくらいに。
とそんなことを考えていると思っていることが顔に出てたのか、
「ユウト!お前今、本当にガリウスさんの嫁!?とか考えてなかったか!?失礼な!本当に俺たちは夫婦なんだぞ!なーハニー!」
「そうね!ダーリン!」
あ、どうやら二人の世界をつくってしまったようだ。この間に割り込むなんて僕にはできないな。待ってよう。
〜10分後〜
「はっ!ごめんなさいね!で、ダーリンはこれからどうするの?」
「あぁ、そうだった。ユウト!俺の昔使ってた武器と防具を貸すでついてこい」
そういったガリウスさんについていくと物置小屋があり、その中に武器や防具があった。武器は長剣、防具は革でできた軽いものを選び、借りることになった。
「お、なかなか様になってんじゃないか!よし、じゃ、これからギルドにいくか!」
「はい!」
僕達はギルドに向かった。
□
「ここが冒険者ギルドだ!」
ガリウスさんが向いた先には一際大きな建物が立っていた。材質はやはり木らしいが。
「おー!」
僕は感嘆の声を上げた。
そりゃそうだ。
地球にいた頃では絶対に見ることができないものだったからだ。
「がはははは!良い反応だ!よし、入るぞ」
「はい!」
僕はガリウスさんについていきギルドに入っていった。
「おー!」
中をみて僕はさらに驚く。
ギルド内に広がるテーブル。
壁に貼られた依頼の紙。
受付に立っている女性。
そしてテーブルで飲んでいる冒険者たち。
やはり普段見れない分すごく新鮮に感じられた。
「どうだ?雰囲気でてるだろ!お前もこれからこの仲間になるんだぞ!」
そうだ。僕はこの仲間になるんだ。
うーしっかりできるかな?
急に緊張してきた。
「なーに、そんな心配すんな!お前がまだひよっこのうちは俺が手伝ってやるからよ!」
どうやらまた顔にでてたみたいだ。
それよりも、ガリウスさんの言葉に僕は安心した。
やばいな。ガリウスさんに依存しちゃってるよ。
僕はガリウスさんから離れる時が一番心配だなと思った。
そんなことを考えているうちにガリウスさんは受付で女性と話していた。
早いな!
「おーい。ユウト!早くこいよー」
ガリウスさんに呼ばれ僕は受付に向かう。
受付では女性が挨拶してくれた。
心なしか女性の顔が少し赤らんでいるような気がした。風邪かな?
「ウツフ村ギルドへようこそ!私はギルドの受付嬢をしています、ウラーナと申します。ちなみに年は成人を迎えたばかりの20です。これから一緒に頑張って行きましょうね。新しい冒険者様!」
なぜか年まで教えてくれた。
それにしても気になる情報。
どうやらこの世界でも20で成人となるらしい。
てことはまだ16の僕は成人を迎えてないことになる。
登録できるのかな?
「ウラーナさんですね。僕はユウトと申します。これからこのギルドにお世話になると思いますがどうぞよろしくお願いします。あ、早速で悪いですが質問いいですか?」
「はい!よろしいですよ!何でも申してください!」
なんかウラーナさんえらく積極的だなー。
「あの、実は僕まだ16で成人を迎えてないのですが、ギルドに登録できるんですか?」
「16ですか!私はだいかんげ…おっと失礼しました。成人を迎えていなくても登録は可能ですよ。登録できる最小の年齢は10ですから。安心してください」
「あ、よかったです。では登録したいのですが、お願いしてよろしいですか?」
「はい。お任せください。あ、登録料として100ユルお願いします」
「はいよ」
ガリウスさんが銀貨1枚を置く。
「ありがとうございます。ガリウスさん!」
「なーに、気にすんな!」
「はい。ありがとうございます。ではユウトさん。ここにお名前と年齢。…あと好きな食べ物と好きな飲み物を記入してください」
好きな食べ物と飲み物!?
そんなものまで書くのか。
あ、なるほどギルドで飲み食いする時にあらかじめ好きなものがわかっていれば準備しやすいってことか。
さすがギルドだ!
「…あれ?好きな食べ物と飲み物なんて俺は聞かれなかった気がするが…」
ガリウスさんが何かブツブツ言っていた。
「えー名前はユウト・クラシマさん。年16で好きな食べ物と飲み物は…」
「はい!了解しました!では少々お待ちください」
倉島優人というと、この世界の人にはあまり聞きなれないようだったのでユウト・クラシマにした。
ウラーナさんがカードを作るために奥に入っていった時、カレー?コーヒー?何のこと?私つくれないじゃない!とか言っていた気がするがまあいいだろう。
そして30分後、どうやらカードができたようだ。ウラーナさんが戻ってくる。
「はい。こちらがユウトさんのギルドカードになります。記入されている情報が正しいかどうかご確認ください」
ギルドカードはクレジットカードくらいの大きさであった。
表記されてることは、名前、年と先程記入したものに加えギルドランクが1とかかれていた。
「ギルドランク?」
疑問に思うと、ウラーナさんが教えてくれた。
「ギルドランクとは、その方の冒険者としての実力を表すものとなります。ランクは1から始まり最高が10。最も、10の人はいないようですが」
なるほど。
「あ、じゃあランクを上げるには依頼をたくさんこなせばいいんですか?」
「たしかに依頼をたくさんこなせばランクは上がります。しかし、上のランクになればなるほど簡単な依頼ばかりではランクは上がりにくくなります。依頼には一つ一つにクリアランクの目安が書いてあり、そのランクが高いほどより多くの経験値が貰えると言うわけです。レベルの上がり方に似ていますね」
なるほど。依頼のランクによって貰える経験値が増えるというわけか。本当にレベルの上がり方みたいだ。
「おーい、ユウト!そろそろいいか?」
ガリウスさんがもう飽きたといった感じで話してきた。
「はい。もう大丈夫です。ウラーナさん!ありがとうございました!」
ウラーナさんが名残惜しそうな顔で僕をみている。
どうしたんだろ?
そんな時、後ろで待っていたガリウスさんが横から割り込んできて、ウラーナさんに告げる。
「早速だが、ランク1の討伐系の依頼を探していただきたい」
「かしこまりました。少々お待ちください」
ウラーナさんは壁に貼ってある依頼の紙を集めていた。
もしかしてウラーナさんは全ての依頼の位置を覚えているのかな!?
すごいなー!
「あ、そういえばガリウスさん。依頼受けるんですか?」
「あァ、受けるさ。ユウトの訓練も兼ねてな」
「え?えー!?僕ももう戦うんですか!?」
「当たり前だ。そうしなきゃ、稼げないぞ?それにいつか必ず討伐系の依頼を受けることになるんだ。早いにこしたことはないだろう?」
「まあ、そうですが」
「心配すんな!俺が一緒に受けるんだ!危なくなったら助けてやるさ!」
「危なくなるんですか!?」
まあ確かに、武器防具をつけても、攻撃や防御が30になったぐらいだからな。
危険になるのも当たり前か。
ちなみに僕のステータスはガリウスさんの家で見せているので、ガリウスさんは知っている。
まあ、やはり笑われたけど。
「本当に大丈夫だ!お前でも倒せる魔物たからな。お、依頼がきたきた。んー、よし、これにしよう!」
ガリウスさんが選んだ依頼は「スライム5匹の討伐」だった。
スライムか。
スライムならいけそうかも!
少し希望が見えてきたぞ!
「はい。スライム5匹の討伐ですね。確認しました。では、ガリウスさん、ユウトさん!
頑張ってください!」
僕たちは、ギルドをあとにした。
「にしても今日のウラーナちゃんはどうしたんだ?普段はもっとおとなしい感じなのに今日に限って」
「そうだったんですか?」
ウラーナさんておとなしい方なんだ。
だとしたら本当に今日はどうしたんだろう
おとなしいといえば、僕もそうだ。
ガリウスさんに会ってからかなり話せるようになったきがする。
やっぱりガリウスさんの元気のおかげかな?
「んなことより、初めての依頼だ!気合入れていけよ!」
「はい!」
「ん、何か雲が増えてきたな。雨が降らなきゃいーが」
ガリウスさんが言うように、空を雲が覆い始めていた。
これから先、何か悪いことが起きそうな気がする。
何もないといいけど。
そんなことを考えていると、空を覆う雲が少し黒ずんだような、
…そんな気がした。
こんにちは!
今回はガリウスさんとのお話です。
最後の描写から見ると、
何か悪い予感しかしませんね笑
次回はついに勇者の力の一つ目が解放となります!
お楽しみに!