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降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


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北宋の北西、山西の峻険な連峰を根城とする田虎でんこ。彼が率いる「晋」の軍勢は、正規軍のような規律こそありませんでしたが、断崖絶壁を庭とし、妖術を操る不気味な集団でした。

朝廷の親書に従い、梁山泊軍はこの「天然の要塞」へと足を踏み入れます。しかし、そこには呉用の知略すら届かぬ、山の魔力と血の雨が待ち受けていました。

一、 絶壁の迷宮:消える伏兵

梁山泊の先鋒を務めたのは、急先鋒・索超と美髯公・朱仝でした。

しかし、彼らが対峙したのは兵の群れではなく、「山」そのものでした。

「姿を見せろ、卑怯者ども!」

索超が叫び声を上げた瞬間、頭上の絶壁から巨石と燃え盛る丸太が降り注ぎました。逃げ場のない狭い峡谷。地鳴りとともに、梁山泊の精鋭たちが次々と押し潰されていきます。

朱仝の長い髭が血に汚れ、索超の大斧が岩に火花を散らす中、霧の中から現れたのは、田虎の配下・喬道清きょうどうせい。彼は幻術を操り、一本の道を百の分かれ道に見せ、梁山泊の軍勢を分断させていきました。

二、 術戦の極致:公孫勝 対 喬道清

軍が壊滅の危機に瀕したとき、宋江の傍らから一人の道士が歩み出しました。入雲竜・公孫勝です。

「……山の霊気を歪め、私欲に使うか。呪われし術、我が師・羅真人らしんじんに代わって封じよう」

公孫勝が松紋の古剣を天に掲げると、暗雲が渦巻き、雷鳴が轟きました。喬道清が放つ「黒い霧」に対し、公孫勝は「黄金の龍」を呼び出し、幻術を次々と打ち破っていきます。

九天応元雷声普化天尊きゅうてんおうげんらいせいふかてんそん!」

公孫勝の祈祷とともに、峡谷を覆っていた霧が晴れ、伏兵たちの姿が露わになりました。しかし、幻術が解けた後に広がっていたのは、すでに物言わぬ骸となった梁山泊の兵たちの無残な姿でした。

三、 散りゆく小星:解珍・解宝の意地

伏兵の拠点を叩くため、断崖をよじ登ったのは両頭蛇・解珍と双尾蝎・解宝の兄弟でした。彼らは猟師出身の意地を見せ、道なき道を這い上がります。

しかし、頂上付近で彼らを待っていたのは、無数の毒矢と、足元を崩す仕掛けでした。

「兄貴、ここは俺が……!」

解宝が崩落する足場から兄を突き飛ばし、自らは谷底へと消えていきました。

「解宝ーーッ!!」

解珍の絶叫が山々に響き渡ります。梁山泊開山以来、初めての「百八星」の欠員。その衝撃は、宋江の心を、そして全軍の士気を激しく揺さぶりました。この「初めての欠落」は、英雄たちの不敗神話が終わりを告げる。

四、 泥沼の勝利と、宋江の涙

公孫勝の術戦によって喬道清を降し、林冲や武松の力攻めによって田虎の本拠地を陥落させた頃、梁山泊軍はかつての輝きを失っていました。

勝利の酒宴などありません。

宋江は、冷たい岩肌に腰掛け、帰らぬ兄弟たちの名を記した名簿を握り締めていました。

「呉先生……これが朝廷の望んだことなのか。敵を倒すたびに、私の腕がもがれ、足が削ぎ落とされていくようだ」

呉用は答えることができません。

田虎を討伐したという手柄は都へ届きましたが、引き換えに梁山泊が失ったのは、単なる兵力ではなく、「死なない家族」という幻想そのものでした。

田虎を討ち果たしたものの、梁山泊の結束には拭えぬ悲しみの影が差しました。そして間髪入れず、次なる遠征地・王慶の戦場が彼らを呼びます。

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