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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第14話 仮説

第14話を読んでいただきありがとうございます。


今回は、少しだけ落ち着いた時間の中で、

これまでの出来事に対する“違和感”が形になり始める回です。


二人の距離や空気の変化も、感じていただけたら嬉しいです。

競馬場を出て、少し歩いた先。


 恒一は立ち止まった。


「……すまんな」


「ん?」


「こんな店で。あんまり店知らなくて」


 指さした先は、古びた居酒屋だった。


 派手さもなく、どこにでもあるような店。


 だが、どこか落ち着く雰囲気がある。


 レイナは少しだけ見上げてから、ふっと笑った。


「全然いいよ」


「こういうとこ、好き」


「……ほんとか?」


「うん。むしろ落ち着く」


 その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。


「じゃあ、ここでいいか」


「うん」


 二人で店に入る。


 カウンター席に案内される。


 狭いが、妙に居心地がいい。


 店内には、常連らしき客とテレビの音。


 日常の延長みたいな空気。


 それが、妙に安心できた。


 注文を済ませ、ビールが運ばれてくる。


「……とりあえず」


「乾杯」


 軽くグラスを合わせる。


 小さな音が響く。


 ひと口飲む。


 喉を通る感覚が、少しだけ現実に引き戻す。


「……今日、すごかったね」


 レイナが笑う。


「まあな」


「一点でしょ?」


「たまたまだ」


「いやいや、あれはたまたまじゃないでしょ」


 軽く笑い合う。


 さっきまでの緊張感は、少しずつ溶けていく。


 だが。


 恒一の中には、別のものが残っていた。


「……なあ」


 グラスを置きながら言う。


「ん?」


「さっきから思ってたんだけど」


 少しだけ言葉を選ぶ。


「……俺が当てたあと」


「なんか起きてないか」


 レイナがきょとんとする。


「なんかって?」


「トラブルとか」


「さっきの揉め事とか、店のやつとか」


 レイナは少し考えてから、肩をすくめた。


「……まあ、あれくらいは普通じゃない?」


「偶然でしょ」


 当然の反応だった。


 恒一も、それはわかっている。


 だが。


「……かもな」


 そう言いながらも、視線は落ちたままだった。


「でもさ」


「なんか、繋がってる気がするんだよ」


 言葉にすると、余計におかしく聞こえる。


 自分でもそう思う。


 それでも、口に出さずにはいられなかった。


「……俺が当てると」


「お前の近くで、なんか起きる」


 少しの沈黙。


 レイナはすぐには答えなかった。


 グラスを持ち、軽く回す。


「……それ、本気で言ってる?」


「わからん」


 正直に答える。


「でも、なんか変なんだよ」


 確信はない。


 だが、違和感だけは消えない。


 レイナは少しだけ考え込んでから、小さく息を吐いた。


「……まあ、信じろって言われても無理だけど」


「ちょっと気になるかも」


 その言葉に、ほんの少しだけ救われた気がした。


「……だよな」


 そこに、料理が運ばれてくる。


 焼き鳥の匂い。


 湯気。


 少しだけ空気が緩む。


「食べよ」


「おう」


 箸を取る。


 しばらくは、他愛のない話をする。


 仕事のこと。


 昔の話。


 どうでもいいような話。


 だが、それが心地よかった。


 気づけば、酒も進んでいた。


 レイナの頬が、少しだけ赤くなっている。


「……なんかさ」


 ぽつりと、レイナが言う。


「ん?」


「うまくいかないんだよね」


 少しだけ笑う。


 だが、その笑いは軽くない。


「新しいとこ入ってさ」


「頑張ろうとは思ってたんだけど」


「なんか、全部ズレてく感じで」


 言葉が、少しずつ崩れていく。


「人も合わないし」


「仕事も減るし」


「タイミングも悪いし」


 グラスを見つめながら、続ける。


「……頑張ってたつもりなんだけどな」


 その一言が、やけに重かった。


 恒一は何も言えなかった。


 軽く励ますこともできない。


 ただ、聞くことしかできない。


「……なんでこうなるんだろ」


 小さくつぶやく。


 その声は、ほとんど消えそうだった。


 笑っているのに。


 どこか、壊れそうな感じがした。


「……」


 恒一は、グラスを握る。


 頭の中で、さっきの出来事が繋がる。


 競馬。


 465万。


 そして、トラブル。


 そして——


 今、目の前で話している内容。


(……まさか)


 嫌な考えが浮かぶ。


 だが、消えない。


(……俺のせいか?)


 そんなはずはない。


 証拠もない。


 ただの思い込みかもしれない。


 それでも。


 もし、本当に繋がっているなら。


 自分が当てた、その裏で。


 何かが起きているとしたら。


 それが——


 目の前のこいつに関係しているとしたら。


「……黒沢?」


 レイナが不思議そうに見る。


「どうしたの」


「……いや」


 首を振る。


 まだ、言えない。


 確信もない。


 ただ。


 違和感だけが、残る。


 グラスの中の氷が、カランと音を立てる。


 その音が、やけに大きく聞こえた。


 楽しいはずの時間。


 だが、その奥で。


 何かが、確実にズレている。


 その正体に、まだ辿り着けないまま。


 二人の距離だけが、少しずつ近づいていた。


第14話を読んでいただきありがとうございました。


何気ない会話の中で浮かび上がった“仮説”。

まだ確信には至らないものの、確実に何かが繋がり始めています。


そして、レイナの本音。


順調に見えていたものの裏で、積み重なっていた違和感と不運。

それがどこに繋がるのか——


次回は、その仮説を確かめるための行動へ。

物語がさらに大きく動き出します。


よろしければブックマークや評価、感想をいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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