そして1人に
翌日、僕は訓練場に来た。
そして皆に謝った。
小さい声だったけど、迷惑をかけたからと僕は謝った。
皆はとても驚いていた。
僕が訓練場にきたことに、そしてなにより皆に向かって話しかけたことに。
この時は、何故か自然と声がでた。
ちゃんと皆に伝えられた。
そんなあたりまえのことができ、僕は少し、ほんの少しだけ成長できたような気がした。
こんな小さな力しかないけど頑張ろう!
僕はそう前向きに考えた。
□
「今日は生活魔法を教えます」
と、ローウィンさん。
勇者召喚されてから3日がたった今日。
僕達は生活魔法を教わる予定だ。
生活魔法なら僕でも覚えられるらしい。
こんな小さな力の僕には何もできないんじゃないか!?と思っていた中で、僕でもできることがあるとわかったことは素直に嬉しかった。
「えー、まずは基本からお話しましょう。生活魔法の消費魔法力は1と言われています。まあ要するに、誰でも使えるようになる魔法ですね。では次に種類について。生活魔法は消費魔法力が1で、生活に必要な4つの魔法のことを指します。一つ目は着火。これはおもに料理で火をつける際に利用されます。火はとても小さく殺傷能力はありません。2つ目は洗浄です。これは服や身体の汚れを落とす際に利用されます。身体の汚れはお風呂に入り取ることが多いので、ほとんどが服の汚れを落とす際に使われます。3つ目は湧水です
これは、飲み水として使われることが多いですね。使用した際にできる水の量がコップ一杯分なので、当然攻撃には利用できません。
そして最後に乾燥ですね。これは2つ目に紹介した洗浄と合わせて使うことが多いですね。この魔法は水で濡れた時、簡単に乾かすことができる魔法です。では、所々にいる王国騎士団の方に聞いたり実演して貰ったりして構わないのでまずはやってみましょうか!」
「「「「はい!」」」」
皆張り切ってるなー!
僕も頑張らなくちゃ!
「あれー?倉島じゃーん。引きこもってたんじゃなかったっけ〜?」
そんな時、山岡が話しかけてきた。
「あの、その…僕も魔法覚えたいなって…」
山岡は僕がちゃんと答えたことに少し驚いているようだった。
だが、すぐにいやな笑みを浮かべてこう言ってきた。
「倉島が魔法を覚えるって!?あはははは、笑わせんじゃねーよ、全く〜。えーっと確か倉島の魔法力って5だったよねー?そんで、生活魔法の消費魔法力は1。5回しか使えねーじゃん、だっさ〜!」
また僕を貶してくる。
そんなことはわかってるさ。
でも僕は、少しでも皆の力になれるように頑張っているんだ。
今はダメダメでも、頑張れば強くなれるかもしれないから!
心の中で反論するが、言葉にだせない。
あぁ、やっぱりダメだなー僕は。
まだちゃんと会話することもできない。
「あれー?どうしたの?反論できない?そりゃ、反論できるような力じゃないからなー!もうゴミだよゴミ。何でお前この世界に呼ばれたのかわかんねーな!」
山岡の言い方がどんどんひどくなっていく
僕だってこの世界に呼ばれた理由がわからないよ!こんな非力で、誰のやくにもたてない!
優人の心が山岡の言葉で少しずつ暗くなっていく。
「何かお前、もうこの世界で生きてる意味ないじゃん。もう、さっさと死ねや」
そう山岡が言った。
あぁ、 やっぱり、僕はいらないのかな。
死んだ方が…いいのかな。
その時だ
ドガッ
「なんだよ、死ねって。お前よくそんなこと軽々しく言えるな!」
そんな言葉と共に、
突然山岡が吹っ飛んだ。
どうやら、浩太が怒って、山岡に殴りかかったようだ。
浩太はさらに殴りかかろうとしていたため
皆に取り押さえられていた。
「おい、山岡。お前は言い過ぎだ」
大地が普段よりも更に低い声で言った。
「死ねってなによ!そんなこと軽々しく口にしないで!」
美緒も少し怒っているように見えた。
「山岡くん!そんな酷いこと、言っちゃダメだよ!」
普段はおっとりしている優香が声を張り上げて言った。
「あ、…優香…ちゃん」
山岡がボソボソとなにか言っている。
そして山岡が僕に謝ってきた。
ごめんなさい、と。
「うん。いいよ」
僕は迷わず答える。
これで少しでも僕と仲良くしてくれたらいいな、と思っていた。
「優人、大丈夫か?」
幼なじみの皆が集まって来た。
「うん。大丈夫だよ。皆ありがとう」
皆にお礼を言う。
助けてくれてありがとうと。
「優人!私達、手伝うからさ!一緒に練習しよ!」
と美緒が言ってくれた。
また皆に迷惑をかけちゃうなと思いながらも、優人は美緒に返答する。
「うん。僕、頑張るよ!」
と。
□
あの後、僕は皆と生活魔法の練習をした。
着火は2回他は1回で成功したが、魔法力が0になったからか、僕は倒れてしまったようだ。
「いやーもうびっくりしたよ〜!優人、急に倒れるんだも〜ん!」
「本当だぞ!優人!俺、死んじゃったのかと思って、本当に焦ったんだからな!」
「でも優人くんが無事でよかったよー!」
「ああ、本当によかった」
とみんなが僕の心配をしてくれた。
「毎回、迷惑かけてばっかで、本当にごめんね」
「いいっていいって、私達友達でしょ?」
「うん、そうだね。友達だね。皆本当にありがとう」
僕は、微笑みながらそう答えた。
美緒と優香の顔が少し赤らんでいる気がさたが気のせいだろう。
ああ、僕にはこんないい友達がいるんだな
なるべく早く強くなって皆に恩返しをしなきゃ。
と、再び決意をした時。
「ゆ、優人!腕!腕が!」
美緒が急に叫びだす。
「腕?…え!?」
優人は自分の腕を見る。
と同時に右手が光の粒となり、空気の中に消えた。
それだけにとどまらず、左手、右足、左足と徐々に消えていく。
次第に視界が薄れていく。
皆が何か叫んでるがよく聞こえない。
そして…僕はその日、皆の前から消えた。
□
…ここは、どこだろう?
気がつくと僕は草原の上にいた。
こんにちは!
第3話です。
さて、ついに優人は一人になってしまいました!
これから優人はどうなってしまうのか!?
お楽しみに!
あ、優人が急に消えた理由は後日特別編として投稿しますので、そちらもお楽しみに!