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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第19話 本来の場所

第19話を読んでいただきありがとうございます。


今回は、これまでの流れから一度立ち止まり、

進む方向を決める回になります。


一時的な勢いか、それとも本来の場所か——

その選択を見届けていただけたら嬉しいです。

コラボ配信のあと。


 事務所の空気は、明らかに変わっていた。


 スマホの通知は止まらない。


 メールも、問い合わせも、一気に増えた。


「……すげぇな」


 黒沢恒一は画面を見ながらつぶやく。


「めちゃくちゃ来てる」


 レイナが隣で覗き込む。


「ほんとだ……」


 その顔には、驚きと少しの戸惑いが混じっていた。


 佐倉がパソコンを操作しながら口を開く。


「内容、ほとんどこれだね」


 画面を見せる。


 並ぶ文字。


 競馬企画。


 予想配信。


 コラボ依頼。


「……やっぱりか」


 恒一が小さく言う。


「完全に“当てる人”として見られてる」


 佐倉が淡々と続ける。


 悪くはない。


 むしろ、強い。


 だが。


「……どうする?」


 レイナが聞く。


 その声は、少しだけ慎重だった。


 恒一はすぐには答えなかった。


 スマホを見つめる。


 数字。


 評価。


 流れ。


 確かに、来ている。


 だが。


「……続けたら、どうなると思う?」


 ぽつりとつぶやく。


「え?」


「ずっと当て続ける前提になる」


 静かに言う。


 その意味は重い。


 外した瞬間。


 全部がひっくり返る。


「……確かに」


 レイナが小さく頷く。


 佐倉も腕を組む。


「リスクが高すぎるね」


「長くは持たない」


「しかも」


 一度言葉を区切る。


「レイナの強みじゃない」


 その一言で、空気が変わる。


 静かになる部屋。


 誰も否定しない。


 それが答えだった。


 恒一は、ゆっくりと顔を上げる。


「……戻すか」


 その一言。


 レイナが少しだけ目を見開く。


「……うん」


 小さく答える。


 迷いはなかった。


「私、こっちで勝負したい」


 静かな声。


 だが、芯は強い。


 その言葉に、恒一は小さく笑う。


「だろうな」


「最初から、それしかねぇ」


 佐倉も頷く。


「じゃあ決まり」


「競馬は全部断る」


「一時的な数字より、長く残るもの」


 すぐに動き出す。


 メールの返信。


 案件の整理。


 断りの連絡。


 そのすべてが、次への準備だった。


「じゃあ、何やる?」


 レイナが聞く。


 その目は、もう前を向いている。


 佐倉が少しだけ考えてから言う。


「シンプルにいこう」


「一発撮り」


「え?」


「編集なし」


「そのままの歌」


 部屋が静かになる。


 逃げ場がない。


 ごまかしも効かない。


 だからこそ。


「……いいね」


 レイナが笑う。


 その表情は、どこか楽しそうだった。


「やろう」


 決まった。


 機材は最低限。


 マイク。


 簡単な録音環境。


 そして。


「曲、どうする?」


 恒一が聞く。


 レイナは少しだけ考える。


 そして。


「昔の曲、やる」


「……いいのか?」


「うん」


 まっすぐ答える。


「ちゃんと、もう一回歌いたい」


 その言葉に、迷いはなかった。


 準備はすぐに進む。


 シンプルなセット。


 椅子。


 マイク。


 それだけ。


「……いけるか?」


 恒一が聞く。


「うん」


 レイナが頷く。


 だが、その手は少しだけ震えていた。


「……久しぶりすぎてさ」


 小さく笑う。


「ちょっと怖い」


 正直な言葉。


 だが。


「……いいじゃねぇか」


 恒一が言う。


「それくらいの方が」


「本気ってことだろ」


 レイナが一瞬止まる。


 そして。


「……そうだね」


 小さく笑う。


 深く息を吸う。


「……いくね」


 録音開始。


 音が流れる。


 静かな伴奏。


 そして。


 声。


 最初の一音。


 その瞬間。


 空気が変わる。


 部屋の温度が、少しだけ下がったように感じる。


 響く声。


 まっすぐで。


 余計なものがない。


 ただ、それだけ。


 だが。


 それだけで、十分だった。


 恒一は、何も言えなかった。


 ただ、聞いている。


(……これだ)


 それしかなかった。


 歌い終わる。


 静寂。


 数秒。


 誰も動かない。


「……どう?」


 レイナが少しだけ不安そうに聞く。


 恒一は、ゆっくり息を吐く。


「……いい」


 それだけだった。


 佐倉も静かに頷く。


「これならいける」


 迷いはなかった。


 すぐに動画を上げる。


 タイトル。


 シンプルに。


 余計な言葉はつけない。


 公開。


 数分。


 静かな時間。


 だが。


 少しずつ。


 コメントが増えていく。


『……え?』


『やっぱりこの人すごい』


『鳥肌立った』


『待ってた』


 レイナが画面を見る。


 その目が、少しずつ開いていく。


「……ほんとだ」


 小さくつぶやく。


 さらに。


『戻ってきた』


『これだよ』


『やっぱ歌だろ』


 コメントが流れる。


 止まらない。


 数字も、ゆっくりと伸びていく。


 派手じゃない。


 だが。


 確実に届いている。


「……これだね」


 レイナが言う。


 その声は、はっきりしていた。


「ああ」


 恒一も頷く。


 これが、本来の場所。


 これが、戦う場所。


 遠回りだったかもしれない。


 だが。


 ここに戻ってきた。


 それだけで十分だった。


 ここから、もう一度。


第19話を読んでいただきありがとうございました。


競馬で得た注目をあえて手放し、

レイナは“歌”という本来の場所へ戻ることを選びました。


派手さはなくても、確実に届くもの。

それが今回のテーマです。


ここからは、レイナの復活が本格的に動き出します。


ただし——

すべてが順調に進むとは限りません。


少しずつ積み重なってきた“違和感”も、

この先で意味を持ち始めます。


よろしければブックマークや評価、感想をいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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