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用途次第
「せやなあ、けど。
凛は絢子みたいに頭良いわけでもあれへんし。
あの子は確かに綺麗で美しい、よ。
でも、それだけやと思うねん」
「樹未にはわからないよ。
だってあなた、ぜんぶ持ってるじゃない」
「そんなんどうでもいい。今は、凛と絢子の話でしょ」
そう、あの子は美しい。
私は頭もよくて完璧だけれど、美しくない。
私は美だけを求めたい。
たとえ能力を捨ててでも。
「でも、私は凛みたいになりたいの。
私にあるどんな長所を捨ててでも、あの美貌が欲しいの」
「じゃあ、聞くけど。
絢子はその美貌をどうしたいの?」
私は。あの美貌を。
「凛のみたいな美貌は、容易に捨てられるんよ」
樹未が意地悪そうな目つきで笑った。気がした。
美貌とは。