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相思相愛、良夫婦
別に他の誰かといたって構わないよ。
お金さえ渡してくれればね。私たち夫婦なんですもの。
裏切りはなしよ。許された範囲だけで、ね。
お互い好都合じゃない、邪魔するものはいないのよ。
隣の部屋から聞こえる、妻の猫撫で声。
そして、そのすぐ後に続く、男の声。
妻は愛されている。
妻を愛している、別の男がいる。
そしてそれを、私は認可している。
「ねえ、こっち向いてよ」
そんな私も同じだ。
私のそばには今、私が愛するひとがいる。
そして彼女は、妻ではない。
妻は私が別の女に愛されることを認可している。
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「あら、おはよう。昨晩は遅くまでいらしてたのに」
「ああ。ありがとう、大丈夫だ」
「あなたも女性の趣味がよくなったものね。ああ、そう。
今日は住宅ローンについての打ち合わせがあるから、
ついてきて頂戴。今日はおデートはないんでしょう?」
「大丈夫だ。悪いな」
「何言ってるのよ。お互い様でしょ」
こういう関係ってある意味理想的かもしれない。