6/18
素敵な絶望
「ごめん、死んで」
小さく呟いた彼女は、俯いていた。
その手に握られていたのは、小さな刃物。
それで僕を殺そうというのか?
「……里果?」
「うん、ごめん。でもね、私の義務だから」
「僕が死ぬのは君の義務?」
「そうじゃないよ。充の幸せを作るの」
彼女は、整ったこの上なく美しい顔に微笑を浮かべた。
刃物の刃を握っているため、その手から血が滲んでいる。
「僕が死ねば、君は幸せなのか」
「そうね。それもあるけど、やっぱり、
あなたはもう生きたくないでしょう?
協力してあげるわ」
短い言葉を交わすと、彼女が真っ直ぐ、僕に向ってきた。
ああ、終わりだ。
「ごめんね、充。もっと幸せにする方法、
あったのかもしれないね」
そう聞こえ、僕は絶望に陥った。
目の前に広がるのは、紅い血の海。
刃こぼれした刃は、案外よく切れるものだった。
これはキャスの前スレ、エデンからファンタジアに転載、そっからさらにお引越し。長い旅だわね。キャスの方とは題名変えました。「綺麗な朱色」はなんだかしっくりこなかったので。