第8話 ~ステラ・ランドリフ②~
なかなか主人公と絡みつけることができません。
・・・結局、私は冒険者になることにしました。私のことをずっと思ってくれていた両親が「自分のやりたいことをすればいい。」と言ってくれたからこその選択でしたが。2人は私が冒険者ギルドに登録し、屋敷を出る日の直前の夜までみっちりと稽古していただきました。父からは格闘術や護衛術といった体術を、母からは治癒魔法と全属性の中級魔法をそれぞれ習いました。使役魔法と付与魔法は母は使えないということで、こればかりは自分で何とかするしかありません。
出立の日にはランドリフ邸の全員が見送りに来てくれました。私は深く頭を下げながら、見送りに来てくれたみんなに感謝しました。
「つらくなったら、何時でもここに戻ってきなさい。ここにいる全員がお前の味方だ。」
「無理だけはしないでね。冒険者には常に危険が付いてくるんだから。」
最後まで私の心配をしてくれる両親を見ながら、私は必死に涙が出るのをこらえました。
「・・・では、行ってまいります。必ず一人前の冒険者になって戻ってまいります!!」
そうして私は冒険者の世界へと足を踏み入れたのです・・・。
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それが8ケ月前のこと、今ステラはソロで〔迷宮森林〕に来ていた。彼女の現在のギルドランクはEであり、これはギルド訓練生を卒業した証であり、駆け出しとはいえ一人前の冒険者の証拠なのだ。そしてこの〔迷宮森林〕に出現する魔物の討伐推奨ランクの平均はDである。ゆえにこの場所は、「初心者殺しの森」として冒険者たちに広く知られいる。よってパーティも組んでいない彼女がここにいることは大変危険なのだが、彼女にはこの森に来なければならない理由があった。彼女がここに来た目的は従魔士として使役する魔物を探すことだ。使役魔法とは、術者である自身の周囲にいる存在を使役する魔法である。つまり近くに人がいたら、その人も使役してしまうことになる。彼女は初めて使役魔法を使ったときに近くにいた冒険者を使役してしまったという経験があるため、それ以来なるべくソロで活動するようにしてきた。ステラが現在使役している魔物はゴブリン、コボルド、オークの3体であり、どれもEランクであり、そろそろもう少し強い魔物を使役しようと思っていた彼女は、近郊で強めの魔物がいるこの森に来たというわけだ。それなのに、ステラはまだ一度も魔物と遭遇していない。森のそれなりの奥に来たにも関わらずに、だ。この状況に彼女は頭を悩ませていた。
「う~ん、どうしよう。森に入ってすぐ出そうな魔物を2、3体使役してすぐに出ようと思っていたのに・・・。全然魔物に会わないじゃない!なんでもいいから早く出てこーい!」
そのまま森の中を歩き続けて1時間程経っただろうか、彼女はある魔物の姿を目にとらえた。その体長は2メートルを超え、全身に針のような黒い体毛を生やしており、それの足元に横たわっているウルフの肉を食いちぎる牙はとても凛々しい。Cランクで中級冒険者が3人がかりでも討伐するのが困難といわれいるドーンベアーが彼女の先に背を向けて座っていた。
「ーっ!?」
驚きのあまり声を出そうとするのを何とかこらえて、ステラはドーンベアーに気づかれないようゆっくりその場を離れた。
「ふうぅ~。よかったー。戦わずに済んだ。・・・全くなんでドーンベアーがあんなところにいるのかしら、もっと奥にいるはずでしょう?」
ドーンベアーが何故あの場所にいたことを考えながら歩いていると正面から何かがやってくるのが見えた。
・・・その者の顔が骸骨だった。
久しぶりです、ロイさん!