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降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


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8 降誕・新・水滸伝

第五日 天勇星


第五の日、天に、わずかな「傾き」が生まれていた。

崩れではない。

偏りでもない。


だが、

完全なる均衡が、もはや静止ではいられぬことを、

天そのものが知り始めていた。

四つの刻印は、互いを侵さず、

互いを拒まず、

ただ、

そこに在ることで、

全体を支えていた。


だが、

支えるとは、

やがて、何かを受け止めることを意味する。

白玉の宮の前に、石が据えられていた。

その石は、これまでの石よりも、わずかに粗かった。

未熟なのではない。

まだ、

削られることを拒んでいない石であった。


玉皇大帝は、その石を見ていた。

その視線は、試すものではなかった。

待つものであった。

そのとき、


一つの星が、前へ出た。

その動きは、速かった。

速さを誇るのではない。

止まる理由を持たぬのである。

光は強かった。

鋭さではない。

燃えていたのである。


その光は、

周囲を照らすのではなく、

自らを燃やしていた。

星は、ためらわず石の前に至った。

そして、

止まった。

止まったが、

その光は、なお燃えていた。

静止してなお、

進もうとしていた。


玉皇大帝は、問いを置いた。

「進むことを、恐れるか」


星の光が、わずかに揺れた。

恐れがないのではない。

恐れを、すでに含んでいた。

恐れとは、退く理由ではない。

進む意味を与えるものである。

恐れを知らぬ進みは、

ただの落下である。

恐れを知りながら進むものだけが、

歩みとなる。


玉皇大帝の手に、光が集まった。

その光は、これまでで最も明確な形を持っていた。

刃であった。

ためらいのない刃。

光は、石に触れた。

触れた瞬間、

石の奥から、

初めて、

確かな「応答」が生まれた。

それは音ではない。

抗いであった。

石は、拒んだのである。

壊れることをではない。

変わることを。

だが、

光は止まらなかった。

一画。

石は震えた。

また一画。

震えは、さらに深くなった。

それは苦しみではない。

選択であった。

変わらぬまま在るか。

変わることで在るか。

第三の一画が刻まれたとき、

石は、拒むことをやめた。

受け入れたのである。

変わることを。


天勇星。

勇気と決断の神

迷いを断ち、必要な時に一歩を踏み出させる。

精神の“躊躇”を焼き払う火のような力。

突破・開道の神

閉塞を切り開き、道を作る。

七殺のような破壊ではなく、正面突破の力。

行動と実行力の神

思考より先に身体が動く、純粋な行動エネルギー。

陽の火性を持つ若い武神

老成した守護神ではなく、勢いと生命力を象徴する若い神格。

火のように燃え、風のように迷わず進む。

最後の一画が刻まれたとき、

石の内部で、

五つの刻印が、

初めて、

互いに力を及ぼし合った。

天魁星。

天罡星。

天機星。

天閑星。

天勇星。

均衡は、

もはや静止ではなかった。

均衡は、

動きを内包した。

勇とは、

均衡を崩す力ではない。

均衡を、

次の均衡へと移す力であった。

星の光は、変わっていた。

燃えていた光は、

今は、

燃え続ける光となっていた。

消えるためではなく、

続くための光であった。


玉皇大帝は、星を見た。

「失うことを知り、なお進むか」

星の光は、揺れなかった。

それが答えであった。

玉皇大帝は、指を離した。

刻印は、完成していた。


そのとき、

星は、沈み始めた。

速さはなかった。

だが、

止まることもなかった。

進み続けながら、

地へと向かった。

雲を抜け、

まだ形を持たぬ時間の層へと降りていく。


そのとき、

地上のある場所で、

一つ石碑が、

理由もなく、

静かに、置かれた。

それは、

かつて戦いがあった場所であった。

今は草が生え、

風だけが、

その記憶をなぞっていた。

石は、

何も語らなかった。

だが、

その場に刻まれたすべてを、

受け止めていた。

誰も気づかなかった。

だが天は知っていた。

第五の器は、

定められた。

天において、

玉皇大帝は、静かに眼を閉じた。

五つは刻まれた。

均衡は、

動き始めた。

そして動きは、

やがて、

抗いを生む。


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