森のうさぎさん
ティアラと再会してからどのくらいたったのだろうか。
あれから俺たちはディアボロを避けるように、崖と反対の方向に進んでいる。
歩き続ければ必ず抜けられると信じて。
だが歩き続けているが、一向に森を抜けられる気配がない。
食料はたまに現れるイノシシ型の魔物や
ウサギ型の魔物を食べ、過ごしている。
ちなみに魔物は食べられると教えてくれたのはもちろんティアラだ。
さらにティアラは綺麗な小川も見つけてくれた。
ティアラさまさまである。
今、もしティアラと森の中で出会えていなかったらと考えると…ぞっとする。
というわけで、生活する分にはとくに問題なく済んでいるわけだ。
「にしても、ここはどこだよ。どーやったら出られんだよ」
「確かに随分歩きましたよね。こんなに歩いたのに出られない。さすがは迷子の森というところでしょうか」
「本当、さすがは迷子の森だわ」
何故か2人してイゴマの森を褒めながら歩き進んでいると…。
「ん?お、ティアラ!明るい!明るいぞ!」
「本当ですね、ユウト様!明るいです!」
暗い森の中に一箇所、光が射し込んでいる場所があった。
出口なのだろうか。
駆ける2人。
我先にと光の元へと走る2人。
そして…次第に光を強く感じるようになり…。
「ついに出口だぁー……あ?」
「やりましたー……ん?」
目の前に広がるのは草原ではなく、村や街でもない。
今まで通り、イゴマの森だ。
だが、目の前約20m四方の空間にだけ木が生えていない。
太陽の光を受け、明るく照らされている。
「なんだ?ここは」
もし20m四方の木がない空間が広がっているだけでは、出口ではなかったと肩を落とすだけで済むだろう。
だが…
「あれは…服でしょうか?随分と生活感がある場所ですね…」
「だな」
そう、この空間には何ものかが生活したような跡があった、いや生活しているようなの方が正しいか。
木とツルで作ったのだろう物干し竿があり、そこにはボロ布がかけてある。
そして何よりも、組んである薪には薄っすらとだが、弱々しく火が灯っていた。
こんなこと誰かが住んでいなければできない。
「誰かが住んでるのか?ここに」
当然の疑問である。
しかし…
「ですが、ユウト様。この森は迷子の森ですよ?そんな場所で生活する人なんていますかね?」
そう、そこなのだ。
目の前の薪の火は明らかに知能のある生物が起こしたものだろう。
だが、ここは迷子の森と呼ばれる程抜け出すのが困難な場所なのだ。
それに食料や水はどうするのか。
もし俺たち2人ならそれらを探しに行ったら最後、もうこの場所には戻ってこれないだろう。
「まぁ、とりあえず調べてみるか?」
「もしかしたら誰か住んでいるのかもしれませんが…そうですね。何かわかるかもしれません。調べて見ましょう。もし誰か住んでいるなら色々と話を聞けるがもしれませんし…」
こうして2人は調べてみることにした。
□
約30分が経過した。
わかったことがある。
まずここに住んでいるのは明らかにただの人族ではないということだ。
もし仮にただの人族だとしよう。
たとえその人が冒険者であっても所詮は人族である。
この場所を拠点とし、生活できるほどの力はないだろう。
次にここに住んでいる者は武器として弓を使うだろうことだ。
その根拠となったのは木に描かれた的と、そこに何か刺さったような跡があること。
そして極め付けにやじりに使われそうな尖った石があったことだ。
石なんて随分と原始的だが、ここで魔物を倒し生活する分には何も問題がないだろう。
いや、問題があるとすれば…
「なぁ、ティアラ。この森の魔物は弱いはずだよな」
「はい。強くてもランク2程度の魔物しかでません」
「だったらあのディアボロはなんだ?あいつはただ紛れこんだ魔物なのか?それともずっとこの森で生活をしていて、一頭だけじゃなく、何頭も何百頭もいるのか?」
「わかりません。私もあれ程強力な魔物は見たことがありませんし、第一、この森に入ったことが今回初めてですので」
2人ともこの森に入ったのは初めてだ。
だが、今まで情報としてディアボロを発見したというものはない。
もしかしたら見つけてもすぐに殺されてしまっただけかもしれないが。
「だよなー。じゃあもし、仮にだディアボロ程度の魔物が何匹もいたとしよう。とするとだ、ここに誰かが住んでいるとしたら、そいつらよりも強いことになるよな」
「そうなり…ますね…」
だとしたらとんだ化け物である。
まぁ今まで一頭しか出会ってないことから、この可能性は低いのだが…。
「さて、ディアボロのことだけ考えていても仕方がない。最後にあのボロ布調べてみるか」
「そうですね。そうしましょう」
2人はボロ布のかかっている物干し竿の方へ向かう。
「にしても本当にボロボロだな。…ん?微かにだが湿っているな」
「本当ですね、湿っています。洗ったのでしょうか?」
こんな会話をしている時だった。
「ひゃっ!?」
後ろから聞こえてくる小さな悲鳴。
とっさのことに驚きながら振り向くと….
美少女が怯えた顔をしながら立っていた。
あまり手入れされていないはずの長い髪は汚れながらも白く綺麗。
そしてそれに負けじと肌の色も白い。
整った顔立ちだが、若干目尻が下がっており、優しい雰囲気を醸し出している。身長は150cm程だろうかティアラよりも小さい。
だが胸には2つの大きなメロンを抱えている。
そして極め付けに…
「あの…どちら様でしょうか?」
…頭にはウサギと同じ耳がついていた。
よろしくお願いします!