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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第6話 もう一度、偶然

第6話を読んでいただきありがとうございます。


今回は、少し意外な場所での再会になります。

偶然のようで、どこか引き寄せられるような出会い。


二人の関係が、少しずつ動き出します。


6億円を手にしてから、数日。


 生活は変わったようで、何も変わっていなかった。


 仕事には行っていない。

 時間だけはある。


 だが、やることがない。


「……暇だな」


 黒沢恒一は、ソファに座ったままぼんやりと天井を見ていた。


 テレビでは昼のワイドショーが流れている。

 芸能人のスキャンダル、政治の話、どうでもいい話題。


 その中で、ふと目に入った。


『如月レイナ、競馬アンバサダー就任』


「……またか」


 思わず目を止める。


 あの夜のことを、思い出す。


 裏通路での、短いやり取り。


 あの“素”の顔。


「……元気そうだな」


 画面の中のレイナは、完璧な笑顔だった。


 あれが本当なのか、あの夜が本当なのか。


 わからない。


 だが——


「……競馬、か」


 その言葉が、少しだけ引っかかった。



 気がつけば、競馬場に来ていた。


 久しぶりだった。


 独特の匂い。

 ざわめき。

 遠くから聞こえる歓声。


「……懐かしいな」


 昔はよく来ていた。


 負けて、負けて、それでもまた来ていた。


 今はもう、無理してやる必要はない。


 6億円ある。


 勝つ必要もないし、負ける必要もない。


 それでも——


 この場所は、少しだけ落ち着いた。


 パドックを眺める。


 馬の足音。

 観客の視線。


「……あの馬、いいな」


 無意識に、口に出ていた。


 理由は説明できない。


 ただ、なんとなく。


 そんな感覚でいつも外してきた。


「……やめとくか」


 今日は、買わない。


 そう決めていた。



 人混みを避けて歩いていると、少し奥まった場所に出た。


 スタンドの端。

 人の少ない通路。


 そのときだった。


 視界の端に、見覚えのある姿が映る。


 帽子。

 サングラス。

 周囲を気にするような仕草。


 だが——


「……あれ」


 すぐにわかった。


 如月レイナ。


(……なんでこんなとこに)


 競馬アンバサダー。


 さっきテレビで見たばかりだ。


 だが、これは明らかに“仕事”じゃない。


 完全に、お忍び。


「……関わらない方がいいな」


 小さくつぶやく。


 あの夜、少しだけ関わった。


 それだけで十分だ。


 自分の人生に、あの人は関係ない。


 そう思って、視線を外す。


 その瞬間——


 ひらり、と。


 何かが足元に落ちた。


 紙。


 小さく折りたたまれたそれは、風に揺れている。


「……馬券か」


 さっきの彼女の位置から考えて、間違いない。


 一瞬、迷う。


 見なかったことにするか。


 そのまま通り過ぎるか。


 ——だが。


「……仕方ねぇな」


 ため息をついて、それを拾い上げた。



「……落としたぞ」


 声をかける。


 レイナが振り向く。


 一瞬、警戒の色。


「……誰?」


 その一言で、理解する。


 覚えていない。


(……まあ、そうだよな)


 あの夜の数分間。


 彼女にとっては、それだけのことだ。


「……さっき落とした」


 それだけ言って、馬券を差し出す。


 レイナはそれを受け取り、軽く会釈した。


「……ありがとう」


 それだけ。


 それ以上でも、それ以下でもない。


 関係は、ない。


「じゃあな」


 そのまま背を向ける。


 それで終わるはずだった。



「……え?」


 背後から、小さな声。


 続いて、少し大きな声。


「え、ちょっと待って……」


 足が止まる。


 振り返ると、レイナが馬券を見つめたまま固まっていた。


「……どうした」


「これ……」


 ゆっくり顔を上げる。


 サングラスの奥の目が、はっきりと見えた。


「あっ……当たってる……!」


 驚きと、少しだけ子供みたいな声。


「……マジか」


 思わず口元が緩む。


 自分は買っていない。


 だが、なぜか少し嬉しかった。


 レイナが、もう一度馬券を見る。


「ほんとだ……すご……」


 さっきまでの警戒は、完全に消えていた。


 その表情は、テレビで見るものとは違っていた。


 自然な、驚きと喜び。


「……ありがとう」


 今度は、しっかりとした声。


 恒一をまっすぐ見る。


 その視線に、少しだけ戸惑う。


「別に、拾っただけだ」


「それでも」


 少し間を置いて、レイナが首をかしげる。


「……あれ?」


「ん?」


 じっと見られる。


 どこか探るような目。


「……どこかで会ったこと、あります?」


 その一言で——


 胸の奥が、わずかに揺れた。



 覚えていないはずの相手が、

 もう一度こちらを見ている。


 偶然のはずの再会が、

 少しだけ意味を持ち始める。


 そして——


 その“違和感”は、まだ終わらない。


第6話を読んでいただきありがとうございました。


まさかの競馬場での再会。

そして、またしても“当たり”に関わる出来事。


偶然にしては出来すぎている——

そんな違和感が、少しずつ形になってきました。


次回は、二人がもう少し言葉を交わし、

距離が一歩だけ近づきます。


よろしければブックマークや評価、感想をいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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