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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第16話 始まり

第16話を読んでいただきありがとうございます。


今回は、新たなスタートの回になります。

小さな事務所と、限られた人数。


ここからどう動いていくのか——

現実と向き合いながら進む様子を感じていただけたら嬉しいです。

事務所は、小さく始まった。


 都内の外れ。


 駅から少し歩いた雑居ビルの一室。


 広くもなければ、新しくもない。


 だが、それでも十分だった。


「……ここが、俺らの拠点か」


 黒沢恒一は、部屋の中を見回す。


 机がひとつ。


 椅子が三つ。


 あとは最低限の備品。


 それだけ。


 だが。


「……なんか、いいね」


 レイナが小さく笑う。


「落ち着く」


「そうか?」


「うん」


 少しだけ柔らかい表情。


 その顔を見て、恒一はほんの少し安心した。


 ここまで来るのに、1000万円ほど使った。


 事務所の契約。


 設備。


 最低限の運転資金。


 派手なことは何もしていない。


 だが、それでも大きな一歩だった。


「……ここからだな」


 ぽつりとつぶやく。


 返事はない。


 だが、同じ気持ちなのはわかる。


 すぐに、現実に引き戻される。


 やることは山ほどあった。


 人材。


 営業。


 仕事の確保。


 何もかもが足りない。


「……人、集めねぇとな」


「うん」


 レイナも頷く。


 それから数日。


 恒一は動き回った。


 レイナのこれまでのつて。


 業界関係者。


 知っていそうな人間すべてに連絡を取る。


 だが。


「今はちょっと難しいですね」


「状況が見えないので」


「またタイミングが合えば」


 似たような返答ばかりだった。


 断られている。


 それも、はっきりと。


 レイナの名前を出しても変わらない。


 むしろ、今の状況では逆効果だった。


「……厳しいな」


 スマホを見ながら、つぶやく。


 ため息が出る。


 簡単じゃないとは思っていた。


 だが、ここまでとは思っていなかった。


 それでも、止まるわけにはいかない。


 そのときだった。


 スマホが震える。


 知らない番号。


「……はい」


 出る。


 少しの間。


 そして。


「……ああ」


 思わず、声が変わる。


 レイナがこちらを見る。


 電話の向こうから聞こえてくる声。


 落ち着いた、女性の声。


 どこか懐かしい響き。


 数分後。


 電話を切る。


「……誰?」


 レイナが聞く。


 恒一は少しだけ間を置く。


「……来るらしい」


「え?」


「元マネージャー」


 その言葉に、レイナの表情が変わる。


「……もしかして」


「佐倉、美咲って言ってた」


 数秒の沈黙。


 そして。


「……マジで?」


 声が少しだけ震えていた。


 その日の夕方。


 事務所のドアが開く。


「……久しぶり」


 入ってきたのは、一人の女性。


 落ち着いた雰囲気。


 無駄のない動き。


 どこか変わっていない空気。


「……佐倉さん」


 レイナが立ち上がる。


「久しぶり」


 佐倉美咲は、軽く微笑む。


 だが、その目は真剣だった。


「ニュース、見た」


「……うん」


「心配してた」


 短い言葉。


 だが、その中にいろいろ詰まっている。


 少しの沈黙。


 そして。


「……やるんでしょ?」


 まっすぐな言葉。


 恒一とレイナは、一瞬言葉を失う。


 ごまかしは効かない。


「……やる」


 恒一が答える。


 迷いはなかった。


 佐倉は小さく頷く。


「なら」


 少しだけ息を吸う。


「私もやる」


 その一言で、空気が変わる。


「……いいのか」


 思わず聞く。


「いいの」


 即答だった。


「もう一回、やりたいの」


 視線はレイナに向いている。


「この子と」


 レイナが、少しだけ目を逸らす。


 だが、その口元はわずかに緩んでいた。


「……ありがとう」


 小さくつぶやく。


 それだけで十分だった。


 これで、三人になった。


 黒沢恒一。


 如月レイナ。


 佐倉美咲。


 たった三人。


 だが、確かに前に進んでいる。


「……で」


 佐倉がすぐに現実に戻す。


「経営、どうするの?」


 その言葉に、空気が少し引き締まる。


 避けては通れない問題。


 資金管理。


 仕事の管理。


 営業。


 全部必要だ。


「……俺がやる」


 恒一が言う。


 自然と出た言葉だった。


「経験あるの?」


「ない」


 即答。


 少しだけ、沈黙。


 だが。


「……やるしかねぇだろ」


 それも事実だった。


 今は誰もいない。


 外に頼る余裕もない。


 なら、自分がやるしかない。


 佐倉は少しだけ考えてから、息を吐く。


「……まあ、最初はそれしかないか」


「フォローはする」


「頼む」


 短いやりとり。


 それだけで、少しだけ形が見えた。


 レイナが二人を見る。


「……なんかさ」


「うん?」


「ちょっと、現実になってきたね」


 その言葉に、恒一は小さく笑う。


「今さらだろ」


「でもさ」


 少しだけ、間を置く。


「……ちょっと怖いかも」


 正直な言葉だった。


 だが。


「……いいじゃねぇか」


 恒一は言う。


「それくらいの方が」


 前を見る。


 何もない部屋。


 だが。


 ここから全部作る。


 その実感があった。


「……やるぞ」


 小さくつぶやく。


 その言葉に。


「うん」


 レイナが頷く。


「やろう」


 佐倉も続く。


 まだ何もない。


 小さな事務所。


 小さなチーム。


 それでも。


 確かに、始まった。


 もう一度。


第16話を読んでいただきありがとうございました。


仲間が揃い、ようやく形になったスタートライン。

ですが、ここからが本当の勝負です。


人も、経験も、まだ足りない。

それでも前に進むしかない三人。


小さな一歩ですが、確実に動き出しました。


次回は、いよいよ最初の挑戦へ。

少しずつ変化していく流れをお楽しみください。


よろしければブックマークや評価、感想をいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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