3 降誕・新・水滸伝
天帝の宣明 ― 百八の浄化と霊石
玉皇上帝は邪念の渦巻く地上を見下ろし、ゆっくりと立ち上がった。その表情は水面のように静かで、測り知ることはできない。
「善きかな」
威厳に満ちた声が、天界の隅々にまで響き渡る。
「なれば、北斗七星の精鋭なる神々を地上へと降ろし、滞る汚濁を洗い流さん。百八の煩悩に囚われし衆生に、再び道への回帰を促すため、これより百八日の間、浄化の道標を立てるべし」
天帝は、地上の汚濁を力で押し流すのではなく、世直しを志す人間の魂に力を貸し与える道を選ばれた。
天界の深淵より切り出された「万古不変の霊石」に、三清の加護と天帝の刻印が刻まれる。
北斗七星を筆頭とする百八の神格。
彼らは人間の持つ「百八の煩悩」を浄化し、正道へと導く力を持つ者たち。神々は自らの神威を霊石へと凝縮し、その身を宿らせた。守護神として、選ばれし人間の魂に応えて力を振るうことを誓う。
石碑が地上へと投げ落とされる直前、道徳天尊が静かに告げた。
「この石碑は、鏡なり。前に立つ者の心が濁っていれば、百八神は沈黙し、石はただの重石とならん。なれど、その志が天に通ずれば、百八の星々が地上に奇跡を興すであろう」
「これより百と八つの魂が尽きる期間を経てなお煩悩に浸ることを選ぶ世に成るならば、それは天命にあらず。この地、破壊神の手に任せ、さらなる濁流の波に飲まれよう」
天帝の御手から百八日の間に放たれた霊石は、光の尾を引きながら、邪念渦巻く地上界へと堕ちてゆく事に。
北斗七星の神魂が古い因習を打ち砕き、新たな秩序を打ち立てるための、浄化の儀が、今ここに始まろうとしている。




