表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/59

58

都・開封の地を踏んだ英雄たち。彼らが目にしたのは、かつての戦場とは正反対の、眩いばかりの金銀と、どこか血の匂いのする香料の香りでした。

一、 龍顔との謁見:徽宗皇帝の涙

大内だいだいの深奥、紫宸殿。

宋江と盧俊義は、泥と返り血に汚れ続けた軍服を脱ぎ捨て、眩い官服に身を包んで玉座の前に跪きました。

「よくぞ……よくぞ参った。卿らの忠義、朕の心に深く刻まれたぞ」

皇帝・徽宗は、芸術家ゆえの繊細な瞳に涙を浮かべました。彼は本気で感動していたのかもしれません。しかし、その玉座の横に控える蔡京の眼光は、獲物を追い詰めた毒蛇のように冷たく光っていました。

「陛下。我ら百八人の兄弟、今はその多くが天に還りましたが、この宋江、皆を代表して陛下のご安泰を寿ぎ奉ります」

宋江の言葉は、偽りのない真実でした。彼はこの瞬間のために、多くの兄弟の命を費やしてきたのです。その純粋すぎる「忠」が、かえって政敵たちの殺意を研ぎ澄ませました。

二、 魔の祝宴:黄金の毒酒

謁見ののち、場所を移して華やかな祝宴が催されました。

そこには、生き残った花栄や朱仝、そして落ち着かない様子の李逵も列席していました。

「がはは、兄貴! 都のメシってのは、なんでこんなに味が薄いんだ? 梁山泊の肉の方がよっぽどマシだぜ」

李逵の無邪気な声が響く中、蔡京が恭しく歩み寄りました。その手には、皇帝から下賜されたという「御酒」の瓶が握られていました。

「宋太尉、これまでの苦労を労い、陛下よりこの名酒を授かりました。まずは、貴殿から……」

呉用は、その酒の色、そして注がれた瞬間のわずかなよどみを見逃しませんでした。しかし、彼は声を上げませんでした。宋江がその杯を、すべてを悟ったような静かな微笑みで受け取ったからです。

三、 覚悟の乾杯:宋江の選択

宋江は、杯の中の黄金色の液体を見つめました。

(これこそが、私が求めた『結末』か……。賊としてではなく、陛下の忠臣として死ぬ。これ以上の幕引きはあるまい)

「……頂戴いたします」

宋江は一気にそれを飲み干しました。喉を焼くような熱。それは、彼が一生をかけて背負ってきた「義」という名の重圧が、最後にもたらした解放の痛みでした。

四、 鉄牛(李逵)への最後の愛

祝宴が終わり、自室に戻った宋江は、胸を締め付ける激痛の中で李逵を呼びました。

李逵もまた、宋江が分けた「御酒」を飲み、すでに毒が回っていました。

「鉄牛……。済まぬ。お前を道連れにした」

宋江が涙ながらに謝ると、李逵は苦しい息の中で、いつものように豪快に笑いました。

「兄貴……。何を謝ってんだ。俺は、死ぬ時だって兄貴の傍にいたいんだ。あっちへ行っても、俺が兄貴の盾になってやるぜ。……ただ、あっちには、張順も、魯智深も待ってるんだろうな」

李逵は、宋江の膝の上で、眠るように息を引き取りました。


星は夜空へ還る


翌朝、宋江の死を知った呉用と花栄は、彼らの墓前で互いを見つめ合いました。

「宋殿が行かれたのなら、我らだけがこの汚れきった都に留まる理由はない」

二人は、宋江の墓の隣にある木に、自ら縄をかけました。

百八の宿星は、こうしてすべて、姿を消したのです。

しかし、都の権力者たちがどれほど彼らを葬ろうとも、民衆の間では語り継がれました。梁山泊という夢の跡。そこには、今も夜風に乗って、英雄たちの笑い声と「替天行道」の旗のはためきが聞こえるのだと。

宋江たちは「義」という名誉を守り抜き、永遠の伝説となりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ