表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/59

36

梁山泊、泥と鉄の砦。

都から生還した宋江を囲み、百八星の主要な面々が再び集ったのは、かつての聚義庁しゅうぎちょうの残骸に作られた、冷たい風の吹き抜ける作戦会議場でした。

宋江の顔からは甘さが消え、その瞳には凍てついた決意が宿っています。

呉用が、地図の上にいくつかの黒い石を置きました。

一、 呉用の断腸の策:『焦土の檻』

「皆、聞け。高俅は今度こそ、我らを根絶やしにするために十万の正規軍を動かす。もはや、この島に籠もるだけでは全滅を待つのみだ」

呉用の声は低く、そして非情でした。

「最後の方策は……**『梁山泊を捨てる』**ことにある」

その一言に、周囲の好漢たちが息を呑みました。しかし、呉用は続けます。

「捨てると言っても、逃げるのではない。この島全体を、高俅の軍を葬る巨大な『棺桶』にするのだ。敵を島の中心部まで引き込み、そこで一気に火を放つ。我らはその混乱に乗じ、水路と地下道を抜けて、敵の本陣、すなわち高俅の首一点のみを狙う」

二、 役割の分配:最後の輝き

呉用は、震える手で各々に最後となるかもしれないめいを下しました。

誘引おとり:李逵と魯智深

「お前たちは、正面から敵を迎え撃ち、わざと負けて退け。敵を島の深部、火薬を仕掛けた泥濘地帯へと誘い込むのだ。最も危険だが、お前たちにしか務まらん」

伏兵:林冲と武松

「林冲殿、武松。貴殿らはあえて島を脱し、湖の対岸、官軍の背後の葦原に潜め。島が燃え上がった時、逃げ場を失い混乱する敵の背後から、高俅の喉元を食い破れ」

水の壁:李俊と阮三兄弟

「水軍は湖の底に沈めた杭を浮かせ、官軍の退路を完全に封鎖せよ。一兵たりとも、この湖から生かして帰すな」

三、 宋江の宣告:『修羅の旗』

宋江はゆっくりと立ち上がり、ボロボロになった「替天行道」の旗を、自らの手で篝火かがりびの中へ投げ込みました。

「兄貴!? 何を!」

李逵が驚いて叫びましたが、宋江の横顔は動きませんでした。

「……『天に代わって道を行なう』時代は終わった。これからは、誰のためでもない、我ら百八人の『義』を証明するためだけに戦う。この旗が燃え尽きた灰こそが、我らの新たな旗印だ」

宋江は腰の剣を抜き、その刃を自らのてのひらに当てて、一気に引き切りました。滴る血を、地図の上に広がる梁山泊の図面へと滴らせます。

「高俅に教えよう。我らは、折れることはあっても、屈することはない。この山が燃え尽きる時、それこそが北宋という国の終わりの始まりであることを、奴の眼に焼き付けてやるのだ」

四、 嵐の前の静寂

砦の外では、すでに地平線を埋め尽くす官軍の松明たいまつの光が見え始めていました。

十万対、数百。

数字の上では勝負になりません。しかし、この「最後の方策」は、勝利を求めたものではなく、自分たちが「英雄」として、あるいは「壮絶な逆賊」として、歴史に深く爪痕を残すための、死を前提とした狂気の策でした。

「さあ……始めようじゃねえか。最高の宴をよ」

武松が低く笑い、刀を鞘に収めました。

梁山泊の夜が明けていきます。

ついに、梁山泊を舞台とした最終決戦の幕が上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ