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降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


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33/59

33

背後に宋江を背負った李逵が消えるのを見届けると、武松と魯智深は、互いに言葉を交わすこともなく、ただ一歩、敵の前へと踏み出しました。

豪華な回廊の赤絨毯は、今や官軍の兵たちの重い足音に震えています。

一、 怒濤の禅杖

「ぬううりゃあああッ!!」

魯智深の咆哮が、回廊の天井を揺らしました。

六十二斤の**水磨禅杖すいりぜんじょう**が円を描いて振り回されるたびに、漆塗りの柱は飴細工のように砕け、重装歩兵の盾は紙屑のようにひしゃげます。

「邪魔だ、どけい! 仏門の慈悲は、今夜は品切れだ!」

彼の振るう杖は、もはや武器ではなく、天罰そのものでした。一撃で三人、二撃で五人。官軍の兵たちは、魯智深の怪物じみた怪力に戦慄し、一人、また一人と吹き飛ばされては、中庭の池へと沈んでいきました。

二、 戒刀の旋風

魯智深が「剛」の破壊なら、武松は「速」の死神でした。

左右の手に握られた二振りの雪花鑌鉄刀せっかひんてつとう。その刃は、月光を反射することさえ忘れるほどの速さで、敵の喉元を刈り取っていきます。

武松の足運びは、酔っているようでいて、一点の無駄もありません。

狭い回廊、敵の槍の突きを紙一重でかわすと、その懐に潜り込み、二振りの刀を交差させます。その瞬間、兵士たちの鎧の隙間から鮮血が噴き出し、武松の漆黒の衣をさらに黒く染め上げました。

「……死に急ぐな。俺の刀は、まだ腹を空かせている」

武松の瞳は、かつて景陽岡けいようおかで人喰い虎を仕留めた時と同じ、冷徹な捕食者の輝きを放っていました。

三、 血塗られた仁王立ち

官軍は、高俅の督戦を受け、波のように押し寄せます。

しかし、武松と魯智深の二人が並び立つこの場所だけは、死の境界線となっていました。

魯智深の肩に矢が立ち、武松の脇腹を剣がかすめる。

だが、二人は笑っていました。

宋江が都で吸わされていた「贅沢な空気」よりも、この血の匂いが混じった「戦の空気」こそが、自分たちの本領であると、魂が叫んでいたからです。

「和尚、息は切れてねえか!」

「ふん、百八回までなら、この杖を振ってやれるぜ!」

四、 炎の中の咆哮

戦いが激化する中、回廊に火が回りました。

燃え盛る火柱が二人を包み込みますが、彼らは一歩も退きません。

背後で李逵たちが水門へ辿り着くための、わずか数分の時間を、彼らは自分の命を燃やすことで買い取っていました。

崩れ落ちる屋根、渦巻く煙。

その炎の向こうに、二人の巨大な影が仁王立ちしている。

官軍の兵たちは、もはや彼らを人間とは思わず、地獄から現れた「阿吽の仁王」そのものとして、恐怖に凍りつきました。

「……行け、李逵! 兄貴を……梁山泊を頼んだぞ!」

武松の呟きは、激しい剣戟の音の中に消えました。

二人の英雄が、都の闇を鮮血で塗り替えていく――。それは、後世、決して語られることのなかった、泥臭くも崇高な「滅びの美学」の極致でした。

二人の壮絶な殿しんがりによって、宋江たちはついに水門へと辿り着きました。

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