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降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


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32/59

32

月も雲に隠れた深夜、開封を貫く御河ぎょかの水面に、不気味な渦が巻きました。

西の水門が、燕青の工作によって音もなく開かれたのです。

どす黒い水の中から、濡れた背中を光らせて、獣のような一団が這い上がってきました。

一、 水底からの咆哮

「……よし、野郎ども。暴れ時だぜ!」

李逵りきが、びしょ濡れの体で岸に立ち上がりました。その背には、あの巨大な二丁の斧が鈍く光っています。彼の後ろからは、**解珍かいちん解宝かいほうの兄弟、そして水の扱いに長けた張順ちょうじゅん**たちが、息を潜めて続きます。

都の静寂を破ったのは、呉用が放った一筋の**「火矢」**でした。

夜空に赤い尾を引いて高く昇ったその光こそ、地獄の門が開いた合図。

「死ねッ、狐野郎の犬ども!」

李逵は、真っ先に駆け寄ってきた巡邏の兵の頭を、一斧で叩き割りました。悲鳴さえ上げる暇を与えない、圧倒的な暴力。彼らは通路を駆け抜け、宋江が囚われている「賓客の間(黄金の檻)」へと一直線に突き進みます。

二、 阿鼻叫喚の回廊

高俅の邸宅は、瞬く間に戦場へと変わりました。

燕青が流した噂によって、守備兵たちは「味方の中に裏切り者がいる」という疑心暗鬼に陥っており、統率が取れません。そこへ、闇の中から鬼の形相をした好漢たちが乱入したのです。

「宋江の兄貴はどこだ!」

李逵の声は、もはや人のそれではなく、地を這う雷のようでした。

彼が斧を振るうたびに、豪華な回廊の柱が折れ、高価な磁器が砕け散ります。高俅が宋江を閉じ込めた「贅の極み」は、李逵の怒りによって粉砕されていきました。

三、 黄金の檻、粉砕

ついに李逵は、宋江が幽閉されている最奥の扉に辿り着きました。

「兄貴! 迎えに来たぜ!」

ドォォォォン!

頑丈な鉄の扉が、李逵の体当たりと斧の一撃で、枠ごと吹き飛びました。

部屋の中にいたのは、やつれ果て、うつろな目で月を見ていた宋江でした。

「……鉄牛……? なぜ、お前がここに……」

「決まってるじゃねえか、連れ戻しに来たんだよ! こんな湿っぽい部屋、俺がぶっ壊してやる!」

李逵は宋江をひょいと肩に担ぎ上げました。その軽さに、李逵の目から大粒の涙が溢れます。

「兄貴、こんなに軽くなっちまって……。あいつら、あんたに何を食わせやがったんだ!」

四、 殿しんがりの志

救出を終えた一団が退路へ向かおうとした時、背後から重装騎兵の足音が迫りました。高俅が、ようやく正気に戻った精鋭部隊を投入したのです。

「ここは俺に任せろ!」

**武松ぶしょう**が、二振りの戒刀を抜き放ち、回廊の入り口に立ち塞がりました。

「李逵、兄貴を頼んだぞ。呉先生の策通り、水門まで駆け抜けろ!」

「和尚、手を貸すぜ」

**魯智深ろちしん**も、六十二斤の禅杖を構え、武松の隣に並びました。

「阿弥陀仏……。ここから先は、地獄の番人が通さねえってよ」

都のど真ん中、豪華絢爛な邸宅の中で、梁山泊の誇る「二大巨頭」が、官軍を迎え撃つ。

その背後で、李逵は宋江を背負い、夜の闇へと疾走していきました。

救出作戦は成功しました。しかし、都の包囲網は厚く、武松や魯智深が殿を務める死闘が始まろうとしています。

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