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決闘と依頼

「はぁ、早速疲れた」


全く、何故朝から疲れなきゃならない。

誤解だっていうのに。

まさか朝オーナーにあんなことを言われるなんて。

誰も何も楽しんでいないってのに。


「あの、お疲れの様ですが、大丈夫ですか?ユウト様」


「あぁ、いつもごめんな、ティアラ」


割とどうでも良い所で疲れを溜めるユウトなのであった。



「えっと、今日も適当に依頼を受けるんですよね、ユウト様」


「あぁ、そのつもりだ」


俺たちは今日、適当に依頼を受けるつもりでいる。


冒険者ギルドへ行き、依頼を眺め好きなやつを受ける。

これが最近の俺たちの過ごし方であった

まぁ、最も依頼は2日に一回しか受けないのだが…。


お、ついたついた。

目的地、冒険者ギルドだ。

だが…


「なんだか、騒がしいですね」


「あぁ、そうだな」


騒がしいのはいつもの事なのだが、今回のはいつもと違う。

飛び交うのは怒号や罵声だ。


「とりあえず入ってみるか」


俺たちはドアを開け中へと入った。


「おいおい!俺様に酒を注げねーってーのか!?あ!?」


「申し訳ございません。私はギルドの受付嬢ですので、仕事を優先しなければいけません」


「ちっ!じゃあ、そこの女!俺様に酒を注げ!」


「いやーー!!」


俺たちの横を走り逃げていく冒険者の女。


なんだ?あいつは。

冒険者ギルドの一角、酒場のようになっている場所に座っている男。

見るからに性能の良い装備、見た目はデブで醜いが、漂ってくる強者のオーラ。


「ちっ。なんでランク8のデチブンがここにいるんだよ。早くどいて欲しいわ全く」


「あぁ!?誰だ!今俺様をバカにした奴は!それに様をつけろや、くそが!」


そう言って周りのテーブルを蹴り飛ばすデチブン。

おぉ、凄い力だ。

さすがランク8というわけか…。

ちなみに俺のランクは4だ。

ワイバーンの討伐で一気に上がったが、そこからは変化がない。


「ちっ、おい!誰か俺様に酒を注げや!」


またも叫ぶデチブン。

ギルド内の女は皆怯えているようだ。

まぁ、ランク8だからな、怯えても仕方ないか。

ティアラも俺の袖を掴み、少し震えている。


そんな時だ、デチブンは俺たちの方を向きいやらしい笑みを浮かべた。


ちっ、何か嫌な予感がするな。


「おい!そこのヒョロい奴!お前の後ろのは奴隷だろ?痛い目にあいたくなきゃ、俺様にそいつを貸せ!もうお前のお手つきだろうが、俺様がそれ以上に調教してやるから!ふひひ、さぁ早く渡せ!」


「んあ?お手つき?」


「おいおい、まさかまだそいつに手をだしてないのか!?奴隷だろ?そいつ。…へへっ、マジかよ!なら、なおさら貸して貰わなきゃな。おい!早く貸せや!」


何だ?こいつは。

貸せって、ティアラはものじゃねーのに。


「おい!聞こえねーのか!早く貸せっていってんだよ!」


ティアラの震えが強くなってきた。

心なしか袖を掴む力も強まっているように思う。

本当になんだ?こいつは。

普通貸すわけがないだろ。

バカなのか?

だから当然…


「嫌だね。誰が貸すか」


…断る。


なにが気に障ったのか顔を歪ませるデチブン。

そして俺にこう告げた。


「おい!お前、俺に逆らうってのか!?へへっなら良い、決闘だ!お前から力ずくでそいつを奪ってやる」


周りから囁き声が聞こえてくる。

あいつ終わったなやら、奴隷の子がかわいそうだ、やら言っている。


よくわからんが、なぜティアラをかけて決闘しなきゃなんないんだよ。


「断る。何故わざわざ決闘なんてしなきゃならない」


するとデチブンが笑い出す。

周りの冒険者の囁きも大きくなる。


その理由は近くにいた受付嬢が教えてくれた。


「ユウトさん。決闘は断ることはできません。それがいくら理不尽な内容であろうとも」


「断れない?どういうことだ?」


「実は冒険者ギルドにはあるルールがございまして。それはランク6以下の者がランク7以上の者から決闘を申し込まれた場合はその決闘を断れないというものです。この決闘制度は300年前から存在します。そして今、あのお方はランク8でユウトさんはランク4。断れません」


「なんだその理不尽な制度は。ギルドはバカなのか?」


「いえ、この制度にも理由がございますが、今はお教えできません。申し分けございません」


「そういうことだ!さっさと始めようぜ!」


「ユウト様っ…」


ティアラが今にも泣きそうな顔で此方をみている。


「はぁー、しょうがない。わかった、決闘だ」


「へへへっ、じゃあ裏へ行こうぜ」


そういうとデチブンは入り口と反対の方向へ歩き出す。

他の冒険者もそれに続く。


「ユウトさん。絶対に負けないでくださいね」


先程の受付嬢が涙を流しながらそう言った。

泣く要素がどこにあったのか気になるところだが、今はこう答えよう。


「あぁ、もちろんだ」


…と。


後ろを振り返るとティアラが心配そうな顔で見ている。

だから俺はティアラにこう言う。


「ティアラ、大丈夫だ。俺に任せとけ」


…と。


ティアラは小さく笑みを浮かべて笑ってくれた。

まるで信じていますよと俺に告げるように。


こうして俺は歩き出した。



「へー、凄いなここは」


そこには、大きな砂地が広がっていた。

周りを柵が囲ってあり、そこは観客席のようだ。


俺の反対側にはデチブンが立ち、此方をみてニヤニヤしている。


ここでギルド員の人が告げた。


「ただいまより、ランク8デチブン様とランク4ユウト様の決闘を始めます。なお勝利した方がユウト様の奴隷ティアラの所有権を手に入れます。また、決闘内で相手を殺した場合、罪には囚われませんのでそのつもりで。では、両者準備を始めてください」


やはり、なぜティアラをかけなくちゃならないのか意味がわからないがまぁいい。

どうせ負けない。


デチブンが背中から大剣を抜く。


俺は剣を抜かずに立つ。


デチブンが叫ぶ。


「なんだ?諦めたのか!?はははっ情けねーなぁ!」


…と。


いや、別に諦めた訳じゃない。

ただ、相手の防具をみると剣より素手の方が良いと思っただけだ。

俺とあいつのステータスの差は大きい。

だから問題ない。

まぁ、速攻でおわらせるつもりだし。


ギルド員が言った。


「では、両者構え!……始め!」


「はははっ!お前の奴隷、貰ったぁぁ!」


デチブンが見た目に反する凄まじいスピードで俺の方へと走ってくる。


「しねぇぇぇ!!!」


そして大剣を振り下ろした。

どれも洗練された凄まじいスピード。


だが……


「遅い」


ふっ!!


俺はデチブンの攻撃を避け、腹の辺りを思いっきり殴った。


「ぐはぁぁっ!」


吹っ飛ぶデチブン。

デチブンは壁にぶつかり…そして動かなくなった。

…あれ。一撃!?


静まり返る観客。


ギルド員が終了を告げる。


「ラ、ランク4ユウト様の勝利!よってティアラの所有権はユウト様のものとなります!」


沸き上がる観客。

ったく元々ティアラの所有権は俺にあるってのに…。


「ユウト様!」


「おぉ!?」


ティアラが俺に抱きついてきた。


「ユウト様っ、信じておりました。ユウト様なら絶対負けないと」


そう告げ、ティアラは泣き出した。


…嘘つけ、本当は心配だったくせに。


俺はティアラの頭をゆっくりと撫でた。

ティアラが泣き止むまでずっと、ゆっくりゆっくりと撫でた。



次の日、俺たちは依頼を受けた。


理由は宿の前に群がる人、ギルド内に群がる人から逃げるためだ。


どうやら、皆昨日の決闘の結果を見た奴等らしい。

皆俺に礼をいうばかりだ。

ちなみに、デチブンは一応一命は取り留めたようだ。

よかったね、デチブン。


にしても、デチブンはどんだけ嫌われてたんだよ。

いつか誰かに殺されるんじゃないか?とも思えてくるくらいだ。


ま、というわけでそんな奴等から逃げるために簡単な依頼を受けたわけだ。


ちなみに依頼の内容は、イゴマの森でイゴマ草と呼ばれる薬草を10本とってくることだ。

推奨ランクは2。

なんでも大した魔物はでないようだ。


ただ逃げるだけの俺たちにとってこれほど良い依頼はなかった。


…と、そんなことを言ってる間についたか。


目の前に広がる大きな森。

葉の色は明るく綺麗だ。


「さてと、じゃあいくか、ティアラ」


「はい。ユウト様!」


空を見上げると雲一つ無い青空が広がっていた。


なにか良いことが起こりそうな


……そんな気がした。


本日2話目です。


デチブンさんは、かませ犬さんです。

かわいそうですが、生きているので再登場することを願いましょう。


そうそう。実は今日嬉しいことがありました!

なんと…日刊ランキングにのっていたのです!

本当にありがとうございます!

これからも頑張りますのでよろしくお願いします!


では、また次回で会いましょう!

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