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降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


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都・開封。

きらびやかな夜の帳が下りる頃、その喧騒の隙間に、一羽のつばめが滑り込みました。「浪子」燕青えんせい。眉目秀麗にして、多才多芸。彼こそが、この鉄壁の都の心臓部へ音もなく指先を差し込める唯一の男でした。

燕青は、梁山泊の泥を微塵も感じさせぬ絹の直垂ひたたれを纏い、馴染みの妓楼「酔仙居」へと姿を現しました。

一、 傾国の美女、李師師りししとの再会

燕青が向かったのは、皇帝・徽宗きそうの寵愛を一身に受ける都一の芸妓、李師師の元でした。かつて梁山泊の招安(帰順)のために一度は彼女を動かした燕青ですが、今の状況は以前よりも遥かに切迫していました。

「……燕青さん、また命を捨てに来たの?」

薄衣を纏った李師師は、香炉の煙の向こうから悲しげな瞳を向けました。燕青は優雅に一礼し、彼女の前に膝をつくと、懐から一通の文を取り出しました。それは呉用が偽造したものではなく、宋江が黄金の檻の中で綴ったとされる、陛下への「血の遺言」を模したものでした。

「師師殿。宋江は今、高俅の私欲という名の檻に閉じ込められ、呼吸さえ奪われようとしています。彼が死ねば、陛下が心から望まれた『天下の平定』は永遠に失われるでしょう。高俅は宋江を殺し、梁山泊を逆賊に戻すことで、己の軍権を盤石にしようとしているのです」

燕青の声は甘く、しかし刃のような鋭さを含んでいました。李師師は、その文を手に取り、宋江の(模造された)悲痛な忠義に胸を打たれる振りをしながら、陛下の耳に「毒」を注ぐ準備を整えました。

二、 噂という名の猛毒

燕青の工作は、それだけではありませんでした。

彼は都の裏社会、博徒や物乞いたちの間を縫うように歩き、金と甘言をばら撒きました。

翌朝、開封の市場や茶屋では、妙な噂が広がり始めました。

「聞いたか? 高俅様は、宋江を毒殺して、その功績をすべて自分のものにするつもりらしいぞ」

「いや、俺が聞いたのは違う。宋江は実は陛下から密命を受けていて、高俅の汚職を暴きに来たんだ。だから高俅は慌てて彼を監禁したんだとさ」

真実と嘘が混ざり合った「霧」が、都を覆い始めます。官吏たちの間でも、高俅の専横に対する不満と疑心暗鬼が、炭火のように燻り始めました。

三、 影の道、水門の開放

燕青の最後の仕事は、もっとも危険なものでした。

彼は夜陰に乗じ、都の地下を流れる水路、通称「御河ぎょか」の管理者の一人を抱き込みました。

「明日、月が雲に隠れる刻。西の水門の鍵を開けておけ。失敗すれば、お前の家族の命はない。成功すれば、一生遊んで暮らせる金が手に入る」

燕青は、闇の中からその男を脅しつけ、逃げ道を確保しました。

これは武力による突破ではなく、**「都そのものを内部から麻痺させる」**という呉用の非情な策の一環でした。

工作を終えた燕青は、高層楼閣の屋根の上で、遠く西門の向こうに広がる闇を見つめました。

そこには、李逵りきたちが斧を握りしめ、獣のように息を潜めているはずです。

「……宋江の兄貴。あんたの信じた『忠義』が、どれほど脆いものか。今夜、俺たちが証明してやるよ」

燕青は唇に微かな冷笑を浮かべ、一羽の燕のごとく、闇の中へと消えていきました。

開封の静寂は、今や爆発を待つ火薬のように、重く、張り詰めていたのです。

燕青の工作により、都の内部は混乱の極みにあります。

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