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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第21話 代償

第21話を読んでいただきありがとうございます。


今回は、大きな転換点となる回です。

これまで順調に進んできた流れの中で、ひとつの“選択”がなされます。


その選択が、何をもたらすのか——

ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。


音楽番組の出演が決まり、事務所は一気に慌ただしくなった。


 打ち合わせ。


 衣装合わせ。


 リハーサルの調整。


 すべてが前倒しで進んでいく。


「……足りねぇな」


 黒沢恒一は、資料を見ながらつぶやく。


「何が?」


 レイナが顔を上げる。


「金だ」


 短く答える。


 制作費。


 人件費。


 機材費。


 ここから先に進むには、明らかに足りていない。


 佐倉が冷静に言う。


「スポンサーがつけば解決する」


「でも、今はまだ無理」


「あと一歩足りない」


 その“一歩”が、遠い。


 だが、時間はない。


 今の流れを止めれば、すべてが終わる。


 恒一は黙る。


 頭の中に、ひとつの考えが浮かぶ。


(……ここで当てれば)


 簡単だ。


 あの力を使えばいい。


 たった一度。


 それだけで、全部解決する。


 資金も。


 不安も。


 未来も。


(……楽になる)


 その言葉が、妙に甘く響く。


 これまでは、どこかで線を引いていた。


 理由なんて、はっきりしていない。


 ただ、なんとなく。


 使いすぎてはいけない気がしていた。


 だが。


(……今は違う)


 これは必要なことだ。


 事務所のため。


 レイナのため。


 そう言い訳をする。


 だが、胸の奥ではわかっていた。


 これは——


 自分のためだ。


「……黒沢?」


 レイナの声。


 現実に引き戻される。


「……ああ」


「ちょっと、出てくる」


 それだけ言って、外に出る。


 空気が冷たい。


 深く息を吸う。


(……やる)


 そう決めた。



 競馬場。


 人のざわめき。


 歓声。


 いつもと同じ景色。


 だが、どこか遠く感じる。


(……これで全部うまくいく)


 そう思う。


 そう思い込む。


 レース表を見る。


 その瞬間。


 ドクン。


 心臓が大きく鳴る。


(……来た)


 視界が、わずかに歪む。


 数字が浮かぶ。


 だが。


 どこかおかしい。


 輪郭が、少しだけ崩れている。


「……」


 目を細める。


 もう一度見る。


 2。


 9。


 13。


(……問題ない)


 そう判断する。


 違和感を、押し込める。


 馬券売り場へ向かう。


「3連単、一点」


 番号を言う。


 紙を受け取る。


 手が、少しだけ冷たい。


 席に戻る。


 レースが始まる。


 ゲートが開く。


 歓声。


 馬が走る。


 恒一は、ただ見つめる。


(……来る)


 直線。


 その瞬間。


 音が、消えた。


 完全な静寂。


「……?」


 次の瞬間。


 音が戻る。


 歓声が、遅れて流れ込んでくる。


 結果。


 当たり。


 完全一致。


「……当たった」


 小さくつぶやく。


 だが。


 胸の奥に、妙な感覚が残る。


 何かを、置いてきたような。


 何かが、削れたような。


「……なんだ、これ」


 周りのざわめきが、少し遠い。


 現実感が、薄い。


 ポケットの中でスマホが震える。


 一度じゃない。


 何度も。


 連続で。


 嫌な予感が走る。


 取り出す。


 画面。


 着信。


 レイナ。


 何度も。


「……もしもし」


『黒沢!?』


 声が、明らかに違う。


 焦り。


 恐怖。


 混ざっている。


「どうした」


『……今、どこ?』


「競馬場だ」


『すぐ戻って』


 間。


 短い沈黙。


 そして。


『……事故があった』


 思考が止まる。


「……は?」


『スタッフが倒れて……』


『搬送された』


 言葉が、途切れる。


 頭の中が真っ白になる。


 さっきまでの光景。


 当たり。


 歓声。


 すべてが、遠ざかる。


 残るのは。


 その言葉だけ。


(……事故)


 胸の奥が、ざわつく。


 理由はわからない。


 だが。


 強烈な違和感だけが残る。


 さっきの静寂。


 歪んだ数字。


 あの瞬間。


(……関係ない)


 そう思おうとする。


 だが。


 思えない。


 足が、動かない。


 その場に立ち尽くす。


 手の中の馬券。


 当たり。


 数字。


 利益。


 すべてが、急に意味を失う。


(……俺は)


 何をした。


 何を選んだ。


 胸の奥に、重いものが沈む。


 その正体は、まだわからない。


 だが。


 確実に。


 何かが変わった。


 戻れない場所に、一歩踏み込んだ。


 その感覚だけが、はっきりと残っていた。


第21話を読んでいただきありがとうございました。


順調だった流れの中で起きた、ひとつの出来事。

そして、これまで感じていた“違和感”が、少しずつ形を持ち始めました。


まだすべてが明らかになったわけではありません。

ですが、確実に何かが変わり始めています。


ここから先、物語は少しずつ核心へと近づいていきます。


よろしければブックマークや評価、感想をいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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