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マリッジ・ブルー
「ずいぶん、雨降ったね」
「そうだね。でも僕、好きかもしれない」
「何が?」
「このにおい。柔らかくて、優しいんだ」
それはね、川原沿いのいろんなおうちの夕食の匂いが
一緒にくるからなんだよ。すごく優しい匂いでしょ。
彼女は僕にそう言った。
「いつか私もあなたと、優しい家庭の味を作りたいな。
ね、そのときは、私たちみたいなカップルを、
こうやって優しい気持ちにできるよね」
「できるよ。うん、するよ、そうきっと」
僕は曖昧に返事を濁した。そして。
未だその覚悟は決めきれていない。
決して悪い意味ではない。はず。