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降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


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田虎との山岳戦で心身を削り、解宝というかけがえのない兄弟を失った梁山泊軍。しかし、朝廷の非情なる督戦状は、彼らに休息を許しません。次なる戦場は、長江の支流を血で染める、**王慶おうけい**との水上決戦でした。

一、 水上の要塞:淮西の牙

王慶は、広大な湖沼地帯と複雑に入り組んだ水路を盾に、「楚」の国を称して君臨していました。彼の配下にある水軍は、長年この地の魚民を組織化した精鋭であり、梁山泊水軍にとっても、かつてない強敵でした。

混江竜・李俊、張横・張順、そして阮三兄弟。梁山泊が誇る水の英雄たちは、霧の深い湖面に戦船を並べ、王慶の牙城へと迫ります。しかし、王慶の将・**縻勝びしょう**が放つ火船と、水底に張り巡らされた鉄鎖が、梁山泊の進路を阻みました。

二、 張順の最期:湧金門の悲劇

戦局を打開するため、浪裏白跳・張順は単身、敵の拠点である「湧金門」の水門を内側から開くべく、夜の冷たい水底へと潜りました。

「兄貴……。俺が道を切り開く。梁山泊の旗を、あの門に立ててくれ」

張順は、魚のように音もなく水門へと近づきました。しかし、王慶軍はすでに梁山泊の動きを察知していました。張順が水面に顔を上げた瞬間、城壁の上から無数の火矢と投げ槍が降り注ぎました。

「掛かったぞ! 梁山泊の潜り名手を仕留めろ!」

全身を矢に貫かれながらも、張順は水門の鎖を握りしめたまま、力尽きました。かつてどんな荒波も恐れなかった「水の精」は、冷たい水底へと沈んでいきました。対岸で見守っていた兄・張横の慟哭が、夜の湖面に虚しく響き渡ります。

三、 阮小二の意地:火の海での散華

張順の死を知り、逆上した水軍衆は総攻撃を開始しました。立地太歳・阮小二は、敵の大型船に自らの船をぶつけ、白兵戦を挑みます。

しかし、敵の放った「火龍薬」が阮小二の船を包みました。炎に包まれ、退路を断たれた阮小二。彼は敵に捕らわれ、辱めを受けることを拒みました。

「阮家の男に、後ろを見せる言葉はない!」

彼は自ら腹を切り、猛火の中に消えていきました。

立て続けに失われる水軍の要。梁山泊の「五水軍」のうち二人が、この王慶の汚れた水底に消えたのです。

四、 李俊の決断と、残された者たち

総帥・李俊は、血を吐く思いで全軍を指揮し続けました。張順が命を賭けて緩めた水門に、活閻羅・阮小七が火砲を撃ち込み、ついに王慶の本拠地を陥落させます。

勝利の雄叫びは、しかし悲痛なものでした。

戦い終わった湖面に浮かんでいたのは、敵の残骸だけではなく、誇り高き兄弟たちの遺品でした。

宋江は、届けられた張順の遺髪を前に、言葉を失いました。

「……またか。また、私の手が、足が、もがれていく」

呉用は、その横でただ一点を見つめていました。この勝利は、朝廷にとっては「賊の共倒れ」を意味し、梁山泊にとっては「自滅への行進」に他ならないことを、彼は誰よりも理解していたからです。

王慶を討ち果たし、水軍の屋台骨を失った梁山泊。しかし、悲劇の終着駅である「方臘ほうろうの乱」は、すぐ目の前に迫っています。

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