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降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


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天の宿星百八人が、それぞれの「義」を胸に、五十万の官軍を迎え撃つ。これは単なる戦ではなく、泥濘の中に咲いた「誠」の華が、歴史の濁流を押し戻す物語です。


宿星の集結と、呉用の『八陣十里』の網


梁山泊の仮設本陣は、夜明け前の蒼い霧に包まれていました。

呉用の軍令は、神行太保・戴宗の脚によって、わずか一刻のうちに山中、水際、さらには対岸の野原にまで行き渡りました。

一、 鉄壁の防衛線

梁山泊の正面、官軍が上陸を試みる「金沙灘」には、将の筆頭、大刀・関勝を筆頭に、霹靂火・秦明、双鞭・呼延灼、双鎗将・董平が並び立ちました。その後ろには、美髯公・朱仝、急先鋒・索超らが率いる万単位の精鋭が、鉄の壁となって控えています。

「関殿。敵は五十万、こちらはその三分の一にも満たぬ」

秦明が狼牙棒を鳴らせば、関勝は静かに青龍偃月刀を撫でました。

「数など、この青龍刀の一閃に比べれば無に等しい。我らが一歩退けば、そこは義の潰える場所。死を恐れる者は、ここにはおらぬ」

二、 参謀本部の暗躍

中央軍事会議室では、地魁星・朱武が間者たちからの報告を砂盤に落とし、地正星・裴宣が厳しい顔で軍律を再点検しています。

「聖手書生・蕭譲、全軍への偽情報の流布は完了したか?」

「御意、呉先生。童貫の司令部には、すでに『宋江病死』の偽文が届いております」

三、 術戦の幕開け

さらに高い岩山の上では、入雲竜・公孫勝が剣を天に掲げていました。その傍らには、混世魔王・樊瑞。

「公孫殿、風が変わり申したな」

「うむ。天の理は我らにあり。地に満ちるは、欲深き官軍の血のみよ」


血戦・金沙灘の激突


ついに、童貫率いる五十万の先陣が、怒濤の喚声とともに湖面を埋め尽くしました。

一、 弓神の精密打撃

「放てッ!」

小李広・花栄の号令とともに、没羽箭ぼつうせん・張清、地軸星・凌振の火砲が火を噴きました。花栄の放つ矢は、一度に三本の敵将の喉を貫き、張清の石礫は、名もなき兵士たちの兜を砕きます。

その後ろでは、地微星・王英・矮脚虎わいきゃくこと地急星・扈三娘・一丈青いちじょうせいの夫婦が、流れるような連係で敵の側面を削り取っていきました。

二、 怪力無双の「仁王」

陸に上がった敵の前に立ちはだかったのは、花和尚かおしょう・魯智深と行者・武松。そして、その後ろから「死神」が笑いながら飛び出しました。黒旋風・李逵です。

「ぎゃははは! どけい、どけい! 鉄牛様のお通りだ!」

李逵の二丁斧が旋風のように回り、官軍の兵を肉塊へと変えていきます。その横では、両頭蛇・解珍、双尾蝎・解宝の兄弟が、獲物を狩る蛇のように冷徹に獲物を仕留めていきました。

三、 水底の伏兵

湖面では、混江竜・李俊、張横・張順の兄弟、そして阮小二・小五・小七の三兄弟が、水の中に官軍を引きずり込んでいました。

「陸の喧騒が遠いな。ここはお前たちの墓場だ」

張順が水中で短刀を閃かせれば、官軍の船は底から穴を開けられ、一兵たりとも生還を許しません。


百八の星、それぞれの覚悟


乱戦は数日に及びました。梁山泊の至るところで、地煞星ちさつせいたちの獅子奮迅の働きが見られました。

地賊星・時遷が敵の本陣に忍び込み、軍旗を燃やして混乱を呼ぶ。

神医・安道全は、前線で傷ついた青面獣・楊志や赤髪鬼・劉唐の傷を、矢が飛ぶ中で縫い合わせる。

地英星・扈三娘の凛々しき舞のような剣、金鎗手・徐寧の鉤鎌鎗による馬の足を薙ぐ戦法。

宋江は、砦の頂で、自ら大太鼓を叩いていました。

「皆を見よ! 天の配した百八の星が、いま一つの巨大な命となっているのだ!」


童貫の敗走と、新時代の夜明け


五十万の軍勢は、呉用の「八陣十里」の網にかかり、内側から崩壊を始めました。

公孫勝の呼んだ大嵐が、童貫の旗を叩き折り、花栄の最後の一矢が、童貫の耳をかすめていきました。

「退け! 退けいッ! 奴らは人ではない、魔星の化身だ!」

命からがら逃げ出す五十万の残兵。それを追うのは、九紋龍・史進や没遮攔・穆弘ら、若き好漢たちの咆哮でした。

戦いが終わった静寂の中。

夕日に染まる梁山泊。宋江の横には、玉麒麟・盧俊義と呉用が立っていました。

「呉先生。……勝ったな」

「いいえ、宋殿。これは勝利ではありません。これから、この百八人と、彼らに付き従う万民をどう守り、この国をどう変えていくか……本当の戦いは、今この瞬間から始まるのです」

宋江は、新たに作らせた、泥にまみれた「替天行道」の旗を、再び高く掲げ直しました。

そこには、百八人それぞれの名前が、血と誇りで刻まれていました。

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